『十一人の賊軍』
監督 白石和彌

 先月観た侍タイムスリッパー』に煽られて、'50,60年代の東映時代劇を四本立て続けに観てきた流れを受け、東映のロゴ動画が映し出されて始まる現代の時代劇を観てきた。

 自分が同時代を生きている作品をクラシックと呼ぶのは少々抵抗があるものの、クラシックの意味するところが「古風なものや古典的なさま」ということであれば、六、七十年前の時代劇は今やクラシックと呼ぶのが相当であることをまざまざと知らされるスタイルの東映時代劇だったような気がする。原案としてクレジットされていた笠原和夫への表敬か、まさに“仁義なき戦い”が画面いっぱいに繰り広げられていたように思う。

 筋立てや運び、人物造形に釈然としないところが数多くありながらも、画面の力には流石のものがあったものの、150分超は、些か長過ぎるようにも感じた。山縣有朋やきちんと土佐弁をつかう岩村精一郎も登場していたが、どこまで史実に沿った物語だったのだろう。二年前に観た松竹時代劇峠 最後のサムライとはまるで趣の異なった戊辰戦争譚だったように思う。

 ともあれ、大義を掲げて威を振るう者ほど、ろくでなしであることにおいては昔の武士に限らないことを今更ながらに想起させられ、内戦ほどに馬鹿げた殺し合いはないことを奇しくも先ごろ観たばかりのシビル・ウォー アメリカ最後の日を連想する形で見せてもらった気がする。戦に先立つ分断による覇権争いこそが悪しきものだと改めて思った。

 すると、旧くからの映友が『笠原和夫 昭和の劇』によれば、新発田藩による裏切りと新潟湊明け渡しのみが史実通りで、あとは完全に創作のようです。私も二時間半はやや長いかな?とは思いましたが、それだけの尺を保たせるだけの中身はあったかと思い、ほぼ満足です。そういえば後半の「黒い水作戦」ですが、あれは同じく笠原脚本の『真田幸村の謀略』にも出てきましたね。とのコメントを寄せてくれた。

 賊軍というのが官軍に盾突く賊軍という意味ではなくて、囚人軍という意味での賊軍だったので、なんだかアメリカの戦争映画のようだと思いながら観ていたのだが、やはり創作だったということのようだ。黒い水作戦については、何かで観たことがあるような気がしていたのだが、映友の言う『真田幸村の謀略』['79]は未見作なので、思い違いなのかもしれない。矢庭に同作を観てみたくなった。きっとこちらでも“権力に使い捨てにされる生命”の群像が描かれているのだろう。

 またこちら、武士道からスピンオフしてこんなのを観た👇『武士道シックスティーン』['10]を挙げてきた映友もいたことが可笑しくて、『ポルノ時代劇 忘八武士道』['73]とかも、どうよ(笑)と返すと、既に五年前に輸入DVDで観賞済みとのことに感心した。
by ヤマ

'24.11.10. TOHOシネマズ5



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