良質で「やりたいことを具現化した」アルバムこそ
きちんと評価しなくてはいけない
"LET'S PLAY THE MUSIC OF THAD JONES"
TOMMY FLANAGAN(p), JESPER LUNDGAARD(b), LEWIS NASH(ds)
1993年4月 スタジオ録音 (ENJA RECORDS ENJ-80402) 

このアルバムは全曲、THAD JONESの書いた曲だ。
TOMMY FALANAGANはベースにJESPER LUNDGAARD、ドラムスにLEWIS NASHを迎えて躍動感溢れるアルバムを作った。
JESPER LUNDGAARDと言えば、強いビートでよく歌うベーシストとしてJAN LUNDGREN(JAZZ批評 152.185.)のピアノ・トリオにはなくてはならない存在だし、LEWIS NASH(JAZZ批評 119.)も近年の活躍が目覚しい中堅ドラマーだ。この3人の組み合わせから言って、この演奏が悪かろうハズがない。
コペンハーゲン(デンマーク)で吹き込まれた関係で、JESPER LUNDGAARDの参加があったようだ。
THAD JONESの曲で全てをラインナップしたあたり、いかにもFLANAGANらしい。それだけで地味な印象を与えてしまうが、演奏はなかなかノリも良くて隠れた名盤に位置するものだろう。
実に、真面目に、しかも、楽しみながらレコーディングされた印象が強い。FLANAGANの人となりを表した好演盤といえるだろう。

@"LET'S" アップ・テンポでいきなりガツーンと来た。ここにはパワフルなFLANAGANがいる。負けじとLUNDGAARDのベースがゴリゴリ歌う。8小節交換ではNASHも負けてはいない。
A"MEAN WHAT YOU SAY" ミディアム・テンポの佳曲。2ビートで始まり、徐々に高揚していく様が良い。リズム陣が安定しているとこんなにも楽しい。ベース・ソロもドラムスのソロもおおらかに歌っていて良い。
B"TO YOU" しっとり系。

C"BIRD SONG" タイトルから推測するに、CHARLIE PARKERに捧げられた曲だろうか?
D"SCRATCH" 躍動感溢れる4ビート。
E"THADRACK" 太いベースの上をピアノが絡む。ベース・ソロも歌心溢れるものだ。
F"A CHILD IS BORN" 美しいワルツ。LUNDGAARDの逞しくも歌心たっぷりのベース・ソロが聴ける。ここでも存在感をいやと言うほど見せ付けている。でも、決して嫌味でないからご安心を。

G"THREE IN ONE" 軽快なブラッシュ・ワークに乗ってピアノが楽しげに歌う。スティックに持ち替えてからテンションがどんどん高まって行く。FLANAGANのハード・プレイが楽しめる。肩の力も抜けているし、3者のコンビネーションも抜群!
H"QUIETUDE" ピアノ・トリオというのはこういう具合に3人の息が見事に合って、お互いが刺激しあえる関係が最高だ。リズム陣がしっかりしていると音楽が締まる。

I"ZEC" これもミディアム・ファーストのノリの良い曲。ベースとドラムスの力強い4ビートにグイグイと引っ張られてピアノも右手のシングル・トーンが飛び跳ねる。
J"ELUSIVE" この曲もアドリブに入るとミディアム・ファーストのテンポでゴリゴリ歌う。こういうのを、ジャズの王道を行く演奏と言うのだろう。

このアルバムはDISKNOTEの推薦だったけど、流石にお目が高い。
THAD JONES作品集という比較的馴染みの薄い曲を集めてアルバムを作った。
いかにもTOMMY FALANAGANらしいアルバム。奇を衒ったりコケオドシ的な演奏は微塵もない。最近は、制作側の「売らんがな」の意思・・・有名なスタンダード・ナンバーを多めにラインナップする・・・がまかり通る中で、愚直なまでに真面目に取り組んだCD制作と言えるだろう。加えて、リズム陣が素晴らしい。比較的地味な印象が常につきまとうFLANAGANであるが、こういう、良質で「やりたいことを具現化した」アルバムこそきちんと評価しなくてはいけない。敬意を払いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。何回も繰り返し聴き込んで欲しいアルバムだ。   (2004.06.06)



TOMMY FLANAGAN

独断的JAZZ批評 202.