独断的JAZZ批評 862.

RICK ROE
RICK ROEには場末の酒場のソロ・ピアノが似合っている・・・と思うけど、どうだろう?
"SWING THEORY"
RICK ROE(p), ROBERT HURST(b), KARRIEM RIGGINS(ds)
2011年9月 スタジオ録音 (UNKNOWN RECORDS)

RICK ROEを聴くのは久しぶりだ。
かつて、"MINOR SHUFFLE"(JAZZ批評 478.)というソロ(3曲のみトリオ)・アルバムがあったが、それはもう6年も前のことになる。日本ではほとんど無名に近いピアニストであると思う。アメリカでもマイナー・ピアニストと喧伝されている。アメリカのミシガン州界隈で活躍しているピアニストで、「マイナー・ピアニスト、大いに結構」というスタンスでいるのではないかと想像する。何も世界的に有名になることばかりが能ではなくて、片田舎で自分のやりたいことを突き詰めるということがあっても良いだろう。確かに"MINOR SHUFFLE"のピアノの出来は相当良くて、こんなのを場末の酒場で聴けたら望外な幸せを感じてしまうに違いない。
翻って、本アルバムであるが、全10曲のうち、ROEのオリジナルが4曲とディズニーの映画音楽で知られるALAN MENKENの曲が
5曲も挿入されている。

@"SWING THEORY" 
泥臭いテーマだ。アドリブでは軽快な4ビートを刻んでスイングしている。流暢で歯切れの良いピアノだ。
A"THELONIOUS KNOWS HOW" 
タイトルからしてTHELONIOUS MONKに捧げた曲なのだろう。まるでMONKが書いたようなテーマだ。少し剽軽で少し泥臭い。ここではHURSTのアルコ奏法が聴けるが、躍動感が失われているのが惜しい。
B"SPIDERMAN" 
C"A WHOLE NEW WORLD" ディズニーの映画音楽に曲をいくつも提供しているMENKENの曲だけに美しくて馴染みやすい曲だ。タイトルだけでは分からなくても曲を聴けば「ああ、この曲か!」と思うはず。
D"PERFECT FIRE" 
前曲と好対照の泥臭い曲だ。
E"SOMETHING THERE" 美しくて馴染みのある曲。ボサノバタッチの軽い演奏だ。ベースとドラムスはサポートに徹している。
F"DIZZY'S DIGS" 
Dもこの曲も、曲として面白くない。とても口ずさめない。途中、長めのベース・ソロとドラム・ソロがあるが、迫力不足。
G"BEAUTY AND THE BEAST" 邦題「美女と野獣」 これも馴染みのある曲だが、ボサノバタッチの軽い演奏だ。
H"PART OF YOUR WORLD" これも聴けば分かる曲だ。MENKENの書いた曲は似たような曲想が集まってしまった。その上、演奏スタイルも似通っている。
I"ONE JUMP AHEAD" MENKENの曲でもこれだけは印象が違う。剽軽というかユーモアがあるというか・・・。

RICK ROEのオリジナルは泥臭くてリズミック。対して、MENKENの曲は美しいメロディと軽いタッチで好対照。二つの顔を見せたような演奏だ。
サポート陣はあくまでも控え目。RICK ROEのワンマン・ピアノといっても良いかも。場末のジャズ・バーで酒でも嗜みながら聴くにはいいかも。まあ、その分、深みはないね。
滅茶苦茶良いわけでもないし、滅茶苦茶悪いほどでもない。中途半端なアルバムでなかなか筆が進まない悩ましいアルバムだ。
考えた末に思った。
RICK ROEには場末の酒場のソロ・ピアノが似合っている・・・と思うけど、どうだろう?   (2014.03.23)

試聴サイト :
 http://rickroe.com/



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