先に名盤"MANHATTAN STORY"を
聴いてしまった不幸とも言うべきだろうか!?
"FROM NEW YORK"
AKIKO GRACE(p), RON CARTER(b), BILL STEWART(ds)
2001年スタジオ録音(SAVOY COCB-53003)

このCDは僕が試聴でぶっ飛んでしまった、あの名盤"MANHATTAN STORY"(JAZZ批評 101.)を遡ること1年前の2001年のAKIKO GRACEのデビュー作。
ベースがRON CARTERになっている以外は同じメンバー。このRON CARTER、ネームバリューで売ってきたきらいがあり、なおかつ、昔、BLUE NOTE 東京でのライブで気の抜けた演奏があったりして、僕はあまり良い印象を常日頃持っていない。

この辺は、前述の傑作"MANHATTAN STORY"と聞き比べてもらえればすぐ分かる。LARRY GRENADIERのベースとは、先ず、ビート感が違う。若さあふれる強いビートでぐいぐい引っ張るLARRYに比べてRON CATEREのベースは小手先だ。小手先のテクニックに溺れるあまり本質を見失っている。ピチカートから湧き出るビート感がないしアドリブも陳腐だ。もう、過去の人と言うべきだろう。

従って、グループとしての躍動感も十分でない。第一、あのBILL STEWARTのドラミングに冴えがない。あの3者がお互いに触発しあって渾然一体となったグループとしての躍動感や緊張感が感じられないのだ。従って、全体としての完成度も今ひとつ。
先に名盤"MANHATTAN STORY"を聴いてしまった不幸とも言うべきだろうか!?

デビュー作の1年後、2作目にしてあっさりRON CARTERに替えてLARRY GRENADIERを起用したあたりAKIKOの目は(耳は)確かだ。それにより見違えるような完成度の"MANHATTAN STORY"を完成できたのだと思う。

演奏曲目は以下の通り。
@"NEVER LET ME GO" 
A"DELANCY STREET BLUES" オリジナル。
B"I'VE SEEN IT ALL" 
C"YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS" 
D"YOU MUST BELIEVE IN SPRING" 
E"THE LAST SMILE OF YOU" オリジナル
F"VOICE OF THE SPHERE" オリジナル
G"INNER CONFLICT" オリジナル
H"TEXTURE" オリジナル
I"MY FAVORITE THINGS" 
J"NEVER LET ME GO(FULL VERSION)" 

繰り返しになるが"MANHATTAN STORY"を先に聴いていなければ、ここまでの酷評にならなかったと思う。聴く順番を間違えたという気がしないでもない。
とは言うものの平均以上の作品であることも事実である。  (2003.03.10)



AKIKO GRACE

独断的JAZZ批評 125.