『真田幸村の謀略』['79]
監督 中島貞夫

 三ヶ月前に十一人の賊軍を観た際に後半の「黒い水作戦」ですが、あれは…『真田幸村の謀略』にも出てきましたと教わり、同じく笠原脚本なら、きっとこちらでも“権力に使い捨てにされる生命”の群像が描かれているのだろうと予見していたのだが、まさにその通りだった。権勢に盾突く草の根集団としての真田十勇士が描かれていた。

 もっとも本作の脚本には、笠原和夫、松本功、田中陽造、中島貞夫と四人もの名が連なっている。そして、十勇士のなかに、草の根の者として山窩【根津甚八(岡本富士太)】や朝鮮から拉致されてきた者【三好入道】を加えているあたりに制作当時の時代性と心意気を感じた。中島監督が六年後に瀬降り物語['85]を撮ったことには確実に影響を与えているような気がする。

 それにしても、SFもどきのオープニングで始まった映画に相応しい破天荒さに恐れ入った。展開にしても見せ場づくりにしても、自由奔放なエンタメ精神が爽快だ。今は亡き昭和の時代の大俳優がオールスター的に顔見世しているのも愉しい。黒い水作戦はまだしも、未来惑星ザルドス['74]もどきの飛行体が現われるとは、忍術幻術の域を超えていて笑ってしまった。また、先ごろ亡くなったばかりの日野正平の演じた穴山小助が、配役した演者にあて書したような、勇士とは程遠いキャラクター造形で何とも可笑しかった。三好伊三入道(真田広之)はともかく三好清海入道(秋野暢子)に至っては、家康(萬屋錦之介)から夜伽を望まれる美形女性という設えなのだから呆れる。

 史実を踏まえる部分と荒唐無稽に遊ぶ部分との匙加減が豪快にして絶妙で、大いに納得感があったように思う。訳も分からず出鱈目をやっているようには映ってこないところが、昨今のトンデモ劇との違いだと改めて感心した。最後に十勇士が揃って幸村に扮し騎馬で家康に襲い掛かる場面には見覚えがあるような気がしたが、全編を観るのは初めてで、テレビ視聴もしていないように思った。
by ヤマ

'25. 2.16. DVD観賞



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