独断的JAZZ批評 863.

大石 学 (MANABU OHISHI)
良い音楽というのは何回も繰り返して聴きたくなるし、何回聴いても聴き飽きないものだ
"EARTH SONG"
大石 学(p) 2014年1月 ふしぎの森(宇都宮)録音 (MO-001)


大石学のたった100枚限定のアルバムだそうだ。もうすでにネット予約で全て埋まったらしい。
以前にも限定50枚で、不慮の事故で亡くなったCECIL MONROEに捧げたソロ・アルバム"REQUIEM"(JAZZ批評 745.)があった。
今までに、この大石のアルバムは5枚(JAZZ批評 643. 690. 745. 760.  803.)紹介している。そのいずれもが星5つだ。今までに340人近くのピアニストのアルバムを紹介してきて、5つ星が5枚以上あるピアニストというと、BILL EVANS、BRAD MEHLDAU、CHICK COREA、ENRICO PIERANUNZI、KEITH JARRETTE、KENNY BARRON、STEFANO BOLLANI、それと大石学の以上8名しかいない。
僕自身がいかに大石のピアノに魅せられているかという証左でもあり、同時に、世界で一流と言われるジャズ・ピアニストと肩を並べるほどの実力者であるということも間違いのないところだろう。

@"SASAYAKI" 前奏曲的なしっとりとした曲。大石のピアノは限りなく美しい。
A"G.D (GEORGE DUKE)" 
ジョージ・デュークをタイトルとした曲。昨年8月に67歳で急逝したフュージョン系キーボード奏者という印象しか僕にはないが、ここでの演奏はリリカルだ。
B"BJORK" 
アイスランドの歌姫、ビョークをタイトルにした曲で激しく躍動する。こういう演奏がひとつ入ることでアルバム全体がキリリと締まる。大石のピアノは左手の重低音を活用するのでダイナミズムが醸成されていく。ただ美しいだけではなくて力強さもあるのだ。
C"MILTON (SONG OF FOREST)" 
ブラジルのシンガー・ソングライター、ミルトン・ナシメントをタイトルにしている。美しい曲だ。
D"LIGHT COLORS" 
これも、どこまでも美しくて穢れのない曲。心が澄み渡っていくような・・・。
E"ELEVEN IN THE PUZZLE" 
弾き始めがSTINGの"FRAGILE"に似ているのでアレッと思ったが、違った。
F"WONDER FOREST (ふしぎの森)" 
このアルバムを録音した場所だろうか?牧歌的な曲想に心地よいリズム。森の妖精でも舞っているような・・・。こういう演奏こそ大石の真骨頂だ。
G"IN THE SILENCE (FOR 中原中也)" 
中原中也の詩に触発された曲らしい。タイトルの如し。間奏曲のようでもある。
H"ESPERANZA" 
いま、話題のアメリカの女性ベーシストでシンガーのエスペランサ・スポルディングのことらしい。改めて、このエスペランサのYouTubeを確認してみたけど、男顔負けの強いビートでウッド・ベースを弾いているので驚いた!なおかつ、歌も上手い。タンゴのような曲想で実に爽やか。
I"EARTH SONG" 
本アルバム中、最長の5分と40秒。滋味に溢れる曲で、まさに、大石ワールドなのだ。徐々に高揚感を増していく。
J"VANGUARD (気仙沼)"
 昭和42年創業の気仙沼にあるジャズ喫茶、ヴァンガードのことかな?東日本大震災の津波で水没という被害にあいながら、現在は営業を再開されているらしい。店へのオマージュだね。

本アルバムは、当初、澤野工房からリリースされる予定だったが澤野氏が病気療養中ということで急遽、自費出版になったらしい。しかも、ネット販売で100枚だけの限定発売だという。
2日前にこのアルバムをゲットして以来、仕事中のBGMを含めるともう20回以上フルに聴いている。良い音楽というのは何回も繰り返して聴きたくなるし、何回聴いても聴き飽きないものだ。
これだけの音楽が大手の流通に乗らないで、しかも、100枚限定というのはいかにも惜しい。多くのジャズ・ファンに聴いてほしいアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2014.03.27)

試聴サイト : 残念ながら見つかりません!
参考サイト : https://www.youtube.com/watch?v=Yyuztmhzxac



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