『夕陽に立つ保安官』(Support Your Local Sheriff! )['69]
『墓石と決闘』(Hour of the Gun)['67]
監督 バート・ケネディ
監督 ジョン・スタージェス

 ジェームズ・ガーナー主演の西部劇を続けて観た。先に観たのは『夕陽に立つ保安官』で、謎の凄腕ジェイソン・マッカラーを演じ、彼がジャックと呼び掛けるとジャックじゃないジェイクだと返す保安官助手ジェイクをジャック・イーラムが演じる、おとぼけ西部劇で、先ごろ観たばかりの地平線から来た男['71]に先立つコンビ作だった。僕が観た順番のせいもあるのかもしれないが、第二作のほうが見映えがするという珍しいパターンのように感じた。

 直情径行娘のプルーディを演じたジョーン・ハケットは、泥まみれの喧嘩や下着姿での木登り、本当に尻に火が付く料理場面となかなかの奮闘を見せるのだが、『地平線から来た男』でのスザンヌ・プレシェットからの見劣りが否めない気がした。だが、惹かれた男がわざと見せる臆病を成熟と贔屓する遣り取りには含蓄が窺えた。

 それにしても、鉄格子の届いていない牢屋のエピソードの馬鹿馬鹿しさには唖然とした。なぜ逃げない?と呆れる父親(ウォルター・ブレナン)に泣きつくジョー・ダンビー(ブルース・ダーン)の序盤での登場場面との落差に観ているほうも呆れずにはいられない。また、プルーディーの父である町長(ハリー・モーガン)を始めとする町の有力者たちは、無法者一家ダンビー一味との対決に際して、娼館マダム・オーの宿に挙って逃げ込むばかりか、お楽しみ中だったという顚末が描かれていて可笑しかった。


 次いで観た『墓石と決闘』は、確かに原題が示すとおり「銃にものを言わせる時代」の物語だった。ジョン・スタージェス監督自身のOK牧場の決斗から十年後の作品で、1881年10月26日の決闘場面から始まる後日譚だ。

 先ごろ観たばかりの『夕陽に立つ保安官』や『地平線から来た男』のような謎めいたオトボケ風味を演じるよりも、シリアスにワイアット・アープを演じるほうがジェームズ・ガーナーにはずっと似合っていると思ったが、実話に基づくとしながら、当時のワイアット・アープに本作で描かれたような、法と無法との間で抱える葛藤が本当にあったのかどうか、少々怪しい気がしてならなかった。

 クライトン一味の三人を殺したかどで殺人犯に問われたアープ一味に対する裁判官の判決とその判決理由は明快で、これこそが法の取るべきスタンスだと思う。他方で、アイク・クライトン(ロバート・ライアン)による卑怯な闇討ちに対しての法の無力をも印象付けており、任官の持つ政治性や保安官と無法者の間で揺れるアープの拠り所の危うさも納得感のある形で描出されていた気がする。最もろくでもない人物として印象付けられていたのは、アイクではなく、機を観るに敏な沽券無き郡保安官ブライアン(ビル・フレッチャー)だったように思う。

 だが、見所はやはりアープとドク・ホリデイ(ジェイソン・ロバーズ)の互いを尊重しつつ素直ではないイーヴンな関係の妙味にあったように思う。ジェイソン・ロバーズが砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラードを想起させるなかなか好い味を出していたような気がする。

 また、トゥームストーンの保安官事務所に掛けられていた看板が「シティ・マーシャル」となっていてシェリフではなかったことが目に留まった。街の保安官にマーシャルというのはあまり使わないような印象があったからだ。
by ヤマ

'24. 8.12,15. BSプレミアムシアター録画



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