独断的JAZZ批評 873.

THOMAS ENHCO TRIO
クラッシク好きな方にお勧め
"FIREFLIES"
THOMAS ENHCO(p), CHRIS JENNINGS(b), NICOLAS CHARLIE(ds)
2011年11月 スタジオ録音 (SONG X JAZZ : SONG X 021)

THOMAS ENHCOの最新盤だと思って入手したのであるが、蓋を開けてみたら、傑作アルバム"JACK & JOHN"(JAZZ批評 830.)よりも2ヶ月古かった。調べたら2012年に別のジャケット・デザインでリリースされていた。ちょっと肩透かしを喰らった格好だ。
もう1枚紹介しているENHCOのアルバム、"THE WINDOW AND THE RAIN"(JAZZ批評 688.)よりは1年以上新しい。
本アルバムの録音時で23歳。今現在でも25歳という若さだ。フランス出身、しかも甘いマスクと相まって「ジャズ界の貴公子」なんて呼ばれているらしい。確かに、先の"JACK & JOHN"では、ベテランのJACK DEJOHNETTE(ds)とJOHN PATITUCCI(b)を向こうに回して八面六臂の活躍ぶりだった。
一方、本アルバムのサイドメン、CHRIS JENNINGS(b), NICOLAS CHARLIE(ds)は"THE WINDOW AND THE RAIN"にも参加していたメンバーだ。
Aの「トロイメライ」以外はENHCOのオリジナルだ。


@"THE OUTLAW" 
イン・テンポになってから緊張感のあるインタープレイが展開される。ドラムスがやや単調なのが残念。
A
"YOU'RE JUST A GHOST" しっとりとした佳曲。こういう曲を作れるというのは大した才能だと思う。将来、スタンダード化してもおかしくない。このアルバムの白眉でしょう。
B"TRAUMEREI" 
シューマンの「トロイメライ」 あまりジャズっぽくない。
C"TRAIN DE NUIT" 
これもクラッシク風の演奏。
D"AWAKENING (INTRO)" 
2分弱の3人のインプロ。アブストラクト風。
E"WADI RUM" 
前トラックより途切れることなく進む。少々大げさなインタープレイからイン・テンポに入っていき大合奏となる。
F"SOULMATE (TO LEA)" 
ピアノ・ソロ。牧歌的な匂いのする佳曲。こういう力の抜けた自然体がいいね。
G"MORNING BLUES" 
40秒で終わる超高速のブルース。
H"LA FENETRE ET LA PLUIE" 
昔懐かしいクラシック・ジャズの雰囲気。
I"BALLADE POUR UN ESPRIT NOCTURNE" 
これも前曲と似たようなクラシックの匂いのする雰囲気のバラード。
J"BOUMBOUMBOUM (INTRO)" 
2分弱の3人のインプロ。
K"OPEN YOUR DOOR" 
このトリオ、ドラムスが弱いかな?躍動感が湧いてこないのが辛いね。
L"CHORAL" 
静かなピアノ・ソロ。

本アルバムの2か月後に録音された"JACK & JOHN"(JAZZ批評 830.)ではベテランのDEJOHNETTEと PATITUCCIを向こうに回して丁々発止の一発勝負を展開していた。
それに比べると、本アルバムはジャズの醍醐味という点で劣り、よりクラッシクの匂いが強い。
ジャズ本来の醍醐味を楽しむなら"JACK & JOHN"の方をお勧めしたいが、クラッシク好きな方には本アルバムの方が楽しめるかもしれない。   (2014.05.10)

試聴サイト : https://www.youtube.com/watch?v=Cd34E-YxZVo
参考サイト :
 https://www.youtube.com/watch?v=5k9QfyjOhrQ 




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