『るろうに剣心 最終章 The Final』
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
監督・脚本 大友啓史

 七年前に観た京都大火編、伝説の最期編が思いのほか面白かったので、完結篇の第2部が始まるのを待ってから、あまり時をおかずに続けて観ることにしたものだ。

 先に観た『The Final』は、もはや殺陣と呼ぶのも躊躇われる剣法と功夫を混ぜ合わせたハイスピードアクションのアクション設計に観惚れながら、日本映画らしからぬ設えの立派さに感心した。スタッフワークの充実ぶりが光っていたように思う。ただ、画面のスケール感に比して、お話の卑小感が何とも情けなく、「またぞろここで手垢に塗れた“守る!”かよ」と少々萎えた。

 最強の敵となる雪代縁を演じた新田真剣佑は、ちはやふる以来、わりと贔屓でOVER DRIVEなども観ていて、本作でもよく演じている気がしたが、なにせ縁の人物造形がいわゆるシスコンのようなものだから、スケール感を欠くこと、この上ない。それにしても、ゆらゆら揺れる一見儚げな緋村剣心(佐藤健)と実に対照的な、がっしり見事に鍛え上げた体だった。

 また、神谷薫を演じた武井咲に思わぬ艶が滲み出ていて目を惹いた。役処と言えば、それまでなのだが、相楽左之助(青木崇高)の漫画的なまでの不死身ぶりに唖然とした。そして、『スターウォーズ』『マッドマックス』の影響の大きさを感じた。

 『The Final』から『The Beginning』へと還った最終章第二部では、一度も「御座る」と言わない剣心(佐藤健)だったところに十年(聞くところによると、十四年だったらしい。)という時の隔たりのようなものを感じた。僕が観たなかでは、この『The Beginning』のパートが最も好いように思う。アクションに関しては『The Final』のほうが勝っているような気がするけれども、ここまでずっと引っ張ってきた“剣心にとっての巴(有村架純)の存在の重み”に関して、まるで拍子抜けにはならずに見せ切ったところに、大いに感心した。

 最終章第一部『The Final』を観たときに、一作目の試写会のあとで大友監督とも飲んだという地元の映友から、土佐の人斬り以蔵が原作と映画のモデルだという話を聞いて、確かに「薩摩ならともかく、長州に人斬りの異名を取った遣い手って、思いつかんもんね」と返しながらも、どこか取ってつけたような話のように感じていたのだが、『The Beginning』を観て、成程と思った。桂小五郎(高橋一生)が、まるで武市半平太じゃないかという感じの小五郎と剣心の関係だった。そして、わざと囚われの身となって懐中に入っていた抜刀斎が、先ごろ観たばかりのMr.ノーバディのハッチ・マンセルのようだった。




The Final 推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2021/04/post-8ff53b.html
The Beginning 推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-013c27.html
by ヤマ

'21. 6.28. TOHOシネマズ6
  '21. 7. 2. TOHOシネマズ8



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