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『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』 | |||||
監督 蔵方政俊 | |||||
ヤマのMixi日記 2012年01月05日22:34 前作は島根のローカル鉄道だったが、今度は富山。路面電車も走っているところが、僕の住む高知と同じだけでなく、方言としての“が”の使い方も似ていて驚いた。 前作が近頃は珍しい男前映画だったのに比べ、まるっきり今どきの女性仕様になっていて、あと十年もしないうちに徹(三浦友和)と同じ歳になってしまう、既に子供も巣立っている僕には、いつなんどき家出をされても知らないぞと脅されているようなところもあって余り心地のいい作品ではなかった(苦笑)。 でも、僕は間違っても、自分にとって都合の悪いことを勢いで言ってしまうなどということはないから、「出てけ」などとは言わない(はず)なんで、ああはならないと思うけど、その分、徹のような可愛げもないだろうから、ヤバいのかも(たは)。 でも、この作品、きっと五十代の女性たちにはウケがよさそうな気がする(笑)。見え見えの展開とは言え、一つ頼みがあるとの特別な日に、再度の申し入れがされるわけだからねー。 それにしても、佐和子(余貴美子)の癌検診のエピソードや、かつて徹が『卒業』を共に観て解釈で口論をしたとの深山(仁科亜季子)との再会場面など、ミスリードを誘う少々あざとい小細工が鬱陶しかったのだが、役者はみな好演だったなぁ。とりわけ小池栄子、清水ミチコ、米倉斉加年がよかった。だけど、彼らの良かった場面の大半を予告編で既に使い切ってしまっているって、どぉなんだよ(とほ)。 *コメント 2012年01月06日 01:02 (ケイケイさん) >でも、この作品、きっと五十代の女性たちにはウケがよさそうな気がする(笑)。見え見えの展開とは言え、一つ頼みがあるとの特別な日に再度の申し入れがされるわけだからねー。 はい、受けてます~(笑)。 私はあんな大ドンデン返しがあるなんて、全然想像していませんでした。 妻を開放してやろうと思ったんだなぁ、「やっぱバカだは この亭主」くらいに思っていたから、すごい喜んじゃった(笑)。 普通に映画の構成を考えればそう来るんでしょうけど、なんせリアルに夫と言うものを知っているのがいけない(笑)。 >それにしても、佐和子(余貴美子)の癌検診のエピソードや、かつて徹が『卒業』を共に観て解釈で口論をしたとの深山(仁科亜季子)との再会場面など、ミスリードを誘う少々あざとい小細工が鬱陶しかったのだが、 ガンは確かに無くても良かったけど、夫に再検査を告げられなかった、と言う設定に持っていきたかったからでは? 仁科亜希子もね、もうあの中途半派はいかん(笑)。 熟年肉食女風だったでしょう? もっと誘って浮気させて、後悔させなきゃ(笑)。 そのほうが映画的には陰影が深いと思いません? 2012年01月06日 07:03 ヤマ(管理人) ようこそ、ケイケイさん。 >なんせリアルに夫と言うものを知っているのがいけない(笑)。 受けました~(五十代男性)。 早見えのケイケイさんをしてそのように曇らせるのだから、真面目で鈍感にして“愛を伝えられない”徹さんが、いかに旦那さんと重なって映っていたかが偲ばれますねー(笑)。 (ケイケイさん) うちはもうちょっと私の機嫌を取りますけどね(笑)。 ヤマ(管理人) よかったじゃないですか!(笑) (ケイケイさん) あの亭主関白ぶりは、経済的にはそれほど不自由かけなかったし、真面目に旦那さんをしてきたという、「やや」独りよがりのプライドがありますね。 ヤマ(管理人) 加えて、職場で一目置かれている部分を公私混同して無意識のうちに家庭内においても持ち込んでいたのかもね。運転士としての35年無事故無違反歴なんて、家では関係ないのに。 (ケイケイさん) おぉ、これは旦那さんのご意見としては、立派ですね。 ヤマ(管理人) あ、そうですか? ありがとうございます。 (ケイケイさん) ヤマさんの仰る通りなんですが、でも多くの人が仕事の地位を家庭に持ち込みますよ。 ヤマ(管理人) 僕の場合、持ち込むだけの地位がないとも言えますが(笑)。 (ケイケイさん) また、夫の地位を仕事で認める妻も多いですね。うちの母なんかは、娘には父の罵詈雑言を言いながら、外では小さいながらも社長であることを自慢していました。 ヤマ(管理人) 僕は、わざわざ「一つ頼みがある」と徹が言ったときに察したけど、その申し入れに対する佐和子の回答の弁には意表を突かれました(笑)。 (ケイケイさん) うんうん、私も思った!よくそんなことまで頭が回るわねって。でも号泣されるより、新鮮な演出で良かったですよ。 ヤマ(管理人) リアルでは佐和子のような来し方を経てきた女性から持ち出されることなど決してない台詞のような気がしましたよ。 で、再検査を夫に告げられなかった佐和子というのは、確かに作劇的な必要性はあるような気がしますね。小細工臭を僕が感じたのは、良性のくだりのほうでした。 (ケイケイさん) どの辺がですか? ヤマ(管理人) いや、あんまりしつこく良性、良性って繰り返されるのは本当は悪性ってことなんだろうってな、ありがちなパターンへの誘導をしているように感じたわけですよ(たは)。ま、清水ミチコの演じた友人を配して、そのあたりきちんと処理してましたけどね。 あと、深山との再会におけるあの中途半端さは、さればこそのリアリティありなんですけどね。おっしゃるように、浮気をさせたうえで深山から袖にされて後悔させ、それから佐和子に舞い戻るという展開にしたら、おそらく五十代女性から、かように支持される作品になったかは疑問ですが、確かに映画的には陰影が深まるでしょうね(笑)。 (ケイケイさん) ヤマさんはそう思ったんだー。私とは違いますね。 ヤマ(管理人) うん。己が人生であれ、命であれ、真面目でこだわりのある人って、ある意味、囚われが強く、赦しとか水に流すってのが苦手なんで、徹と佐和子のような似た者夫婦において、浮気が介在してなお、おめおめとあの顛末に向かうことができるようには思えないんですよ。だって、妻の再就職をめぐってのあの程度の行き違いですら「出てけ」という台詞とか「離婚届を残しての家出」とかやってる夫婦ですよ。二人とも、ケイケイさんのようには器が大きくはないような気がします。 (ケイケイさん) いやいや、私は器は大きくないです。多分鈍感なだけ(笑)。 ヤマ(管理人) 何をおっしゃいますか(笑)。鈍感は、フリだけでしょ。それが“器”っちゅうもんです。 (ケイケイさん) 確かに妻が働きたいと言っただけで、あれほどややこしくなるかなぁ?とは思いました。 妻の言い分は納得出来ますよね。私は夫の“男の沽券”かと思いましたが、今考えると、定年後、徹は自分一人が家に取り残されるのが、寂しかったんじゃないですかね? もちろん、言えるわけがない(笑)。 ヤマ(管理人) そのように描かれてましたね。退職後のペア旅行を算段し、楽しみにしている風な描出がありました。 (ケイケイさん) 私の希望としてはね、徹は深山と浮気して、それを後悔して、罪の意識に苛まれ、やっぱりもっと妻が恋しくなるの。これなら50代女性の大受けですよ(笑)。 ヤマ(管理人) 徹タイプは、罪の意識に苛まれ、妻への想いを深めたら、却って妻の元には向かえなくなるような気がしますよ(笑)。 (ケイケイさん) あぁ、それはそうかもですね。でも映画的には絵になるでしょ?(笑) ヤマ(管理人) 映画と現実は違うって? おっしゃるとおりです(笑)。 (ケイケイさん) 実際には優柔不断なのは男性のほうが多くないですか? この夫婦も勢いだけど、夫が出て行けと言いながら、離婚届は妻が先に持ってきたしね。妻の元に戻りたいのに、徹タイプの人には、浮気は首の皮一枚を切られるかもですね。 ヤマ(管理人) そんな気がします。その想いを抱えたまま新ステージの場には孤独を抱えて一人で赴くでしょうね。その自業自得的な状況の中での別れた妻への未練と後悔のほどを見て、やっぱり長年連れ添った女房が一番でしょうが!ってな形で溜飲が下がるってなことはないでしょうから、やっぱり徹が異性問題で後悔をする出来事が入ると、多くの50代女性に受ける物語にはなりにくい気がしますよ。それは、ちゃっかり戻って来ちゃっても同じじゃないかなぁ。 でも、一人で赴くか戻るのいずれにしても、作り手の意識が女性仕様にあればこそ、深山と浮気をさせる線はなさそう。なんたって、岩松了の演じた友人に、「自分が悪いんなら、とにかく謝る。向こうが悪いんなら、自分の何が原因なのか考える。」ってな台詞を構えているような作り手ですもん(笑)。いやまぁ、確かにそれはそのとおりなんですけどね。 (ケイケイさん) これはね、ミスったと思いますよ。リアリティ皆無のセリフですね。 ヤマ(管理人) そうなんです。言ってることは正しいけど、そんなこと言うわけない(笑)。作り手が観客をイメージしておもねっているように感じました(たは)。 (ケイケイさん) あまりに嘘っぽいので、私なんか耳に入った途端に忘れてて、ヤマさんの御陰で思い出しました(笑)。 ヤマ(管理人) 作り手の思惑がどこにあったかは不明ですが、少なくともケイケイさんには、おもねることにはならなかったようね(拍手)。 ただ、あの年代の女性、特に主婦層が己の人生に対する不全感を抱いたとき、そこにパートナーとの関係性によって被っているものだという感じを持ちがちなのは、現実感があるように感じましたね。あまり一般化には馴染まないのかもしれませんが、相方の責のように感じやすいのは圧倒的に、夫より妻のような気がします。 (ケイケイさん) 仰る通り。 ヤマ(管理人) ですよねー。もっと言えば、男より女かも。 そりゃだって、我慢の度合いが違いますもんってなことなんでしょうが、自身の人生に対して不全感を抱いたときに、夫は妻のせいにすることがあまりないような気がします。それだけ、主婦は家庭なり夫婦関係のなかに閉じ込められているってことなんでしょうかね? (ケイケイさん) そう思いますね。とにかく結婚すると時間に縛られますから。 何時までにあれをしてこれをして、家族が帰宅するまでにご飯の用意をしてと、常に家族のために動いていますから。今は奥さんも働いている人が多いし、とにかく時間との戦いだし、期間も長い。 ヤマ(管理人) 囚われや縛りを感じているとどうしてもそうなりがちですよね。 (ケイケイさん) それをいやではないんですよ。少々の不満は、その時々で自分なりに解消してますから。 ヤマ(管理人) で、この“それをいやではない”ってのが重要な点ですね。つまり相手のためばかりではなく、自ら欲している部分の棚上げが、相手の責にしたがる際に顕著になってくるような気がします。 (ケイケイさん) 自分が何を望んで結婚したかですね。相手よりまず自分ですよ。 ヤマ(管理人) 選んだのは誰かということも含めて、そうですよね。 それは結婚に限らず、恋愛においても同様ですよ。となると、やはり岩松了の演じた友人の言い分は、実に真っ当なことだということになりますが、そう出来る人は男女ともに少ないってことですよね。 僕は幸いにして、妻から自身の問題を僕の責のようにして咎められることがないので助かってますが、単に諦めちゃってるのかもしれません(苦笑)。 (ケイケイさん) それは奥様が新婚の頃から賢い方だったからかも? 夫に期待するより、自分に期待するほうが裏切られませんから(笑)。そこまでたどり着くまでが、苦しいんですよ。たどり着いた妻を観て、俗に「女は家に根を張る」とか「古女房は強い」とか言うんじゃないかな? ヤマ(管理人) なるほど。確かにひとつの境地ではありますから、どこかに“境”があって踏み入ることのできる場所なんでしょうね。 (ケイケイさん) ただ自由な時間がたくさんないと、出来ない事があると思うんです。それはもう、時期が来るまでみんな我慢していると思いますよ。 ヤマ(管理人) やりたいことがある人はそうですよねー。“エンプティネスト症候群”というのがありますが、そういうことが症候群として捉えられるほどにたくさんあるのは、自由な時間の到来を皆人が待ち望められるわけではないってことです。 (ケイケイさん) 私の場合は、結婚10年目にまた子供が出来て、上は8歳と7歳で、これから手が離れる時で、タイミングとしては悪かったです。望んだ妊娠でもなかったしね。でも10年という区切りに出来た子だし、何か意味があるだろうと思ったんです。 ヤマ(管理人) こういう成行き感って、とても大事な気がしますね。僕の人生って、すべてこれで転がってきているように思います(たは)。そのときどきに起こった(起こした)事態への対処ですよね、逃避じゃなく。 (ケイケイさん) 当時30歳で、もしかしたら、母親としてやり残したことがあるのかなぁと漠然と思ったんですよ。生まれれば当然可愛いわけで、上の子たちも三男が生まれて家が楽しくなったと言っていました。何より夫が変わりました。 ヤマ(管理人) 良かったですねー。そこに“意味”があったんですね。 (ケイケイさん) 40前での子でしたけど、夫や父親らしくなるのに、人の三倍以上かかる人でしたよ(笑)。 お陰様で長期間充分母親を出来たので、子供が段々と手を離れるのは本当に嬉しかったです。二人だけなら、私も空の巣症候群になっていたかも? ヤマ(管理人) 佐和子の夫に対する不満をそんなふうに感じていた僕には、ケイケイさんの映画日記に書いてあった「苦労なく、今までと同じ老後より、新たな自分を築き成長したい」との生命力に大いに感心しましたよ。 (ケイケイさん) ありがとうございます。それを感じたので、ものすごく佐和子に共感しました。JRの運転手さんですから、退職金は羨ましいくらいあるだろうし、年金もあるし、それなりに悠々自適には暮らせるはずなんですね。平穏な暮らしを棒に振って。今から変化させようというのは、一大決心ですよ。看護師は人手不足だし、資格のある自分が世の中の役に立ちたいと考えるのも自然で、この辺は滑らかでした。 ヤマ(管理人) ん? JRではなくて富山鉄道でしたよ。 (ケイケイさん) そうでしたか(笑)。失礼しました。 ヤマ(管理人) 新人の小田君が子供時分の憧れの列車を追っての入社だと言ってた憧れのレッドアローは西武鉄道だと言ってましたし、JRが西武鉄道から列車の払い下げを受けたりしませんよね。 とはいえ、「平穏な暮らしを棒に振って。今から変化させようというのは、一大決心」なのは、間違いないですよね。 佐和子の言葉にもあったように思いますが、「これで終わりたくない」っていう意欲とエネルギー、そういうものが女性のほうの長寿を担保しているんでしょうな(笑)。僕もまだ「まだまだ侮れないくらい 人生にいろいろな出来事が起こってもいいかな」くらいには構えてますが、積極的に新たな自分を築き成長したいと思うだけの力はなくなっている気が…(たは)。 (ケイケイさん) それはヤマさんがお仕事一生懸命されているからだと思いますよ。佐和子も一生懸命家庭を守っていたけど、社会には出ていないでしょう? ヤマ(管理人) まるで出てないならまだしも、社会から出戻りなのがキツいんでしょうね。シングル・ライフもそうですが、未婚未同居を続けている人と結婚や同棲経験のある人では、およそ耐性が違うように見受けられます。 (ケイケイさん) 家庭は消耗だけではなく、主婦にエネルギーを与えてくれる場所でもあります。それは旦那さんもそうでしょう? ヤマ(管理人) はいな。七年前に綴った『砂と霧の家』の拙日誌は、ケイケイさんにとても褒めていただきましたが、ベラーニ大佐の呟きこそが、まさにその核心を捉えていたように思うのは、今なお同じです。 (ケイケイさん) まぁ仕事も勉強はさせてくれるんですけど、消耗の質は違いますね。女性と男性の意識の違いは、長くいる居場所の違いもあるかと思います。 ヤマ(管理人) 居場所という以上に“想いを置いている場所”でしょうかね。 (ケイケイさん) うんうん”想い”ですね。自分が一番安らげて、エネルギーを貰える場所ですね。 ヤマ(管理人) 結局、徹が新たなステージで手にしていたのは、やっぱりカメラではなく、ハンドルでしたしね(笑)。 (ケイケイさん) これは大受けでした(笑)。 ヤマ(管理人) ありがとうございま~す。作り手の意図もそこだったんでしょうね(笑)。 (ケイケイさん) 男の人って自由に時間を与えても、いつも通りしか時間が使えないでしょう?(笑) ヤマ(管理人) これは男女ともに数多く見受けられるように思いますが、とりわけ仕事(家事も含めて)に没頭しているような方には多いですよね。徹なら、やっぱりこうだよなと思いました(笑)。ただ、もう富山鉄道ではなかったような気がしたんで、佐和子は就職先を変えたんでしょうね。 (ケイケイさん) あぁなるほど。 仕事と家庭の両立はできないと思い込んでいた佐和子も、両立できる道を探せるほど、成長したんですね。 ヤマ(管理人) 彼らは似た者夫婦でしたから(笑)、共に成長したんですよ。 (ケイケイさん) 人間いつまでも勉強だなぁ。 ヤマ(管理人) ホントにね。痛い目にも遭いながら…(笑)。 *参照テクスト:三浦友和の語り下ろし『相性』(小学館)の読書感想 | |||||
編集採録 by ヤマ '12. 1. 5. TOHOシネマズ3 | |||||
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