『伝説の映画監督 -ハリウッドと第二次世界大戦-』(Five Came Back)
監督 ロラン・ブーズロー

 ちょうど主戦場を観て「戦争報道には優れた戦場カメラマンが必要」などと記したところだったので、また別の映友から勧められていた本作を観てみた。

 長州ファイブならぬハリウッド・ファイブとして取り上げられたジョン・フォード、ウィリアム・ワイラー、ジョン・ヒューストン、フランク・キャプラ、ジョージ・スティーヴンスを語る趣向がなかなか面白くて、フォード監督をポール・グリーングラス、ワイラー監督をスティーヴン・スピルバーグ、先ごろ観たばかりの風の向こうへにも出演していたヒューストン監督をフランシス・フォード・コッポラ、キャプラ監督をギレルモ・デル・トロ、スティーヴンス監督をローレンス・カスダンが語ったものを第二次世界大戦にまつわる年次に係る作品や記録映像に交錯させて編集し、「善意があるから世界は素晴しい」との言葉で結んでいた。

 ジョン・フォードの戦意高揚フィルムを僕が観たのは、三十年近く前の山形国際ドキュメンタリー映画祭'91の【開会式サブイベント紹介プログラム】での『December 7』なのだが、このときの特集企画の一つが“日米映画戦”と題された戦時のプロパガンダ映画特集で、とんでもなく刺激的だった覚えがある。

 それからすると、インパクトは少々劣るものの、なかなか興味深い作品だった。伝説の映画監督5人のなかでは、フランク・キャプラの立役者的大物感と、ジョン・フォードの根っからの映画屋魂が印象深く、語りにおいては、なんだか風貌がすっかり変わった感のあるコッポラの話が鋭く感じられた。作品として、特に観てみたく思ったのは、ジョージ・スティーヴンスの撮った『ナチスの強制収容所』['45]とフランク・キャプラによる『汝の敵日本を知れ』['45]だった。

 前者は、ダッハウ強制収容所を撮ったもので、ニュルンベルク裁判で大きな力を持ったとのことで、後者は、人種差別感情を強く刺激する作品で、後の原子爆弾投下を已む無しとするアメリカ国民感情を醸成することに大いに寄与したとも紹介されていた作品だ。果たしていつか、観る機会に恵まれるだろうか。
by ヤマ

'19. 9.21. Netflix配信動画



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