JEAN-MICHEL PILC
この職人気質なアプローチは最近のジャズに対するアンチテーゼとしての価値がある
"LIVE AT IRIDIUM, NEW YORK"
JEAN-MICHEL PILC(p), THOMAS BRAMERIE(b), MARK MONDESIR(ds)
2004年10月 ライヴ録音 (DREYFUS JAZZ FDM 36 677-2)

@"NO PRINT" トリオを形成する3人は技量、インスピレーションどちらをとってもいずれ劣らぬ実力者だ。ドラムスはドラムス、ベースはベース、ピアノはピアノでしっかりとした技術に裏打ちされたアイデンティティを持っており、それが乱れることがない。その実力の上で成り立っている音楽でもある。軟弱な気持ちでは聴けないダイナミズムがある。さあ、襟を正して聴いてみよう。ピアノもベースも打楽器と化す演奏を。
A"JACKIE-ING PART 1" 継ぎ目なしで2曲目に。ここから、T. MONKメドレー。
B"MISTERIOSO" またしても、継ぎ目なしで3曲目。聴衆、唖然呆然で拍手する暇を見つけられず?
C"GREEN CHIMNEYS" 更に継ぎ目なしで4曲目。ベースが4-ビートを刻むようになるとピアノがまさに自由奔放な即興演奏を展開!T. MONK作曲の"STRAIGHT NO CHASER"のフレーズも飛び出す。と言っている間に、継ぎ目なしの5曲目へ。
D"JACKIE-ING PART 2" ここまで来て、やっと拍手が沸き起こる。ひょっとすると編集されているかもしれない。

E"MOONLIGHT WITH M" 内省的な表現にきらりと光るピアノの鼓動。
F"SPIRITUAL" 更に引き続き、内省的な演奏でJ. COLTRANEの曲に入っていく。3分半過ぎたあたりから3者のインタープレイが高揚感を増していく。曲が終わると恐る恐る聴衆が拍手をした感じ。
G"THIEF" ピアノのイントロからベースとのユニゾンを経て、ベースの定型パターンの上でピアノが踊る。この3者の実力を示す味わい深い1曲。躍動するワルツ。このアルバムのベストだろう。
H"MR RG" 急速調のハードな曲。アメリカの聴衆もこういう演奏を目の当たりにしてビックリしたことだろう!

I"YEMEN" 
J"GOLDEN KEY" 美しいバラードから継ぎ目なしで次の曲へ
K"IGNITION" 前曲から継ぎ目なしでハードな演奏に一転。強烈なパワーが炸裂し、最高潮に達したところで4ビートへとシフト。
L"VOICES" このピアニスト、決して美しいだけでは終わらない。
M"LANDSCAPE" 最後はカリプソ風の陽気な曲を持ってきたけど、陽気だけでは終わらない。

頑固一徹の職人気質「俺たちはリスナーに媚びないよ!」と主張しているかのようだ。「俺たちは」と書いたのは制作者も含めてという意味。
ジャズの世界に蔓延する「売らんがな」のイージーなアルバム制作が目立つ昨今、たまには、こういう頑固一徹な職人気質なアルバムも良いのではないか。
「ながら聴き」は止めた方がいい。襟を正して正面から向き合うべきジャズ。従って、聴く人を選ぶ。だからと言うわけではないが、多少、聴き疲れする。何回も連続して聴くのは骨が折れるが、今、流行の軟弱なスタンダード曲集の合間に聴くと、その刺激的で圧倒する迫力に度肝を抜かれることだろう。この職人気質なアプローチは最近のジャズに対するアンチテーゼとしての価値がある。   (2005.11.17)



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独断的JAZZ批評 306.