多彩な選曲の好アルバム
何と言っても"SAIL AWAY"がいい
ROY HAYNESのドラミングが光を放っている 
"WANTON SPIRIT"
KENNY RARRON(p), CHARLIE HADEN(b), ROY HAYNES(ds) 
1994年スタジオ録音(VERVE 522 364-2)

前回のJAZZ批評と同様の中古盤。CDはアナログLPと違い音質の劣化はほとんど認められない。新譜をいち早く聴きたいというのでなければ、中古CDでも充分と言える。兎に角、約半分という価格は魅力的だ。初めて、中古盤を2枚買って、両方のCDに満足している。これは病みつきになるかもしれない。

大好きなBARRONの作品もこれなら買い易い。このCD、メンバーが良い。BARRONとHADENは2年後の1996年のデュオ・アルバム"NIGHT & THE CITY"(JAZZ批評 16.)でも共演している。今回はROY HYNESを加えたトリオ。このメンバーの演奏が悪かろうハズがない。
BARRONのピアノは勘所を押さえているというのか、聴き手の心を捉えるのが非常に上手い。また、リラックスした雰囲気を作るのも上手い。迎合しないエンターテイナーでもある。

1曲目はDUKE ELLINGTON作の"TAKE THE COLTRANE"。テーマの後にHADENの野太いウォーキングが続き、そこに、ピアノとドラムスが絡んでくる。「慣らし運転」といった感じだ。
2曲目"SAIL AWAY"。これはいきなり凄い。最初の1音から聞き漏らさない事。海原を思わせる広がりと奥行きを感じる。また、HAYNESのボサノバ調ブラッシュ・ワークが格好いい。アドリブでのピアノの紡ぎだす音の一つ一つもお洒落で洗練されいる。大人のジャズという感じなのだ。最高!!

3曲目のDIZZY GILLESPIE作"BE BOP"でもHADENのベース・ソロがたっぷりと聴ける。向こう受けするような派手さはないが、堅実で太い音があればそれだけで充分。
4曲目、BILLY STRAYHORN作"PASSION FLOWER"。しっとりと独特の節回しで歌い上げる。
次がBARRONのオリジナル"MADMAN"。一転して、ピアノとドラムスのハードなデュオ。HYNESもスティックに持ち替えて長めのソロもとっている。
面白いのが6曲目の"NIGHTLAKE"。RICHIE BEIRACHのリリカルな曲を甘さに流されずに好演。
8曲目がタイトル曲の"WANTON SPIRIT"。「お手の物」の演奏。
9曲目"MELANCHOLIA"はピアノ・ソロ。BARRON節。
最後にHERBIE HANCOCKの"ONE FINGER SNAP"。最近、この曲を演奏するプレイヤーが多くなった。ハンガリーのZSOLT KALTENECKERも"TRIANGULAR EXPRESSIONS"(JAZZ批評 84.)で演奏している。アップ・テンポの調子のいい曲でドライブ感が楽しめる。

オールラウンド・プレイヤー、KENNY BARRONならではの多彩な選曲の好アルバム。
何と言っても2曲目の"SAIL AWAY"がいい。ここでは、ROY HAYNESのドラミングが光を放っている。                                      (2002.09.11)

<UPDATE 2002.11.17>
JAZZ批評 109.のJOHN HICKS演奏しているC"PASSION FLOWER"と聴き比べてみた。BARRON節とバックで光るHAYNESのブラッシュ・ワークが素晴らしい。
HERBIE HANCOCKの名曲I"ONE FINGER SNAP"での3者の躍動感溢れる演奏も聴き応えばっちり。BARRONの素晴らしさを再確認した。




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KENNY BARRON

独断的JAZZ批評 94.