独断的JAZZ批評 935.

KENICHI SHIMAZU TRIO
「激情的バラード」
"ALL KINDS OF BALLADS -A TRIBUTE TO HERMAN FOSTER"
嶋津健一(p), 加藤真一(b), 岡田佳大(ds)
2005年6月 スタジオ・ライヴ録音 (ROVINGSPIRITS : RKCJ-2016)

嶋津健一のアルバムは今までに2枚紹介している。いずれも2009年6月の同日録音で、"THE COMPOSERS T"(JAZZ批評 617.)がMICHEL LEGRAND集で、"THE COMPOSERS U"(JAZZ批評 624.)がJOHNNY MANDEL集となっている。いずれもパワフルな昂揚感を堪能でき、3人の化学反応も体現できるという優れたバラード集だった。
翻って、本アルバムは遡ること4年、2005年の録音だ。同様に、スタジオ内にオーディエンスを入れてのライヴ録音となっている。
本アルバムでは副題に"A TRIBUTE TO HERMAN FOSTER"と付いている。このHERMAN FOSTERは、島津のニューヨーク生活10年の中で師と仰ぐピアニストだったという。

@"MORE THAN YOU KNOW" 「トリオの基本コンセプトは、3人の位置関係を固定しないこと」で、お互いが対等な立場で演奏している。単にバラードがバラードで終わらない。必ずと言って良いほどクライマックスが用意されているのだ。
A"PRA DIZER ADEUS" 
マレットを使用したラテン・タッチ。
B"SUNFLOWER" 
最初のイントロで"DJANGO"が始まるのかと思ったが、さにあらず。現れたのはHENRY MANCINIが書いた「ひまわり」のテーマ。
C"LOVE WON'T LET ME WAIT" 存在感があるのは岡田のドラミング。確かに、良く歌う。
D"THE GOOD LIFE" 
GEORGE ROBERT & KENNY BARRONの同名タイトルのアルバム(JAZZ批評 902.)やDAYNA STEPHENSの"PEACE"(JAZZ批評 916.)でも演奏されている美しいバラード。テンション高めだが少々粗い印象を拭えない。
E"SUNDAY, MONDAY OR ALWAYS" 
まさに、激情型バラード!
F"GEE BABY AIN'T I GOOD TO YOU?" 
バラードがバラードだけで終わらない。昂揚感を徐々に醸成していきクライマックスが用意されている。そこに至るまでの3人のやり取りも面白いが少々オーバー・アクションか?拍手も歓声も何もないというのも違和感がある。
G"RED SAILS IN THE SUNSET" 
H"NEVER LET ME GO" 
終始、フリーテンポで進む。3人の息が合っていないとこうはいかない。

ノリとしてはライヴのノリ。そのために、スタジオ内にオーディエンスを入れているのだろう。その一方で、拍手や歓声が全く聞こえないというのも違和感がある。どうやって録音しているのだろう?拍手や歓声を出さないようにオーディエンスに予め要請しているのだろうか?それとも、ミキシングの段階で拍手や歓声の音だけ削除しているのだろうか?
全9曲、バラードであるが、単なるバラードでなくて、「激情的バラード」とでも命名したくなる演奏ぶりだ。そのことは先に紹介した2枚のアルバムにも言えることだ。これが嶋津健一トリオのスタイルなのだろう。   (2015.05.04)

試聴サイト:http://www2.big.or.jp/~n-fujii/jazzDB/disc_HTML/24514.htm



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