これはもう、その場に居るべきであって、
そこにあるジャズを五感全部を使って楽しめればそれが最高の聴き方だ
"TESTIFYIN'!"
BENNY GREEN(p), CHRISTIAN McBRIDE(b), CARL ALLEN(ds) 
1992年VILLAGE VANGARD ライヴ録音(BLUE NOTE CDP 7 98171 2)

ジャズ・ピアニストには大別すると二つのタイプがあると思う。ひとつは、自分のやりたい音楽を徹底追求するタイプであり、もうひとつは、聴衆の欲している音楽に合わせるタイプだ。
BENNY GREENというピアニストは後者のタイプで、OSCAR PETERSONの流れを汲むエンターテイナーと言えるだろう。最近では、BILL CHARLAPもこの仲間に入るだろう。
前者を選ぶか、後者を選ぶかは聴く側の好みの問題だ。

僕のJAZZ批評の中にOSCAR PETERSONの名前はない。実際、CDも1枚も持っていない。これは、たまたま僕が「やりたい音楽を徹底追求するタイプ」を好みとしているという結果でしかない。

今回紹介するBENNY GREENも巷の話題に上がっているけど、なかなか聴くチャンスに恵まれなかった。中古CDを手に入れるようになってからは、損しても被害は小さいと割り切って、通常では購入しない範疇のCDにも食指を動かすようになった。これは、中古CDの効用だ。でなければ、いつも試聴止まりでラインナップに追加されることはなかったに違いない。

VILLAGE VANGARDでのライヴ盤。最初にBENNY GREENによるメンバー紹介が入って、リラックスしたライヴの雰囲気が味わえる。

6曲目のタイトル曲"TESTIFYIN'"ではベースがアルコ弾きでソロをとるが、普通では難しいアルコでのリズム感を見事に奏でているあたり、流石、McBRIDEだ。
7曲目の"CARL'S BLUES"ではミディム・ファーストのブルースを軽快に乗っていくのだが、こういうときにも太いベースの4ビートが効いている。
"DOWN BY THE RIVER"は誰でも知っている曲。楽しげな演奏。
続いて9曲目に"I SHOULD CARE"が入っている。ここはピアノ・ソロ。イン・テンポになってからスライド風ピアノを披露している。
12曲目はRED GARLANDの名演で知られる"BILLY BOY"。軽快にスウィングして最後を締めくくる。

全体を通して、CHRISTIAN McBRIDEの太いベースはご機嫌で歌っているし、ブロー気味のGREENのピアノや聴衆の高揚感も伝わってくる。聴衆の掛け声や反応が生々しく伝わってくるライヴならではの楽しさだ。

しかしながら、聴き進むに従って、これはもう、その場に居るべきであって、CDで聴くべきではないというのがぼくの感想。理屈も何もいらない、そこにあるジャズを五感全部を使って楽しめればそれが最高の聴き方だ。   (2002.09.14)




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BENNY GREEN

独断的JAZZ批評 95.