『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』
(Everybody Wants Some!!)['16]
監督・脚本 リチャード・リンクレイター

 六年前にようやく片付けた宿題だった恋人までの距離(ディスタンス)['95]、十年前にスクリーン観賞した 6才のボクが、大人になるまで。['14]のリンクレイター監督作として気になっていた映画で、僕らの世代には昔懐かしい マイ・シャローナ で始まる1980年を描いた、2016年の作品だ。ちょうど僕が大学を卒業した年に野球推薦で大学に入学をしたジェイク・ブラッドフォード(ブレイク・ジェナー)の過ごすキャンパスライフ前夜とも言うべき四日間が描かれていた。

 野球よりも専ら女の子とのタマ遊びに熱心な大学生たちを観ながら、日米の違いはあれども、当時の大学生の有り体は似たようなものだと苦笑しつつ、最後の場面となる授業初日に大学教員が大きく板書していたFRONTIERS ARE WHERE YOU FIND THEM(開拓すべき場所は自分で見つけるもの)というのは、その通りだったなと懐古気分に浸った。

 田舎の高校から出て来たジェイクが驚いていた「サウンド・マシーン」のようなディスコにも、カントリーバーのダンスホールのような場所にも出入りしなかった僕は、当時流行っていた“ダンパ(ダンス・パーティ)”なるものも、一度だけ「見物」に行ったきりだけれど、本作に出てきたインベーダーゲームは人並みに嗜んだ覚えがあり、'70年代末に欧州旅行を楽しんだ際に各国でゲームセンターを見つけては入り込み、まだ欧州人には知られていなかったと思しき裏技として、劇中でも披露されていた名古屋撃ちを延々と披露して見物人を集め、歓声と喝采を浴びたものだった。

 2016年に三十六年遡っていた何とも緩く大らかなキャンパスライフは、現在は無論のこと、2016年当時にも既に許されなくなっていたような気がしてならない。手元にある公開時のチラシの裏面には、野球はもちろん、女の子、お気に入りの曲、パーティ、お下劣なジョーク等…あらゆることに全力で打ち込み、新たな出会いと恋を経験し少しづつ大人になっていく。…大人の自由を満喫しつつも、大人としての責任を同時に気付き始める微妙な心理などと記されているが、そこまで上等のものではなかったところによさがあったように思う。それでいて、ただのろくでなしではない感じに現実感があって懐かしかった。

 いわゆる体育会系とは一味異なるものを見留てジェイクと付き合うようにしたと思しきビバリー(ゾーイ・ドゥイッチ)のその後のキャンパスライフを観てみたいと思った。演劇科に進学した女子大学生の'80年代のそれを描いた映画というのは、何かあっただろうか。
by ヤマ

'25. 2.15. BS松竹東急よる8銀座シネマ録画



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