独断的JAZZ批評 957.

SUMIRE KURIBAYASHI TRIO
「すみれ色」の個性
"TOYS"
栗林すみれ(p), 加藤真一(b), 清水勇博(ds)
2014年5月 スタジオ録音 (SOMETHING COOL : SCOL-1003)

栗林すみれも初聴きだ。
最近は意識的に日本人ジャズ・プレイヤーのレビューを増やしている。それは、良いCDだと感じてもらえれば比較的容易にライヴ・ハウスを訪れることが出来ると思うからだ。
「JAZZは生で味わってほしい!」 ライヴ・ハウスの熱気や鼓動をも一緒に味わって欲しいと思うからだ。そのきっかけづくりの一助になれば、こんなに嬉しいことはない。
最近の女子ジャズ・プレイヤーの躍進ぶりといったら男子の比ではない。まあ、商業的にも女子の方が客を集めやすいってこともあるかもしれないが・・・。「男子よ、目を覚ませ!」と言いたい。


@"FOREST AND AN ELF" 
邦題では「森と妖精」とある。AARON PARKSのソロ・ライヴから刺激を受けたという。多分、2011年録音のピアノ・ソロ・アルバム"ARBORESCENCE"(JAZZ批評 835.)のツアーの時のことだろう。森と妖精が戯れている、
A"1 STILL HAVEN'T FOUND WHAT I'M LOOKING FOR" 
U2というアイルランドのロック・バンドのカバー曲だという。流石に若いプレイヤーにはロックに対する馴染みが良いのだろう。実に生き生きとして楽しげだ。これは良いね。
B"GRAND LINE" 
栗林のピアノにはメリハリがある。そして、個性豊かだ。ここが大事なところで、良い面をドンドンと伸ばしていって欲しいものだ。
C"LETTER TO EVAN" 
BILL EVANSの書いた曲だ。サクサクとしたブラシの4ビートが心地よい。栗林がさも気持ちよさそうにアドリブを執る。
D"THAT BLUE BIRD" 
先日、紹介した山本玲子(JAZZ批評 954.)の曲。「すみれいこ」というユニット名でデュオ・アルバムもリリースしている。その山本が書いた曲で、こういう曲は日本人感覚というか、日本人でないと書けないと思う。
E"FLYING TOYS" 
何やら、栗林の唸り声も微かに聞こえるけど、ハードに弾きまくったトラックだ。
F"W. M. P." 
加藤の安定した4ビートのウォーキングがあればこそ、ピアニストもスイングできるというものだ。音符過多にならず、実に、筋の良い演奏だ。
G"SOMETHIN' WARM" 
お世話になった方たちへのトリビュート・トラック。人の温もりを感じさせるとても良い曲だ。アドリブはなしで、ピアノとベースがテーマを弾いて終わる。
H"MINOR MEETING"
 ハード・バップ時代に一世を風靡したSONNY CLARK(JAZZ批評 40.)の書いた名曲。本アルバムの中で、この1曲の有り無しは大きい。ジャズマンなら誰しも通った道の再確認でもある。S. CLARK張りの強いピアノ・タッチがいいね。この種のテーマは日本人にはなかなか書けないのではないだろうか?いい味出しているハード・バップだ。

古き良き時代のハード・バップから最新のポップスのカバー曲まで網羅しながら「すみれ色」の個性がある。共演者の幅も更に拡がり、経験を積み重ねている。まだまだ紆余曲折があるだろうし、試練にも遭遇するだろう。海外のビッグネームとの共演もあるだろう。今の「すみれ色」を大事にして腕を磨いていって欲しいと願わずにいられない。   (2015.08.30)

試聴サイト:https://www.youtube.com/watch?v=fw27CXVUaK8
       


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