独断的JAZZ批評 956.

DAIKI YASUKAGAWA TRIO
心に留まったのは西山瞳と田中菜緒子の二人の女性陣
"TRIOS U"
安ヵ川大樹(b: on all tracks), (p: 浅川太平 on 1,2 西山瞳on 3,4 田中菜緒子 on 5,6 石田衛 on 7,8,9,10,11), (ds: 則武諒 on 1,2 平瀬祐人 on 3,4 橋本学 on 5,6,7,8,9,10,11)
2013年8, 11月, 2014年10月 スタジオ録音 (D-MUSICA : DMCD28)

タイトルに"TRIOS U"とあるからには、当然"T"(JAZZ批評 650.)がある。それが2009年〜2010年に録音されたもので、ピアノは堀秀彰、高田ひろ子、佐藤浩一、古谷淳、村山浩で、ドラムスは省略するが、ベーシスト・安ヵ川大樹とシンパシーを持ったプレイヤー達だ。
今回のピアニストは全員がチェンジしている。ドラムスも橋本学以外は則武諒と平瀬祐人という若手が参加している。
全部で5つのピアノ・トリオが同時に楽しめるという趣向だ。
安ヵ川大樹は言うまでもなく、日本を代表するベーシストの第1人者。良く歌うピチカートと美しい音色のアルコでは右に出るものはいないだろう。@、E、G以外は全て安ヵ川のオリジナルだ。


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"TONIGHT" 浅川太平は以前から気になっていたピアニストだが、"TOUCH OF WINTER"というアルバムの寒々としたジャケットをみて購入には至らなかった。本アルバムではオムニバス形式で浅川のトラックは2曲挿入されている。
A"THIS RESONANCE FOR YOU" 安ヵ川の美しい響きを持ったオリジナル。このしっとり感に癒されるなあ。
B"NEW SONG" 西山瞳との共演では、"EL CANT DELS OCELLS"(JAZZ批評 749.)を2012年にリリースしており、美しさと切なさを持ったデュオ・アルバムだ。さて、本トラックでは息の合ったところを見せて、アンサンブルに厚みが増した。
C"DOUBLE RAINBOW" これもしっとり系の心に沁みるバラード。余分なものが何もない。
D"LOCO" 田中菜緒子は今年になってD-MUSICAから初リーダー・アルバム"MEMORIES"(JAZZ批評 918.)をリリースしている。当時と比べるとソロもバッキングも素晴らしく良くなっている。
E"BODY AND SOUL" ベースがテーマを執る。正確な運指と音程が流石だ。サビはピアノになってベースに戻る。田中のピアノ・タッチは自信に満ちて素晴らしい音色を奏でている。素晴らしい成長ぶりだ。 
F"MY BEBOP TUNE" 一転して、バップ・テイストの演奏に。ピアノは石田衛に替わっている。ミディアム・テンポの4ビートを刻み心地よく進む。
G"PEOPLE" アメリカのメロディ・メーカー、JULE STYNEの書いた曲。これもしっとり系バラードだ
H"THE DEEP VALLEY" この曲は村山浩の"BALLAD OF LYRICS"(JAZZ批評 622.)でも演奏されている。美しい音色のアルコ奏法を堪能いただきたい。 
I"CIRCLE V" フリーではなくて抽象画ってところか。アンサンブルはとれている。次第に昂揚感が増してきてホットな演奏となる。
J"NOCTURNE NO.1" お休み前にどうぞ!

こういうオムニバス盤の制作には、参加ミュージシャンの意向も反映されるのだろうか?美しくて静謐な曲が集まった。その中で毛色の変わったピアニストは石田衛だ。美しさと、バビッシュな力強さをもっていて、この中では異色な存在だ。
僕の中で心に留まったのは西山瞳と田中菜緒子の二人の女性陣。
個人的にはこういうオムニバス形式のアルバムよりも、1枚のCDの完成度を高めてほしいという気がする。
特に、今回はしっとり系のトラックが多く集まっているのが特徴的ではある。   (2015.08.28)

試聴サイト:http://www.d-musica.co.jp/release/28.html



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