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『映画「聲の形」』(The shape of voice) | |||||
監督 山田尚子
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すっかり驚いた。とても深くて、実にスリリングでデリカシーに富んだ物語とその描出に圧倒された。世評高く大ヒット中の『君の名は。』よりも遥かに強く深いものを残してくれるアニメーション作品だと思った。 いわゆる「いじめ」の問題、障碍者の問題、償い、自殺、共生と排除といった問題について、メディアが採りがちな二元論的善悪、是非とはまるで異なる内省と洞察で以て臨み、それを「ともだちとは」という実に普遍的な思春期テーマのなかで切々と描き出している大した作品だ。そして、現代日本社会に潜む根本問題として本作でも、たぶん確信的に「父性の欠落」というものが、是非の問題ではない形で提示されているように感じた。 実写映画では、十五年近く前に観た『まぶだち』と七年前に観た『青い鳥』が本作で捉えていたようなものを描き出して卓抜している作品だと思うが、僕の観たアニメーション作品のなかでは本作が一番のような気がする。とりわけ植野直花(声:金子有希)の指摘していた西宮硝子(声:早見沙織)が無自覚に振るっている刃についての言及に唸らされた。 そして、小学六年生の石田将也(声:松岡茉優)の見せていた無邪気な悪意の怖さと、長じるに及んでその意味を体感することで抱えた苦しさの痛切に打たれた。自身のしでかしたことの報いとして、ある種の諦観とともに引き受けつつも、その取り返しのつかなさに今後もずっと負い続けていくことへの絶望と虚無に囚われたのだろう。Xデイを定めて身辺整理をしたうえでの自殺を試みるも果たせずに始めた魂の再生の物語に強い感銘を受けた。 普段、もはや異様に軽い言葉としてしか響いて来なくなっている“責任”というものについて、責を負うということは、この高校生になった将也(声:入野自由)の見せていた態度のことをいうのだろう。彼自身がついぞそれを“責任”だと思って身を処したりしていないところが本物だと思う。 将也が、天の使いの如き西宮結絃(声:悠木碧)の助力を得て辿る魂の再生のなかで、同輩たちの顔が映るようになったり消えたりする揺らぎをアニメーションならではの手法で端的に描き出していたことの効果にも感心した。 |
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by ヤマ '16.10.13. TOHOシネマズ5 | |||||
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