「ハリウッド 夢と狂気の映画の都」
https://www.nhk.jp/p/ts/9N81M92LXV/episode/te/PV9JM4Q6GY/
「再びカラーでよみがえるアメリカ:ハリウッド誕生」['18]
https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/JV6L3NG6V2/
「映像の世紀」シリーズ
BS世界のドキュメンタリー

 先に観た映像の世紀バタフライエフェクトは、エジソンが開設した世界初の映画撮影所ブラックマリア製作の『キス』[1896]を序章として始まった。ハリウッド映画なるものをどういうふうに切り取ってあるのか、興味津々で観たのだが、ハリウッド史を概観しつつ「政治トップの狙撃」と「虐待・差別・ハラスメント」という旬ネタをキーワードに、ハリウッドで赤狩りを率先したロナルド・レーガンと、ぼろぼろになって若死にしたジュディ・ガーランドをフィーチャーしていて、流石だなと感心した。

 映画という媒体を大きく変貌させたとのD.W.グリフィスの撮った『国民の創生』[1915]は、今なお宿題映画のままだが、白人至上主義のKKK団を衰退から躍進へと転じさせ、そのユニフォームを決定づけたことを伝え、映画の持つ影響力の大きさを示していたように思う。戦時下では戦意高揚に総動員されて『映画は戦争に行く』[1941]やジョン・フォード監督がアカデミー賞を受賞した『ミッドウェー海戦』[1942]が撮られ、戦後は、下着だったTシャツをファッションとして流行させたマーロン・ブランド(『欲望という名の電車』[1951])や、ジーンズを流行らせたジェームス・ディーン(『理由なき反抗』[1955])らを作品共々取り上げていた。

 グリフィスによる映画の革新が、ハリウッドの街を人口5000人から15万人に躍進させ、『Going Hollywood【虹の都へ】』[1933]が若者たちの合言葉になったという前世紀の開拓時代におけるゴールドラッシュ並みのことが起こったようだ。そこに君臨する「ビッグ5」と呼ばれる五大メジャーの一画であるMGMの総帥ルイス・B・メイヤーがジュディに対して行っていたことをジュディ 虹の彼方に[2019]以上に直截に報じていたように思う。若い女性たちの破格の参集とキャスティング・カウチ(枕営業)に触れ、彼女たちの憧れとなったジュディの夭逝と、同じ挑戦と過ちを繰り返すだろうとの彼女の言葉、今世紀にハリウッドに端を発して全世界に広がった「#Me Too」運動などを映し出し、旧時代のジュディと対照させて新時代のジェシカ・チャステインの証言を挟んでいた。

 俳優から政治家に転じたレーガン大統領の銃撃犯はタクシードライバー['76]にコミットしていたとのこと。他方、大統領の命を救った警護官ジェリー・パーは、レーガンが主演した『シークレットサービスの掟』を観てその職に憧れ、大統領警護官になったのだそうだ。そのことを大統領に伝えるとあれは私が出た映画のなかでも最も安物だったと言われたらしい。


 翌日に観た『再びカラーでよみがえるアメリカ:ハリウッド誕生』には「映像の世紀バタフライエフェクト『ハリウッド 夢と狂気の映画の都』」に登場した場面の数々が色付きで現れた。NHKが製作したバタフライエフェクトでは、ブラックマリアとしていた映画スタジオのことをアメリカ制作のこの番組のナレーションでは、ブラックマライアと呼んでいた。ここで製作されたとの『フレッド・オットのくしゃみ』[1894]は初めて観たが、『大列車強盗』[1903]のほうは、二十八年前となる映画百年の年に地元で開催された「シネ・フェスタ高知」記念上映会でスクリーン観賞しているものだ。

 テレビ画面の右上隅には「ハリウッド誕生」ではなく、「カラーでよみがえるハリウッド黄金期」と記されていたように思うけれども、内容的にはHP記載の「ハリウッド誕生」のほうが相応しい気がする。ヘイズコードの説明をしているのを見て、そう言えば、バタフライエフェクトでは「虐待・差別・ハラスメント」に焦点を当てながらヘイズコードには言及していなかったことに気づかせてもらえた。人物にしても事象にしても、カラー画面になると、より身近に感じられることが改めて分かったような気がする。

 先ごろ視聴した再びカラーでよみがえるアメリカ:大西部への道も面白かったが、「ハリウッド誕生」のほうは、視聴タイミングがよく、更に面白く感じられた。
by ヤマ

'23. 5.24. NHK総合1録画
'23. 5.25. BSプレミアム録画



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