『太陽の季節』['56]
監督 古川卓巳


 僕は、あまり人の好き嫌いが激しいほうではないつもりなのだが、どうにも嫌いな人物が五人いて、そのトップスリーが石原慎太郎と竹中平蔵、安倍晋三だ。

 その石原慎太郎については、東京原発パッチギ! LOVE & PEACE 靖国 YASUKUNIなどの映画日誌でも言及しているのだが、彼が大学在学中に発表して芥川賞を受賞した原作小説は未読だ。だが、映画化作品の本作を観ただけでも、その不遜で独り善がりなろくでなしぶりがいかんなく発揮されていて、却って感心した。栴檀は双葉より芳しというわけだ。どうしてこのようなものが“太陽族”などという流行を生み出すほどに支持されたのか、いま五十路にある僕が生まれる前の出来事ながら、本作を思い返すだに不思議でならない。

 特別出演として石原慎太郎の名がクレジットされていたが、どこに出てきたのか判らなかった。長門裕之はチンピラ役が似合っているから本作の津川竜哉はピッタリなのだが、僕は今村昌平監督の『にあんちゃん』['59]の彼がいちばん好きだ。本作での共演を契機として後に彼と結婚した南田洋子も、ちょっと生意気で気丈ながらも若くて危ういお嬢様の英ピン役が似合っていたように思うが、映画作品としては、拳闘シーンのあまりのしまりのなさにいささか恐れ入った。

 スタンダールの『赤と黒』やらモーパッサンの『ベラミ』やらが引用されていて、洋品店の名前やらヨットの名前に付けられていたけれども、女たちをいいように弄んではいても、利用して栄達を図っているようにはなかったので、妙にピンと来なかった。いかにも頭の悪そうな気取りにしか見えなかったのは、石原への僕の嫌悪感が招いたものなのかもしれない。

 石原裕次郎は本作がデビュー作らしいが、かなり美味しい役どころをあてがわれていたような気がする。太陽族的な思い上がりの目立つ連中とは一線を画した落ち着きと節操を保っている青年を演じていた。原作小説でも、あのような青年が登場していたのだろうか。プロデューサーの水之江滝子が裕次郎のために、映画化に際して敢えて造形したキャラクターではないのかと思った。

by ヤマ

'14. 8.18. ちゃんねるNeco録画



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