独断的JAZZ批評 860.

MARC PERRENOUD TRIO
ピアニストの力量はスローにこそ表れる
"VESTRY LAMENTO"
MARC PERRENOUD(p), MARCO MULLER(b), CYRIL REGAMEY(ds)
2013年3月 スタジオ録音 (CHALLENGE RECORDS : DMCHR 71126)

スイス生まれのMARC PERRENOUDのアルバムを紹介するのは3枚目になる。この間、メンバーは不動だ。現在は活動の拠点をスイス、フランス、ドイツに置いているらしい。2008年録音の"LOGO"(JAZZ批評 524.)は若者らしい外連味のない演奏であった。続く、2011年録音の"TWO LOST CHURCHES"(JAZZ批評 856.)はスタンダード以外のオリジナルに面白さがなかった。この間、スタンダード・ナンバーの挿入数は4曲⇒2曲と減って、本アルバムでは1曲になってしまった。スタンダードの解釈とアレンジに稀有な輝きを持っていたので1曲と少なくなてしまったのは少々残念だけど、果たしてどんな演奏を聴かせてくれるのだろう?
全8曲中7曲がPERRENOUDのオリジナルで、残る1曲が"BODY AND SOUL"だ。

@"VESTRY LAMENTO" ベースが定型パターンを刻んで進む。極めてシンプルなサポートを得て、グルーヴィに、そして、自由奔放にピアノが踊っている。これはいいね。
A"IGOR" 
ピアノが饒舌で音の洪水に近い。
B"BODY AND SOUL" 
アルバム唯一のスタンダード。スタンダードの代名詞みたいに多くのミュージシャンに演奏されてきた曲だ。PERRENOUDというピアニストはスタンダードの演奏に非凡な才能を見せてくれる。この演奏も実にシンプル、それでいて胸を打つ何かがある。僕は、ピアニストの力量はスローにこそ表れると思っている。バカテクで速いパッセージを弾きこなすのもひとつの才能であることに変わりはないが、本領はスローにこそ表れるものだ。過去の偉大なピアニストを見ても、スロー・バラードを感情豊かに弾けることが偉大なピアニストたる所以である。
C"WHITE DWARF" 
変拍子だね。何故、こんなに難しいことするのかな?それでいて3人の息はピタリと合っているのだから不思議だ。
D"MADAME JOJO'S" アップ・テンポで元気が出そうな曲。ベースが4ビートのウォーキングを披露している。最初に聴いたときにMAGNUS HJORTH(JAZZ批評 555.)を思い出した。キレの良いピアノ捌きがいいね。
E"BOSENDORFER PIANO CLUB" 
ベーゼンドルファーのピアノは世界3大ピアノと言われ、2008年にヤマハが買い取ったオーストリアのピアノ・メーカーだ。それによって、今も変わらず世界にピアノを供給できていると聞く。果たして、この演奏もベーゼンドルファーによるものかしらん?ここでは早いパッセージも難なく弾きこなす凄腕ぶりを見せているが、このピアニストの本質はここにはない。
F"MAGNETOTAIL" 
ドラムスの長めのソロでスタートする。3人がバラバラのようで、ひとつにまとまっている。不思議な演奏だ。
G"NYMPHEAS BLUES" 
"BLUES"とあるが"BLUES"ではない。32小節の歌モノかな?音数少なく一音一音を紡いでいく。しかも、躍動感がある。PERRENOUDの真骨頂!これこそ、PERRNOUDの本質でしょう!2008年のアルバム"LOGO"(JAZZ批評 524.)の中にある"ALONE TOGETHER"を思い出した。これはいいね。演奏終了後に"WHY"(?)と音声が入っているが、何だろう?録音ミスだろうか?

本アルバムではスタンダードが1曲と寂しいが、オリジナルに良い曲が集まった。@、D、Gはなかなか楽しませてくれる。
このPERRENOUDは速いパッセージも難なく弾きこなす技を持ちながら、それに溺れていないのがいいね。特に、スローにおける一音一音を大事に紡いでいくプレイは良いピアニストの条件を満たしていると思う。ピアニストの力量はスローにこそ表れるというのが僕の信ずるところだ。よーく聴き込んでみるとなかなか楽しませてくれるアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。    (2014.03.14)

試聴サイト :
 http://www.marcperrenoud.com/vestrylamento.html
          このサイトでは全曲、フルに試聴できる!



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