放射線を浴びた[X年後]Ⅲ Silent Fallout 乳歯が語る大陸汚染
監督 伊東英朗

 十年前に放射線を浴びた[X年後]を観た後、2015年の第2作は観ていないものの、九年前のNNNドキュメント'14続・放射線を浴びたX年後 日本に降り注いだ雨は今や七年前のNNNドキュメント'16 汚名 放射線を浴びた[X年後]については視聴していたので、思いがけなく良い機会が得られたと観に行った。

 2004年からマグロ船漁師の被曝問題に取り組み始めたという伊東監督が、第三作では、専らアメリカ国内での核実験による被曝問題を掘り下げていることに意表を突かれた。だが、アメリカ政府が、国内で101発の核爆弾実験によって事故ではなく意図的に、若い兵士や国民に対する放射線被曝実験を行っていたことを、あまりに多くのアメリカ国民がもはや知らずにいる実情に驚くとともに、マグロ船被曝問題に対する日本政府の対応の余りの酷さに憤慨し、被曝漁師の無念を何とかしたい一心で始めた活動が、前二作による全国300か所での上映等を通じて取り組んでも殆ど政府対応の変化に繋がらないことに失望し、日本政府を動かすにはアメリカ政府を動かすしかなく、アメリカ政府を動かせるのはアメリカ国民だという思いから、本作を撮ったのだと上映後のトークで語っていたことに対して、成程と思うとともに、非常に重いものを感じた。

 西部劇ファンなら、アメリカ国内での核実験の話は、かのジョン・ウェインの『征服者』撮影時の被曝問題などを通じて、日本でも知っている者が少なからずいるから、アメリカ国内でそこまで風化しているのかと伊東監督の話に驚いたが、本作を観てみて実に感心したのは、アメリカには公文書私文書を問わず、古い重要文書が資料館や図書館といったところにきちんと保存保管されていることだった。何かと言えば、「記録が残っていない」という逃げ口上を常套にすることがもはや慣例化してきている日本政府要人の答弁とともに、役所がせっせと文書廃棄&非文書化を励行し始めているように感じる状況に改めて憂を覚えた。

 会場では会わず仕舞いだった旧知の映友女性がホントに人は愚かだから、何度も何度も同じことを繰り返すと記していたが、全くその通りだと思う。




参照テクスト:『続・放射能を浴びたX年後 日本に降り注いだ雨は今
参照テクスト:『汚名 放射線を浴びた[X年後]
参照テクスト:『‐完全版‐ 原爆初動調査 隠された真実
by ヤマ

'23. 9. 3. こうち男女共同参画センター[ソーレ]3F大会議室



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