独断的JAZZ批評 902.

GEORGE ROBERT & KENNY BARRON
漫然と美しい曲ばかりを集めすぎたというのが僕の偽らざる印象だ
"THE GOOD LIFE"
GEORGE ROBERT(as), KENNY BARRON(p)
2014年5月 スタジオ録音 (SOMETHING COOL : SCOL-1005)

デュオ・シリーズ、第5弾。
「これこそが"JAZZ"だ、と・・・」と評したのが2002年録音の"PEACE"(JAZZ批評 147.)だった。あれから12年、GEORGE ROBERTとKENNY BARRONのデュオ・アルバムの新譜がリリースされた。レーベルは同じく"DIW"グループの"SOMETHING COOL"だ。
ROBERTは"PEACE"で一躍有名になったし、BARRONは押しも押されぬジャズ界の重鎮になった。その二人が組んで12年ぶりに録音されたのが本アルバムだ。


@"THE GOOD LIFE" 
ライナーノーツによるとROBERTは長く深刻な病を患っていたそうで、これは復帰作にあたるのだろう。そう言えば、音色が少し変わったような・・・。少し繊細になったような・・・。
A"HYMN TO LIFE" 
昨年、大病を患ったROBERTの人生賛歌。
B"SPRING CAN REALLY HANG YOU UP THE MOST" 
これも美しいバラード。この二人の手に掛かるとより一層、美しくて切ない。
C"FLORENCE" 
ROBERTの恩人に捧げたバラード。
D"JAPANESE GARDEN" 
京都の庭園からインスパイアーされて書いた曲らしい。ボサノバ調なのが面白い。
E"A TIME FOR LOVE" 
「いそしぎ」などで知られるJONNY MANDELの書いた名曲。この曲ではJENS SONDERGAARDとKENNY WERNERのデュオ・アルバム"A TIME FOR LOVE"(JAZZ批評 509.)も素晴らしいので参考までに記しておこう。
F"BILLY STRAYHORN" 
ROBERTのオリジナル。これも美しい曲で、ここまで来ると似たような美しい曲ばかりをよくぞ集めたという感じになってくる。ちょっと行き過ぎた印象を拭えない。
G"PULLY PORT" 
H"LUSH LIFE" 
FのタイトルにもなったBILLY STRAIHORNの書いた有名曲だが、これも美しいバラードだ。
I"GOODBYE"
 亡くなった身内の4人に捧げた曲だという。とても切ない。これを聴きながら、STAN GETZとKENNY BARRONのデュオ・アルバム"PEOPLE TIME"(JAZZ批評 231.)を僕は思い出していた。

全10曲中、6曲がROBERTのオリジナル。そして、どの曲も美しい。あえて言うと美しすぎる!
協和音が不協和音の存在によってより引き立つのと一緒で、不協和音的な存在の曲が欲しかった。高速4-ビートでも良いし、グルーヴィなブルースでも良かった。漫然と美しい曲ばかりを集めすぎたというのが僕の偽らざる印象だ。
制作側では"PEACE"の「二匹目のドジョウ」を狙ったのかもしれない。
しかし、"PEACE"が躍動感と美しさに溢れるライヴ盤であるのに対して、本アルバムはスタジオ録音盤。オーディエンスの目の前で演奏し、その反応を逐一享受できるライヴ録音とスタジオ録音では演奏者のノリが違うのだ。
そういう意味で、物足りない。
もし、ROBERTとBARRONのデュオを初めて手にするというなら、"PEACE"(JAZZ批評 147.)の方を強くお勧めしたい。・・・と、少々辛口になってしまったが、良いデュオ・アルバムであることは否定しない。   (2014.11.06)

参考サイト : https://www.youtube.com/watch?v=joudoHJOIdg



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