BILLのドラムスが随所にきらりと光り、
ファンにはこれも堪らない
"ENROUTE"
JOHN SCOFIELD(g), STEVE SWALLOW(electric b), BILL STEWART(ds)
2003年12月 ライヴ録音 (VERVE UCCV-1059) 

久しぶりにギター・トリオのアルバムを買ってみた。一癖もふた癖もあるジョンスコに合わせるリズム陣が面白い。BILL STEWARTとSTEVE SWALLOWとの競演はかなり古くからある。JAZZ批評 7.で紹介した"SUMMERTIME"はこの二人にギターのPAT METHENYを加えた1994年7月の競演盤だ。この"SUMMERTIME"はなかなか素晴らしいアルバムだが、多分、今では入手が難しいと思う。METHENYとのアンバランスが、絶妙の緊張感とホンワカとした優しさを醸し出している作品だ。

ドラムスのBILL STEWARTは今や、引っ張りだこの売れっ子ドラマー。良く歌う太鼓で、このドラミングだけでも躍動感が湧いてくるという稀有な存在だ。今や、JACK DeJOHNETTEの次を狙える最右翼だろう。
STEVE SWALLOWはJAZZ批評 74.の"DUSTER"にあるように、昔はGARY BURTON(vib)のグループでアコースティック・ベースを弾いていた。当時から、メロディックなベース・ラインを得意としていたし、作曲家としても非凡なものを持っていた。このベーシストは早い段階でアコースティックからエレキ・ベースに切り替えたらしい。ここでも全て、エレキ・ベース。

@"WEE" いきなり来ましたね。BILLのご機嫌なドラミング。本当にこのドラマーはアイディアの宝庫だね。引き出しに一杯詰まっている。変幻自在のドラミングを堪能いただきたい。
A"TOOGS" SWALLOW、お得意のメロディックなベース・ソロが聴ける。
B"NAME THAT TUNE" ストレート・アヘッドな4ビート・ジャズ。ここでもBILLのドラミングが冴え渡る。

C"HAMMOCK SOLILOQUY" こすれた音色、ジョンスコ節のオンパレード。
D"BAG" ノリの良い4ビートのブルース。メロディ・ラインの綺麗なベース・ソロが聴ける。こういうの聴いているとエレキ・ベースもまんざらでもないなあと思ったりして・・・。
E"IT IS WRITTEN" 

F"ALFIE" BURT BACHARACHの名曲を歌心たっぷりに弾いてみせた。泣かせます。ジョンスコの後を受けて、SWALLOWの弾くハイトーンのソロもイケテル。勿論、きっちりとジョンスコ節もきかせています。さらに、STEWARTのブラッシュ・ワークが冴えに冴えているだなあ。このアルバムのベスト。
G"TRAVEL JOHN" アップ・テンポの軽快な曲。シンバリングが快い。ドラム・ソロでも思わず、唸ってしまう。いやあ、凄い凄い。
H"OVER BIG TOP" ギターがうねる。

先に紹介したPAT METHENYとの競演盤はMETHENYの牧歌的美しさが灰汁の強さを良い塩梅に中和してくれていたが、このアルバムではジョンスコの灰汁の強さがストレートに出た感じ。ジョンスコ・ファンにはこれがいいのだろうけど、僕には、ちょっとね。
でも、BILLのドラムスが随所にきらりと光り、ファンにはこれも堪らない。   (2004.06.05)



JOHN SCOFIELD

独断的JAZZ批評 201.