『メットガラ ドレスをまとった美術館』(The First Monday In May)['16]
監督 アンドリュー・ロッシ

 四年前に『マックイーン:モードの反逆児』を観た際に、ジャンル的に最も縁遠いモード関係なれば、全く知らずにいたデザイナーなのだが、確かにその繰り出すショーには目を惹くものがあった。だから、些か構成も引き出しも弱いように感じられたインタビューの繰り返しより、マックイーンのショー自体を、その制作時からもっと手厚く見せてもらいたく思った。とのメモを残しているアレキサンダー・マックイーンの回顧展を物故早々に開催して、伝説的な成功を収めたらしいNYメトロポリタン美術館が、原題の示すように、毎年五月の第一月曜日に開催するファッション&アートの一大ショー<メットガラ>の2015年企画『鏡の中の中国』の準備から開催までを追ったドキュメンタリー映画だった。

 展覧会は挑発的であるべきだと語っていたメトの服飾部門キュレーターであるアンドリュー・ボルトンの言葉と動きを観ながら、美術館のキュレーターの仕事を考えるうえでなかなか面白い作品だと、そのスケールにも圧倒されながら、非常に興味深く観た。『鏡の中の中国』展に関して映画作品が数多く引用されていて、『ラスト・エンペラー』『紅夢』さらば、わが愛 覇王別姫花様年華『上海ジェスチャー』『上海特急』などが映し出されていた。

 もう一人フィーチャーされていた人物アナ・ウィンターは、ファッション雑誌『ヴォーグ』の編集長でメトロポリタン美術館の理事も務めている女性だった。プラダを着た悪魔でメリル・ストリープの演じた編集長のモデルともされているようだ。手元にあるチラシの裏面記載によれば、メットガラの饗宴が一人あたり25,000ドル(約285万円)と高額な席料にもかかわらず600席が瞬時に満席になるのは、彼女の人脈と情熱の賜物だということらしい。この収益金がメトロポリタン美術館服飾部門の1年間の活動資金に充てられて、その活動維持が果されているとなれば、居並ぶ理事のなかでも抜群の存在感なのだろう。実に堂々としていて、華奢な身体付きながら、とても貫禄があったように思う。
by ヤマ

'23. 7.14. BS松竹東急土曜ゴールデンシアター録画



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