独断的JAZZ批評 933.

FUMIO KARASHIMA
ピアノの万華鏡
"EVERYTHING I LOVE"
辛島文雄(p)  2014年7月 沖縄市民小劇場あしびな〜録音 
(PIT INN : PILM-0004)

辛島文雄、7年ぶりのソロピアノだという。僕にとっては初めてのソロだ。
辛島のアルバムは今までに2枚紹介している。1枚が2003年録音の"IT'S JUST BEGINNING"(JAZZ批評 206.)で、日本人トリオで構成されている。もう1枚が2005年録音の"GREAT TIME"(JAZZ批評 318.)で、ベースにDREW GRESS、ドラムスにJACK DeJOHNETTEという豪華メンバーで構成されている。いずれも男の中の男のジャズって雰囲気で星5つを献上している。
翻って、本アルバムは辛島66歳での録音で、沖縄の市民小劇場で録音されている。選曲は、まさにタイトル通り、"EVERYTHING I LOVE"で、好きな曲を集めただけだそうだ。

@"EVERYTHING I LOVE" COLE PORTERの書いた名曲数あれど、ジャズ・チューンとして多くのミュージシャンに愛されている曲のひとつ。フリー・テンポからイン・テンポにシフトして行くその様が良い。
A"THE GIRL FROM IPANEMA" 
左手の重低音がいかにもこの人らしい。軽快さと重厚さを兼ね備えたボサノバ。
B"SOLITAIRE" 
C"BRILLIANT DARKNESS" 
この曲は先に紹介した"GREAT TIME"(JAZZ批評 318.)の中でも演奏されている辛島のオリジナル。こういう曲は壮絶バトルのトリオ演奏のド迫力には敵わない。
D"MY FOOLISH HEART" 
曲によって演奏スタイルがまるで違う。まるでピアノの万華鏡だ。このトラックではシンプルでリリカルなシングル・トーンが印象的。
E"RECORDA ME" 
今度はスピード感とドライヴ感に溢れた演奏でグイグイと前に進む。
F"LATE AUTUMN" 
フリー・テンポのバラード。少しメランコリーな、少しディープな演奏だ。
G"HOW MY HEART SINGS" 
心と同時にピアノも歌っているんだよね!
H"MALAIKA" 
このタイトルはスワヒリ語で「天使」を意味するらしい。曲想も演奏も天使の如く。
I"TOYS" 
HERBIE HANCOCKの曲。
J"WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE" 
この曲はMICHEL LUGRANDの書いた佳曲。僕の中では、この曲というとHELGE LIENの同名アルバム(JAZZ批評 228.)をすぐに連想してしまう。併せて、聴いてほしいアルバムだ。
K"I THOUGHT ABOUT YOU" 
メランコリックな気怠い演奏が最後は大きなうねりをもって終わるところがいかにも辛島らしい。

辛島文雄と言えば1980年から6年間、ELVIN JONES JAZZ MACHINEに参加した経験を持つ。だから、あのELVINのドラミングに対抗できるピアノのタッチを持っている。ドラムに負けない芯のしっかりしたピアノだ。
「50歳で弾けなかったことが66歳になったら弾けたんだろうね。でも70歳になったら、また別の世界があるだろうからもちろんこれで終わりじゃないけどね」とライナーノーツに書いているが、是非、70歳の世界も聴かせてもらいたい。
本アルバムはピアノの万華鏡が味わえるということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2015.04.24)

試聴サイト:見当たりません。




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