『アパッチ砦』(Fort Apache)['48]
監督 ジョン・フォード

 三週間ほど前に観た黄色いリボンの旋律がオープニングの音楽の途中で現れたけれど、本作のほうが先に撮られた作品のようだ。

 左遷されて辺境のアパッチ砦の司令官を任じられたことに憤慨し、失地挽回を期した手柄を焦り、独り善がりで依怙地な指揮によって連隊に大きな損失を与えて戦死していった指揮官オーエン・サースデイ中佐(ヘンリー・フォンダ)と、指令書一枚によって現場指揮権を奪われ、愚昧な上官に仕える羽目になった、現場経験と慧眼を備えた下士官ヨーク大尉(ジョン・ウェイン)の、軍人としての対照を描いていた映画だったが、筋立てよりも画面の充実に観応えのある作品だったように思う。

 後の時代のカーアクションを売りにした映画のように、騎馬アクションとも言うべきシーンに力があって美しいことに、改めて感心させられた。人物像では、軍隊のしがらみに囚われた男たちよりも、サースデイ司令官と昔馴染みのコリングウッド大尉夫人エミリー(アンナ・リー)や、サースデイの娘フィラデルフィア(シャーリー・テンプル)と恋仲になるマイケル・オローク中尉(ジョン・エイガー)の母メアリー(アイリーン・リッチ)らの女性たちのほうが厚みも魅力もあるように感じられるという少々変わり種の作品だったような気がする。

 アパッチの族長コーチーズが妙にイッセー尾形然としていて可笑しかった。コーチーズが騎兵隊司令官に抗議していたように、タチが悪いのは軍人よりも、政府に取り入って利権を得て部族を蝕む悪徳商人だというのは、いつの時代のどんな戦争においても言えることのような気がするが、居留地に軟禁した彼らに粗悪酒や武器を売って稼いでいたミーチャムが象徴していたのは、'48年当時のアメリカだと誰に当たるのだろう。

 コーチーズは、ミーチャムさえ排除してくれれば戦闘を回避して居留地に戻ると言っているのに、政府の命を受けて進駐している商人の処遇という政治的外交的調整交渉の困難に向かう勇気も自信もない御粗末司令官は、部下のヨーク大尉の諫言が添えられると、より頑なになって聴く耳を持たずに無謀な武力戦に訴え出て、自らの命も含めて全滅を喫するわけだが、この有様に日本のドキュメンタリー映画沖縄スパイ戦史にも描かれていた合理性よりも軍律軍令が優先される軍隊の本質が窺えるような気がした。

 娘の恋愛も含めて公私に渡って自分の意の沿わないと怒りに駆られるサースデイ中佐とは対照的に、知性と冷静を湛えた威風を備えたコーチーズの描き方といい、'48年当時の戦勝国アメリカでこのような映画が撮られていることに大いに驚くとともに、本作に始まるフォード&ウェインのダブルジョンによる騎兵隊三部作の最終作『リオ・グランデの砦』を観たい思いが募った。
by ヤマ

'21.11. 4. BSプレミアム録画



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