独断的JAZZ批評 938.

CYRUS CHESTNUT
ジャズは大音量で聴くべき音楽
"A MILLION COLORS IN YOUR MIND"
CYRUS CHESTNUT(p), DAVID WILLIAMS(b), VICTOR LEWIS(ds)
2014年11月 スタジオ録音 (HIGH NOTE : HCD 7271)

数えてみると、今までに350人以上のピアニストを紹介してきている。その中に、このCYRUS CHESTNUTが含まれていないのが意外といえば意外。アメリカの中堅ピアニストなのだが、一言でいうと地味かな?ERIC REED(JAZZ批評 725.)やDAVID KIKOSKI(JAZZ批評 771.)のような「華」がないのも損している原因のひとつだろう。
本アルバムはスタンダードとカバー曲の全10曲。

@"I'VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE" 軽いノリのつもりなんだろうけど、ちょっと粗い。雑な感じを抱かせてしまうのはよくないね。メロディは誰もが聴けば、ああこれかと思う曲だし、もうちょっと丁寧に弾いてほしいと思ったものだ。
A"GLORIA'S STEP"
 SCOTT LA FAROの曲で、BILL EVANSの"SUNDAY AT THE VILLAGE VANGUARD"(JAZZ批評 829.)に挿入されている。これはこれってことで、あまり比べたいとも思わない。
B"HELLO"
 LIONEL RICHIEのヒット曲。哀愁を帯びた美しいメロディ。演奏に切れがあっていいね。
C"FROM A TIP"
 
D"DAY DREAM"
 D. ELLINGTONとB. STRAYHORNの共作とされている曲。マレットを使ったラテン・タッチで始まる。
E"BROTHERHOOD OF MAN"
 ミディアム・テンポの4ビートを心地よく刻んで進む。こういうのを聴くと何故かホッとする。演奏している側も楽しそうだ。
F"YEMENJA" 
G"A TIME FOR LOVE"
 JONNY MANDELの名曲をスロー・バラードで。静かな出だしから、最後にグーッと盛り上がって終わる。そうそう、こういう熱気を感じていたいんだなあ。
H"POLKA DOTS AND MOONBEAMS" 
ピアノ・ソロ。これも良いね。ピアノが弾んでいるもの。
I"I DIDN'T KNOW WHAT TIME IT WAS"
 今度はRICHARD RODGERSの佳曲。多くのミュージシャンが取り上げる曲でもある。だからってわけではないだろうけど、熱い演奏だ。やはり、聴きたいのは軽いノリばかりでなくて、こういう熱い演奏なんだ。最後はフェード・アウト!こりゃあ、ないだろう!

本アルバムで言えば、後半のG、H、Iがいいね。演奏に熱気があるもの。全体的には、CHESTNUTならではの個性が光って来ると更に良くなると思う。
今回、つくづく思ったのは、ジャズっていう音楽は大音量で聴くのと小音量で聴くのではまるで印象が変わるということ。勿論、大音量で聴くのがベスト。大音量でないと楽器の持つプレゼンスが十分に発揮できないのだと思った。
当初、PCに録音してオーディオ・アンプ経由でチマチマと聴いていた。その後、CDをダイレクトに大音量で聴いてみるとまるで音の息遣いが違うのだ。それで、曲ごとのコメントも改めて全部書き直した次第。
やはり、ジャズは大音量で聴くべき音楽と再認識した次第。   (2015.05.17)

試聴サイト:
https://soundcloud.com/highnote-savant-records/glorias-step-cyrus-chestnut



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