『弟は僕のヒーロー』(Mio Fratello Rincorre I Dinosauri)['19]
監督 ステファノ・チパーニ

 チラシの裏面の記載によれば、ダウン症の弟ジョーを撮影した動画が評判になって書いたジャコモ・マッツァリオールによる2016年の小説を映画化したものらしい。見初めた女の子アリアンナ(アリアンナ・ベケローニ)と親しくなるために、バス通学片道35分の隣町の高校への進学を親友ヴィット(ロベルト・ノッキ)に付き合わせていたジャックことジャコモ(フランチェスコ・ゲギ)が、何ゆえにアリアンナに弟はいないと嘘をついて親友から呆れられ、社会意識の高い彼女から絶交されたかを思うと、ジャックの浅はかさというよりも、彼にそう言わせてしまったものに関心を寄せるべき作品だという気がした。

 姑息な思惑でついてしまった嘘によって無理な繕いを重ねたことで事態が悪化していくさまは、程度の差はあれ誰しも覚えがあり、若いうちにそれによる痛い目に遭っているほうがいいとしたものだ。どこぞの大人たちと違って、事が大きくなったなかで潔く吐露し詫びたジャックは、むしろ天晴れだったようにも思う。そんな兄に僕は、これ好きだよと言ってシャツに鉤十字を描いて慰めに来たジョー(ロレンツォ・シスト)は、確かにヒーローだった。

 原題は「弟は恐竜を追う」との意らしいが、邦題のほうがいいのかもしれない。また、チラシの表には「イタリア版『ワンダー 君は太陽』」とも記されていた。それで言えば、僕はワンダー 君は太陽のほうが好みだが、本作も悪くない。

 そして、作中にスタン・ブラッケージの名が出て来たことに驚き、過日観たばかりのアルモドバル映画に出演していたロッシ・デ・パルマが、ジャコモの叔母役で出演していたことに意表を突かれた。
by ヤマ

'24. 6. 8. あたご劇場



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