独断的JAZZ批評 734.

TADATAKA UNNO
海野のピアノ・プレイを堪能できるのと同時に、スタンダードの素晴らしさを再認識させてくれるアルバムだ
"TADATAKA UNNO PLAYS JAZZ STANDARDS"
海野 雅威(p)
2011年4月 スタジオ録音 (HAPPINET : HMCJ-1009)

つい先日、海野のソロ・ライヴに行ってきた。このアルバムの発売記念ライヴ・ツアーのひとつで、場所は池袋のAPPLE JUMP。海野のライヴを聴くのは昨年12月の"BODY AND SOUL"以来。その時は、HASSAN J.J. SHAKUR(b)とJIMMY COBB(ds)のトリオだった。
海野のアルバム紹介はリーダー作としては昨年リリースされた"AS TIME GOES BY"(JAZZ批評 660.)があり、5つ星にするか迷ったが、まだまだ伸び代があるということで4.5星にした。また、鈴木良雄がリーダーとなった"FOR YOU"(JAZZ批評 416.)も優れたアルバムで聴くと「ホッとする」アルバムだった。いずれも海野の人となりの表れた心温まるアルバムであった。
翻って、このアルバムはソロ。しかも、全編スタンダードと呼ばれる名曲ばかりだ。海野自身も言っていたが、スタンダード・ナンバーは長い年月をかけてリスナーに選ばれた名曲ばかり。兎に角、曲が良いのだ。これを自分の思い通りに、誰に遠慮することもなく弾けることにプレイヤーとしての喜びがあるのだろう。


@"TAKE THE “A” TRAIN" 軽快な右手と表現力豊かな左手とのマッチング。
A"HAVE YOU MET MISS JONES ?" 
B"AUTUMN IN NEW YORK" 
大好きな曲のひとつ。MCで言っていたが、ニューヨークは秋が良いのだと・・・。海野はニューヨークに渡ってもう3年の月日が経つらしい。
C"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" 
D"THE FIRST MEETING" 
唯一、クラシックから選んだ一曲。
E"THE DAYS OF WINE AND ROSES" 
海野が9歳のときから引き続けている十八番だそうだ。確かに、躍動感豊かで良い演奏だ。
F"LUSH LIFE" 
G"BLUE WIG" 
ブルース。表情豊かな左手がいいね。
H"WHAT A WONDERFUL WORLD" 
9.11のニューヨーク・テロから10年、3.11の東日本大震災から半年・・・でも、世界は素晴らしいとの願いを込めて。
I"HOW DEEP IS THE OCEAN" 
J"ALL THE THINGS YOU ARE" 
フリー・テンポでテーマを演奏した後、イン・テンポに。とても良い演奏だ。
K"AMAZING GRACE〜IF I CAN HELP SOMEBODY〜FURUSATO" 
やはり日本人なのだ。「ふるさと」が心に沁みる。この曲というと、今は亡き本田竹広のソロ・アルバム"MY PIANO MY LIFE 05"(JAZZ批評 389.)の演奏を思い出す。
L"SACK FULL OF DREAMS" 
M"YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS" 
ネチッと重くなりそうなテーマなのだけど、カラッとしているあたりは流石だ。
N"SMILE" 


最近は、若い新人でもいきなり全編オリジナルなんていうアルバムを出すケースもあるようだけど、若いうちはしっかりとスタンダードで腕を磨いて欲しいと思う。幾多のプレイヤーが弾いてきたスタンダードで個性を発揮できれば、これは本物でしょう。
このアルバム、とても素敵なスタンダードばかりで、海野のピアノ・プレイを堪能できるのと同時に、スタンダードの素晴らしさを再認識させてくれるアルバムだ。海野の、特に左手のプレイが素晴らしくて、それによって右手のプレイが生き生きと輝いており相乗効果を上げている。
是非、このシリーズの続編を期待したい。例えば、"SKYLARK"や"A NIGHTINGALE SANG IN BERKLEY SQUARE"、"BLAME IT ON MY YOUTH"、"MY ONE AND ONLY LOVE"、"WHEN SUNNY GETS BLUE"なんてスタンダードが入っていたらこれはもう堪りませんなあ!なんて思いながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。「ニューヨークの秋」を思わせるジャケットも素敵だ。   (2011.12.23)

試聴サイト : http://www.happinet-p.com/jp2/music/jazz/unno2.html



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