森泰人という力強いサポートを得て
O'BRIENが心置きなく歌心を発揮した1枚
"FANFARE"
HOD O'BRIEN(p), YASUHITO MORI(b), ANDERS KJELLBERG(ds)
2004年1月 スタジオ録音 (SPICE OF LIFE INC SOL SC-0008) 


最近、このピアニストのアルバムを店頭で良く見かける。買うか買うまいか迷っていたのだが、新譜が出たのを機会に初めて買ってみた。ベースに森泰人が入っているのも興味を誘った。
このアルバムのライナーノーツにあるO'BRIEN自身の言葉から、このアルバムは近作の日本での評判と過去の森とのレコーディング経験を通して生まれたということだ。この森泰人はベーシストと同時にスウェーデンのSpice of Lifeのプロデューサーをしている。また、LARS JANSSON(JAZZ批評 106.)との競演もあり、最近、話題のプレイヤーだ。強いビートと太い音で、歌心もある良いベーシストだと思う。

@"WITH A SONG IN MY HEART" 太いベースの音がアップ・テンポの4ビートを刻む。でも、ドラムスがベースに煽られている感じで少し余裕がない。森のベースは迫力満点だが、ドラムスは少し線が細いなあ。
A"BASSA FOR SASSA" O'BRIENのオリジナルのボサノバ。@に続く、あたかもアメリカ西海岸を思わせる明るい曲想なのだが、この人、西海岸とはあまり縁がなかったようだ。

B"IT'S YOU OR NO ONE" JAZZ批評 167.のJOHN HARRISON Vの1曲目にも演奏されている曲でとても耳に残る曲。聞き比べてみるのも面白いかも。で、僕が聞き比べたその結果は? 
3者のコンビネーションと躍動感、それと、ドラムスの差で僅かながらJOHN HARRISON Vに軍杯を上げたい。この差はそれぞれのグループの持ち味の違いと聴く側の好みの違いと言って良いだろう。そういう中にあっても、森の好プレイは賞賛されるだろう。

C"PASTEL" ERROLL GARNERの書いた美しいバラード。美しさの中にスパイスの効いた躍動感があるのが嬉しい。甘ったるいだけじゃあジャズじゃない。
D"FANFARE" ここではKJELLBERGも軽快なドラミングをみせている。
E"SILVER'S SERENADE" HORACE SILVERの曲。このあたりまで来るとドラムスのKJELLBERGも思い切り良いドラミングを披露している。力強い森のソロもGOOD!
F"HEAVY DUTY" 玄人好みと言われ知る人ぞ知るピアニスト、BILLY TAYLORの書いたご機嫌なブルース。

G"VERONICA'S KINGDOM SONG" 当時、4歳のO'BRIENの娘さんが歌ったメロディを書き取ってコードをつけたものらしい。遠慮がちだったKJELLBERGも活き活きと太鼓を叩いている。
H"CLOSE YOUR EYES" スタンダード・ナンバー。アンサンブルも益々良くなってきた。
I"LAURA" 装飾音が多いバラード。この辺は聴く人の好みだろう。僕はもっとシンプルに歌って欲しいと思うが・・・。
J"GOOD GUY, BAD GUY" 最後を飾るガリガリ・ゴリゴリの演奏。森のノリが凄い。ユニットとしての力強さや高潮感がストレートに出ている。

日本人のベーシストの中にもガッツと力強さの漲るプレイヤーがいたのだと感心することしきり。北欧だけに留まらず世界広しと駆け回って欲しいベーシストだ。このアルバムは森泰人という力強いサポートを得てO'BRIENが心置きなく歌心を発揮した1枚と言える。アルバムの最初は何かしっくり来ないものを感じたのだが、曲が進むにつれてその心配はなくなった。好演盤と言えるだろう。   (2004.05.15)



HOD O'BRIEN

独断的JAZZ批評 197.