『アラスカ魂』(North To Alaska)['60]
監督 ヘンリー・ハサウェイ

 オープニングでの「Way up north」という聞き覚えのある歌声に♪ノース・トゥ・アラスカ♪は、本作の主題歌だったのかと、この歳になって初めて知ったような気がした。字幕によれば、1892年から発掘を始め、1901年に大金持ちになったサム・マコードと歌われていたのだが、もしかすると、歌を知ったときに映画名も聞き及んでいたのに、未見作品だったために記憶に残っていないだけなのかもしれない。

 原題の「ウエスタン・ユニオン」を西部魂['41]とした伝から「ノース・トゥ・アラスカ」を『アラスカ魂』としたのかもしれないが、西部劇に描かれたものと同じようなゴールドラッシュに寄せて人々が見せていた熱気と粗暴に満ちた開拓魂は、アメリカ的フロンティア・スピリットとして、全く変わりがないように感じた。本作が1900年のアラスカのノームを舞台にしながら、映画のジャンル的には西部劇の範疇に置かれるのも道理だという気がする。

 いかにも西部劇らしく、地道に働くことよりも一獲千金を夢見て、カネと女を生き甲斐にしつつ、酒と喧嘩に明け暮れながら、最も大事にしているのは、実はカネでも女でもなくて、面子と男気であるような荒くれ者を描いていたように思う。何かと言えば、「俺のおごりだ!」と吠えていたサム(ジョン・ウェイン)やジョージ(スチュワート・グレンジャー)などを観るにつけ、「宵ごしの銭は持たねぇ」と嘯き、「火事と喧嘩は江戸の華」などと壮語する江戸っ子気質と通じるものがあると、そのマッチョ感を懐かしく観た。

 そして、ニューオリンズ生まれだと洩らしていたフランス系のショーパブ・ガール“エンジェル”ことミシェル・ボネを演じていたキャプシーヌのノーブルな面立ちの美しさが印象深かった。ちょっと島田陽子を思わせる風情を湛えていたような気がする。少々笑える入浴場面でジョージの弟ビリーに見せていた御姐さんぶりがなかなか愉しかったのだが、砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード['70]のステラ・スティーヴンスほどではなくとも、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト['68]でのクラウディア・カルディナーレの入浴シーンよりは良かったように思う。そう言えば、島田陽子にも『将軍 SHOGUN』['80]に入浴場面があったような気がする。

 それにしても、やたらと殴りつける場面が多く、酒場での乱闘を笑いながら楽しんでいる“ビッグ・サム”の姿が印象深い作品だった。確かに六十年前当時は、西部劇であれ、戦争映画であれ、こういう場面がよくあったような気がする。




推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2021/01/post-e7f59b.htmll
by ヤマ

'20.12.24. BSプレミアム録画



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―

<<< インデックスへ戻る >>>