独断的JAZZ批評 853.

ALAN PASQUA
優しさと美しさに溢れたアルバム
心癒される1枚
"TWIN BILL"
ALAN PASQUA(p)
2011年6月 スタジオ録音 (BFM : 302 062 411-2)


ALAN PASQUAは最近、嵌っているピアニスト。松山のジャズ友に紹介いただいた。
1999年録音のライヴ盤"LIVE AT ROCCO"(JAZZ批評 845.)も2007年録音のスタンダード集"STANDARDS"(JAZZ批評 848.)も、3者のバランスと緊密感も申し分なく滋味あふれるアルバムだった。ドラムスのPETER ERSKINEとベースのDAVE CARPENTERが良い味出していて、役者が揃ったという感じであった。
残念なことに、ベースのCARPENTERが2008年に心臓麻痺によって急逝してしまったというのはピアノ・トリオ・ファンにとって大きな哀しみだ。
翻って、本アルバムはPASQUAのソロ・アルバムだ。ソロと言っても多重録音を施しているのでピアノ・デュオみたいな感覚もある。サブタイトルに"TWO PIANO MUSIC OF BILL EVANS"と書かれている。EVANSのオリジナルが6曲、EVANSの盟友・SCOTT LA FAROの曲が1曲。MILESの曲とスタンダードとトラディショナルが各1曲、PASQUA自身のオリジナルが1曲という構成になっている。

@"VERY EARLY" 多重録音だからと言って、音数が2倍になっているようなことはない。あくまでも装飾的に付け加えられたという感じで節度がある。弾き過ぎという印象も全くない。
A"NARDIS" 
MILESの書いた名曲。多重録音にも拘わらず2台のピアノで同時に会話している感じ。
B"TIME REMEMBERED" 
C"GLORIA'S STEP" 
LA FAROの曲。EVANSの"SUNDAY AT THE VILLAGE VANGUARD"(JAZZ批評 829.)の中でも演奏されていた。
D"TURN OUT THE STARS" 
E"FUNKALLERO" 
ピアノによるベース・ラインが躍動感を醸成し、気持ちの良い演奏に仕上がっている。
F"TAKE ME OUT TO THE BALLGAME" 
このPASQUAはBILL EVANSの大ファンと同時に大の野球ファンでもあり、スタンダードにはこの曲が選ばれた。
G"INTERPLAY" 
EVANSの書いたブルース。少しゆっくり目に演奏されている。とても良い曲だと思う。
H"WALKIN' UP" 
演奏に一体感があり、言われない限りオーバーダビングしているとは分からないのでは?
I"VINDARNA SUCKA UTI SKOGARNA" 
スウェーデンのフォークソング。哀しみを湛えた曲だ。かつてEVANSがスウェーデンのヴォーカリスト・MONICA ZETTERLUNDとレコーディングしたという。
J"GRACE" 
このアルバム、唯一のPASQUAのオリジナル・バラード。

ALAN PASQUQは大好きなものとして、野球とBILL EVANSとピザを挙げている。このアルバムは大好きなEVANSに捧げたものだ。
かつて、1978年にEVANSも多重録音によるソロ・アルバム、"NEW CONVERSATIONS"というアルバムをリリースしている。今回、PASQUAがそれを真似たのかは分からないが、いずれにしても、ピアノの多重録音を施してこのアルバムを作った。
多重録音にもかかわらず、決して音数は多くない。極めて自然に演奏され、自然に録音されている。
このアルバムはEVANSへのデディケート盤ということで優しさと美しさに溢れたアルバムとなった。心癒される1枚。
願わくば、一発ガツンという演奏があれば、さらに良かった。   (2014.02.23)

試聴サイト :
 http://www.youtube.com/watch?v=mxXqL0d8yHQ
         http://www.youtube.com/watch?v=NlMslNYTVUk



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