独断的JAZZ批評 771.

DAVID KIKOSKI
聴く人を選ぶ
誰にでも心地よいかというとそうではない
久しぶりに聴いた剛腕、超重量級ピアノ・トリオ
"CONSEQUENCES"
DAVID KIKOSKI(p), CHRISTIAN McBRIDE(b), JEFF "TAIN" WATTS(ds)
2012年2月 スタジオ録音 (CRISS CROSS : CRISS 1346 CD)


DAVID KIKOSKIのアルバムは今までに3枚ほど紹介しているが、大満足というアルバムはなかった。今回のアルバムでは、今のアメリカを代表する剛腕プレイヤーが参加しているので興味が募った。ベースにCHRISTIAN McBRIDE、ドラムに JEFF "TAIN" WATTSという組み合わせで、果たしてどんな音が溢れ出てくるのだろうと興味は尽きない。
KIKOSKIは白人ピアニストで1961年の生まれというから、すでに50歳を超えている。このKIKOSKIが超パワフルな二人と組んだ時にどんなピアノプレイを披露してくれるのか楽しみだった。
6曲がKIKOSKI、2曲がWATTS、残る1曲がスタンダードという構成になっている。

@"BLUTAIN" 期待通りにベースがガシガシ唸っているし、ドラムスも負けじとパワフルなドラミングを披露している。KIKOSKIのピアノも負けてなるものかとの意気込みを感じる。グルーヴィだ。いきなり10分の長尺。
A"RUSSIAN ROULETTE" 
McBRIDEのベースが太くて逞しい。重量級ベーシストの音色だ。WATTSのドラムが煽るし、ピアノが後ろから尻を叩かれているかのよう。少々のピアニストではこの二人のプレイに食われてしまうね。KIKOSKI大健闘
B"DRAMA." 
ベースが定型パターンを刻み、それをバックにWATTSが大暴れ。けんか腰のKIKOSKIのピアノもいいね。
C"PLACIDITY" 
一呼吸置いた、スローな演奏。でも、ベターっとしていないのがいい。
D"MR. JJ" 
高速4ビート。まるで重戦車が100km超で突っ走るが如し!McBRIDEのベースが「そこのけ、そこのけ!」と言って、あたりの空気を蹴散らしていく。曰く、「何か文句あっか!?」 このベース音は凄いね。かのRICHARD DAVISのそれを超えている。WATTSのドラム・ソロの凄さにニヤリとしてしまうね。何と言っても、このアルバムの白眉でしょう。
E"(STILL) A GLIMMER OF HOPE" 
変拍子。7拍子かな。いとも簡単にこういう変拍子を弾いてしまうというのは伊達にプロではないね。と思っているうちに4ビートになっていたり・・・。
F"CONSEQUENCES PART T" 
フリーテンポのインタープレイ。と思っていると、定型リズムをベースが打ち始める。タイトルが「なりゆき」だからこれでいいのかも。
G"CONSEQUENCES PART U" 
前曲からの延長線という感じで始まる。なかなかスリリングで面白い「なりゆき」だ。
H"NEVER LET ME GO"
 唯一のスタンダード・ナンバー。ピアノ・ソロ。パワフル・プレイの後だけに余計にしっとりと心に沁みる。

僕が今までに聴いたKIKOSKIの3枚のピアノ・トリオに比べると断然いいね。暴力的ともいえる剛腕、超重量級・サポートの二人が何と言ってもいいし、それに負けていないKIKOSKIのピアノ・プレイも称賛されるべきものだろう。
ただし、聴く人を選ぶ。誰にでも心地よいかというとそうではない。それと、シチュエーションも選ぶ。聴くにはそれなりの態勢が必要だ。
久しぶりに聴いた剛腕、超重量級ピアノ・トリオということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2012.09.24)

試聴サイト : http://www.crisscrossjazz.com/album/1346.html
         http://www.youtube.com/watch?v=2jVlwjl3r6k
         http://www.youtube.com/watch?v=jBR1v_uvF9w&feature=related



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