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『飛べ!ダコタ』(監督 油谷誠至) | |||||
フリーペーパー「シネマ・スクウェア」2013.11月号掲載 [発行:シネマサンライズ] | |||||
十月に僕が観た映画は26本だが、そこから特筆すべき作品となると、先ずは、あたご劇場の意欲的な取組“ボリウッド4”からの『きっと、うまくいく』が筆頭に浮かぶ。そして、オフシアター上映ではミヒャエル・ハネケ監督の『愛、アムール』、TOHOシネマズからは外国映画で『クロニクル』、日本映画で『飛べ!ダコタ』ということになる。 なかでも『飛べ!ダコタ』は、大阪・京都よりも一足早い公開を果たしたという珍しい作品だった。製作総指揮の伊与木敏郎が本県出身者であることが影響しているのかもしれない。 昭和の時代にはさして珍しくもなかったけれども、昨今の傾向からすると妙に新鮮に感じられるような、実に古風なまでの正統派反戦映画だった。同じく反戦を訴えても、あたご劇場で同時期に上映された『戦争と一人の女』を企画した寺脇研や脚本の荒井晴彦には、こういうベタを打つ勇気はないだろうなぁなどと思ったが、ちっとも教条的には感じられなかったのが最大の美点だった。ベタはベタでいいのだ!(笑) 個人的には、浜中校長先生(螢雪次朗)が健一(窪田正孝)に頭を下げて謝った場面と森本村長(柄本明)が漁師のおかみさんたちを掴みながら、「あんたたちやわしたちが起こした戦争なんや。そう思わんとに、誰かが起こしたもんやと思うてたら、今度起こしそうになってきたときに止められん。」と言っていた場面が印象深かった。昨今のキナ臭い右傾化に対する作り手の危惧が込められた台詞のような気がする。 戦争というものは、誰の何を守るためのものなのかよく考えるうえでも、途切れることなく、こういう作品は再生産されていかなければならないと改めて思った。 エンドクレジットとともに出て来た当時の実際の写真が本作の締めとして、とても効いていた。 推薦テクスト:「映画通信」より http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20131106 | |||||
by ヤマ フリーペーパー「シネマ・スクウェア」2013.11月号 | |||||
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