『アニーよ銃をとれ』(Annie Get Your Gun)['50]
『ウィズ』(The Wiz)['78]
監督 ジョージ・シドニー
監督 シドニー・ルメット

 先ごろ「ジョニーよ銃をとれ」を原題とするジョニーは戦場へ行った'71]を久しぶりに再見して、その名を思い出し、観てみたくなったと書いていたら、映友が貸してくれた『アニーよ銃をとれ』を観た。長年気になっていた作品だ。ショウほど素敵な商売はないには耳馴染みがあるけれど、映画を観るのは初めてで、NHKのBS世界のドキュメンタリー選「再びカラーでよみがえるアメリカ:大西部への道で、カラー化した実写のバッファロー・ビルによるワイルド・ウエスト・ショーのほうを先に観たばかりということもあって、こういう映画だったのかと驚いた。

 タイトルになっているアニー・オークリーを演じたベティ・ハットンは、アニーの天真爛漫と純真無垢を明るくタフに演じて似合っていたが、歌唱が妙に癖のある歌い方であまり好みではないように感じていたところに、付録の特典で、最初にキャスティングされていたというジュディ・ガーランドによる♪Doin' What Comes Natur'ly♪と♪I'm an Indian Too♪のシーンの歌唱を観たら、やはり格が違うのだと痛感した。

 “バッファロー・ビル”ウィリアム・フレデリック・コーディ(ルイス・カルハーン)だし、シッティング・ブル(J・キャロル・ネイシュ)も出て来るのだから、“西部劇”日誌リストに挙げようかとも思ったが、ミュージカル西部劇という感じではなく、欧州ツァーにも出ていたから、西部劇のカテゴリーに入れるのはやめておこうと思った。

 それにしても、ラストの“負けるが勝ち”によるハッピーエンドは、今の時代の映画人にはやれないエンディングだろうなと、先ごろ観たばかりの仏映画パリタクシーでマドレーヌが言っていた '50年代だと改めて思った。悪いことばかりの時代でもなかったのよと彼女が言っていた部分も含め、まさしく当時の作品だったように思う。読み書きも出来なかったアニー・オークリーが堂々たる社交を果たすようになっていた。脚本がシドニー・シェルダンとなっていることも目を惹いた。


 翌日の『ウィズ』は、ミュージカル映画の『アニーよ銃をとれ』['50]を観たら、元々はジュディが配役されていたというし、十日ほど前に未来惑星ザルドス』['74]の三度目の観賞をしたところだったので、この機会にアフリカン・アメリカンによる「オズの魔法使」のミュージカル映画を観てみようと思い立って観たものだ。

 いきなりドロシーをこの時分のダイアナ・ロスが演じていることに、いくら何でもとうが立ち過ぎだと思ったら、劇中でも24歳の幼稚園教諭という設定だった。思いのほかオズの魔法使['39]を忠実になぞっていただけに、その魅力の及ばなさが際立っているような気がした。

 何と言っても楽曲と振付のつまらなさが致命的で、ドロシーをダイアナ・ロスが演じ、案山子をマイケル・ジャクソンが演じているのだから、歌唱も踊りも力不足のわけがない。エンドロールを眺めていると、楽曲の大半がクインシー・ジョーンズによるもののようだったが、どうも僕にはピンと来なかった。

 『オズの魔法使』では北の魔女だったように思うグリンダ(レナ・ホーン)が南の魔女になっていた。聞くところによると、ライマン・フランク・ボームによる原作童話『オズの魔法使い』でもグリンダは、南の魔女とのことだ。また、ロケ撮影の多さがファンタジー色を大いに削いでいたような気がする。何を思ってそうしたのだろう。予算的な制約によるのだろうか。

 ディスクを貸してくれた高校時分の映画部長が「名監督、豪華俳優でも名作たり得ず」と寄せてくれたが、全くだ。「いやぁ、映画って本当に難しいですねぇ~」などと、どこぞの評論家さんっぽく言ってみたくなるような映画だったように思う。




*『ウィズ』
推薦テクスト:「やっぱり映画がえいがねぇ!」より
https://www.facebook.com/groups/826339410798977/posts/4727283814037831
by ヤマ

'23. 8.29,30. DVD観賞



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