YASUMASA KUMAGAI
若手日本人プレイヤーによる「血湧き肉躍る」デュオ
"OL'SCHOOL JAZZ"
熊谷 ヤスマサ(p), 川村 竜(b),
2009年9月リリース スタジオ録音 (ANTURTLE TUNE : ANTX-4005)


先日、紹介した熊谷ヤスマサの"PRAY"(JAZZ批評 640.) はなかなかのアルバムで、いかにも新世代ピアニスト登場のオーラを発散していた。ピアノの熊谷も凄いと思ったが、ベースの川村竜も凄い。
そうしたら、この黄金コンビの二人が既に1年も前にデュオ・アルバムをリリースしていたではないか!レーベルは同じANTURTLE TUNE。アナログ録音によるアルバムだ。"PRAY"の演奏曲目の全てが熊谷のオリジナルなのに対して、このアルバムはスタンダード・ナンバー中心だ。タイトルも"OLD SCHOOL JAZZ"である。"OLD SCHOOL"には「旧派」とか「保守派」という意味があるけど、「古きが新しい」と感じさせる正々堂々のチャレンジ。
この二人、なかなか面構えが良ろしい。熊谷はそこいらに転がっているヤンキーの兄ちゃん(失礼!)みたいだし、川村はちょっと見、関取(失礼!)のようでもある。この二人がこんなに凄い演奏をするとはとても思えなかった。人は外見によらず!である。
まあ、聴いて欲しい。若手日本人プレイヤーによる超弩級のデュオを。

@"DRIFTIN' " 
川村の太いベース音に痺れてしまう。久々に聴く豪腕ベーシストである。二人の呼吸もピッタリだ。デュオなのにデュオを感じさせないアンサンブルの素晴らしさ。凄い日本人プレイヤーが現れたものだ。
A"CARAVAN" 
川村の力強い定型パターンで始まる。二人だけでこれだけ躍動できるというのは凄い。
B"IF I WERE A BELL" 
全く、何ていう二人なのだ。小憎らしいほど正々堂々の直球勝負なのだ。こういうケレンミのないジャズに文句をいう奴はおるまい。
C"DUKE ELLINGTON'S SOUND OF LOVE" 
D"ALL THE THINGS YOU ARE" 
こういう聞き古されたスタンダード・ナンバーでも変に小細工しないところがいいね。逆に言えば、それだけの実力がなければ正面突破は出来ないだろう。
E"UP JUMPED SPRING" 
川村のベース・ソロ。
F"EVIDENCE" 
G"STABLE MATES" 
H"CHEROKEE" 
この曲のデュオといえば、TERJE GEWELTの"HOPE"(JAZZ批評 275.)を思い出す。いずれ劣らぬ好勝負なので自分の耳で確かめて欲しい。
I"SLEEPING DANCER SLEEP ON" 
J"BLUES" 
川村のベースが唸りを上げるミディアム・スローのブルース。GROOVY !
K"ALONE TOGETHER" 
小細工なし。イン・テンポもなってからの4ビートが躍動している。エンディングも素晴らしい。
L"SALT PEANUTS" 
軽快でひょうきんなテーマ。二人のインタープレイが素晴らしい。
M"AMAZING GRACE" 
熊谷のソロ。いやあ、心に沁みるなあ!

僕はこのアルバムを入手以来、何週間も聴き続けてきたけど、何回聴いても聞き飽きる事がない。しかし、これをプロデュースしたプロデューサーは凄いね。こういうことをやってしまうスタッフとプレイヤーに絶賛の拍手を!
MAGNUS HJORTH〜PETTER ELDH(JAZZ批評 609.)の黄金コンビにも匹敵する日本人デュオの誕生である。このアルバムを聴いていたらMAGNUSとPETTERのデュオ・アルバムが聴いてみたいと思った。実は、この二人、アルバムの中でデュオ演奏をすることはあっても純然たるデュオ・アルバムはりリースしていない。ウーン、このバトルは面白そうだ。
久しぶりに「血湧き肉躍った」デュオ・アルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。こういうジャズを聴いていると胸がスカッとして、実に、清々しい気分だ。   (2010.08.25)

試聴サイト : http://ototoy.jp/opus/package.php/10785



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独断的JAZZ批評 646.