独断的JAZZ批評 932.

DAYNA STEPHENS
ピアノとギターに不完全燃焼の印象を拭いきれない
"I'LL TAKE MY CHANCES"
DAYNA STEPHENS(ts, bs on C), CHARLES ALTURA(g), GERALD CLAYTON(p, organ on C), JOE SANDERS(b), BILL STEWART(ds), BECCA STEVENS(vo on E)
2013年1月 スタジオ録音 (CRISS CROSS : CRISS 1361 CD)


DAYNA STEPHENSが参加しているアルバムは、今年3枚目になる。1枚目が錚々たるメンバーを揃えたバラード集"PEACE"(JAZZ批評 916.)で、これはなかなか印象深いアルバムだった。2枚目がTHEO HILLがリーダーの"LIVE AT SMALLS"(JAZZ批評 923.)で、ここではテナー・サックスのほかにEWIという電子楽器にもトライしていた。
本アルバムは、ギターに今話題のCHARLES ALTURA、ピアノにGERALD CLAYTONを迎えている。ベースにJOE SANDERS、ドラムスにBILL STEWARTというのも嬉しいではないか!

@"GOOD TREE, GOOD FRUIT" コンテンポラリーなアメリカのジャズっていう雰囲気。正直、無機質な印象を拭えない。テーマもアドリブも面白くないと言えば面白くない・・・。
A"JFK INTERNATIONAL" 
アップ・テンポでグイグイ進むのだけど熱っぽくない!これだけの役者が揃っているのに、どこか醒めた感じ。
B"ADRIFT" 
現代アメリカのジャズ・ピアノの雄、AARON PARKSの曲を採用しているのも面白い。
C"DIRTY" 
CLAYTONはオルガンを演奏しているが、このアルバムの中では一番切れているのでは?本アルバムの中では一番瑞々しさを感じる。
D"UNREQUITED T" 
SANDERSとSTEWARTのコンビネーションはいいね。4ビートを刻んでズンズン進むが、躍動感に満ちている。テナー〜ギター〜ピアノと繋いでテーマに戻るが、もう少し熱くなって欲しかった。
E"PRELUDE TO A KISS" 
この曲のみヴォーカル入り。ファルセットで歌っているのだろうか?ひ弱でか細い声に聴いている側が息苦しくなってしまう。このトラックはなくて良かった。
F"FIELD OF LANDMINES" 
テーマが面白くない。最近のジャズメン・オリジナルはこういう傾向が強い。何曲かはスタンダードを入れないとつまらないだけで終わってしまう。
G"I'LL TAKE MY CHANCES" 
哀愁を含んだ大人し目のテーマ。ここではベースのSANDERSが楽しげに遊んでいていいね。
H"WEEZY" 
前半穏やかで後半は高速4ビートを刻む。
I"UNREQUITED U"
 テイク2。やはりSTEWARTのシンバル・レガートは最高だ。太いSANDERSのウォーキングと、これだけで躍動感が湧いてくる。ギターとピアノの醒めたアドリブが終わり、SANDERSのベース・ソロが聴けると身構えているとそのままフェード・アウトしてしまう。なんてこった!

本アルバムはJOE SANDERSとBILL STEWARTという最高のリズム陣を配しながら、ピアノとギターに不完全燃焼の印象を拭いきれない。
先に紹介した2枚のアルバムは録音年月が不明であるが、リリースされた時期から行って2013年から2014年にかけてだろう。恐らく、本アルバムを含めて録音時期はそう変わらないと想像できる。一方で、メンバーはほとんど変わっていて、JOE SANDERSが本作と"SMALLS"の両方に掛け持ちしているくらいだ。
しかし、演奏内容はそれぞれのアルバムで全くと言って良いほど異なる。あとはリスナーの好み次第ということになるのだろう。
僕の好みとしては、「いいテーマにいいアドリブあり」で"PEACE"(JAZZ批評 916.)を推したい。   (2015.04.18)

試聴サイト:http://www.amazon.co.uk/Take-Chances-Dayna-Stephens-Quintet/dp/B00EYTRAD8



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