リリカルな演奏ではあるが、
甘さに流れない力強いドライブ感やスウィング感もある
聴き込むほどに味の出てくる一枚
"KOMEDA"
MARCIN WASILEWSKI(p), SLAWOMIR KURKIEWICZ(b), MICHAL MISKIEWICZ(ds)
1995年スタジオ録音(COWI CDG 22)

このCDは新宿のDISK UNIONで購入した中古盤である。確か1200円だったと思う。
今まで、中古盤というものにほとんど縁がなかった。一緒に行った友人が中古盤の「通」だったのに誘われて、試し買いをしてみた。
確かに値段は安い。通常の半額くらいだ。だから「当たるも八卦」という感じでついつい購入してしまうようだ。店の「思う壺」だ。
でも、この友人に言わせると、名もないプレイヤーの発掘が出来た時、そして、格安で良い作品を手に入れることが出来た時の感激は何ものにも代えがたいそうだ。因みに、その友人はKEITH JARRETTの"STANDARDS IN NORWAY"をたった800円で手に入れていた。流石だ!こんなことがあると病みつきになってしまいそうだ。

翻って、このCD。国内盤はガッツ・プロダクションから2001年4月録音の"MOJA BALLADA"を1曲追加して、"LULLABY FOR ROSEMARY"のタイトルで、なおかつ、軟弱なジャケット・デザインに変更して発売されている。
1曲目の"SVENTETIC"は透明感の強いリリカルなピアノで始まるが、そこに炸裂するようなベースの音が割り込んで来て、ハードでありながら緻密にコントロールされた演奏へと変化していく。
次の"BALLAD FOR BERNT"はバラードのタイトルとは裏腹にハードに盛り上がっていく。
3曲目の"CHERRY"はZSOLT KALTENECKERの"TRIANGULAR EXPRESSIONS"の中にある"TRAVELLING"にテーマがそっくり。ここでは、4ビートのドライブ感が楽しめる。また、力強いベース・ソロやドラムスのセンシティブなシンバリングと結構長めなソロも楽しめる。
4曲目は"MOJA BALLADA"。美しくも透明感のあるテーマを瑞々しくピアノが奏でる。目を閉じて耳を傾けるべし。
6曲目"KOLYSANKA"は透明感のあるテーマが終わるとベースとのインタープレイを通してスウィング感が増してくる。そして、軽快なタッチのシンバリングに乗って3者がドライブ感を醸成していく。その後に続く力強いベース・ソロ、いい音だ。
最後の8曲目"SLEEP SAFE AND WARM"は映画「ローズマリーの赤ちゃん」の主題歌らしい。美しいテーマにも拘わらず、力強いベース、センシティブなドラミングが聴ける。
ブラッシュワークからスティックへの持ち替えるタイミングからテンションがどんどん高まっていく。その後、ベースのフリーなソロとなるが、暗く生々しいピチカートの音と溢れるビート感はGOOD!

CD全体の印象はヨーロッパの演奏にありがちなクリアでリリカルな演奏ではあるが、甘さに流れない力強いドライブ感やスウィング感もある。いわゆる、ブルース・フィーリングは薄いが、如何にも洗練されたヨーロッパ的な味付けになっている。
聴き込むほどに味の出てくる一枚。1ヵ月後には「厳選"PIANO & α"」に追加しているかも・・・。
(2002.09.07)


SIMPLE ACOUSTIC TRIO

独断的JAZZ批評 93.