『トンマッコルへようこそ』(Welcome To Dongmakgol)
監督 パク・クァンヒョン


拙サイト掲示板書き込み No.7006 から(2006/11/14 21:53)

(ケイケイさん)
 ヤマさん、こんばんは。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、ケイケイさん。こちらでは、お久しぶりですね(笑)。

(ケイケイさん)
 さて『手紙』に続き、『トンマッコルへようこそ』を観て来ました。ヤマさんとお話出来たらと思っております(^^)。高知でも絶賛上映中みたいなんで、どうぞよろしく〜。

ヤマ(管理人)
 高知では、最終回が午後6時からの今週限りで、今日を逃すともう観られなくなるもんで、駆け付けて来ました(えへ)。

(ケイケイさん)
 あんまりヒットせえへんかったみたいですね。私が観た日曜日の初回も、ガラガラでした。

ヤマ(管理人)
 こっちは、そうでもなかったんですよ。もっとも一日二回しか上映がなく、最終回が午後6時となると、平日は、その時間で観るしかないって感じですが(苦笑)。

(ケイケイさん)
 私が観た回がガラガラだったのは、公開から日が開いたからかもしれませんが、『涙そうそう』は、一ヵ月後の平日でも、ほぼ満席。

ヤマ(管理人)
 あれも、なかなかいいですから(笑)。

(ケイケイさん)
 でも、こんなに早くお話できるとは、とっても嬉しいです。

ヤマ(管理人)
 それだけ高知での打ち切りが早かったっていうことで(苦笑)。
 『トンマッコルへようこそ』は、不思議なテイストの作品で、ちょうど下妻物語を観たときのような新味を覚え、どこかノーマンズ・ランドを思い出させるような寓話性を感じましたよ。韓国映画は特に、ケイケイさんとお話しすると何倍も深めてもらえるので、僕もとても楽しみです。

(ケイケイさん)
 前半が寓話性が強かったですね。後半がなくて、ただ南北両方ともトンマッコルによって癒されて、仲良くなりましたとさ、では納得できなかったと思います(笑)。

ヤマ(管理人)
 ええ、その効果で僕は、むしろエンディングのほうに強い寓話性を感じてました。

(ケイケイさん)
 賛否両論、宮崎アニメを彷彿させるという感想も耳に入って来ましたが、先入観なしに真っ白で観ると、前半のファンタジー風の展開から、後半のシビアに現実を映す様子も無理がなく、南北統一を目指す気持ちが深々と伝わってきて、私は『力道山』並みに気に入りました。

ヤマ(管理人)
 あ、僕もちょうど力道山と同じランク付けでメモしてますよ。

(ケイケイさん)
 『力道山』は、本国の韓国人が在日を描いて出色でしたよ。だいたい本国の人が在日に目を向けるのさえ珍しいですから。


-------アメリカ批判の映画だったのか?-------

ヤマ(管理人)
 「俺たちも連合軍だよね」と悲壮な戦いを前にして、北鮮の少年兵がどこか嬉しそうに口にする『トンマッコルへようこそ』が韓国で大ヒットし、その年の興行第1位を記録した背景には、やはり南北問題の解消を願う韓国の人々の想いの深さがあるのだろうなと改めて思いました。

(ケイケイさん)
 私も強く感じました。韓国映画はドロドロ感じさせるのが好きですが(笑)、この作品では、爽やかに感じさせてくれたのが好ましかったです。

ヤマ(管理人)
 確かに(笑)。コテコテを避けた爽やかテイストは珍しいですな。

(ケイケイさん)
 痛烈なアメリカ批判と受け取っている方が多いんですが、私はちょっと違う観方です。

ヤマ(管理人)
 まぁ、それもあるようには思うけど、それ以上に、南北統一への想いのほうを強く感じましたね。

(ケイケイさん)
 ですよね。「痛烈なアメリカ批判」とだけ捉えている方が多いのには、びっくりしました。もちろん軍=国政への批判はあると思いますが、あのスミスの涙はどうなるねん? と。トンマッコルの命運を託されていたのはスミスですよね?

ヤマ(管理人)
 ええ。南北連合軍の指揮を任されたヒョンチョル中尉は、そのためにスミスと彼を救出に来た韓国兵とを下山させたんですから。最初の攻撃ははぐらかせても、第二波は自分たちではくい止められないと覚悟してましたからね。

(ケイケイさん)
 巷の感想では、この辺が無視されているような気がしますねぇ。

ヤマ(管理人)
 まぁね、トンマッコルとアメリカ的なものとの対比として、スミス救出小隊が訪れたときの乱暴で尊大な振る舞いをかなり痛烈に描いてましたからねー。

(ケイケイさん)
 私は、「スミス=アメリカ、トンマッコル=朝鮮半島」と観たので、アメリカの存在はとても重要なのだと感じたんですが。

ヤマ(管理人)
 そうです。強大な力を持つアメリカが朝鮮半島に住む人たちの真情を理解することが、何よりも鍵を握っているっていうことですよね。

(ケイケイさん)
 そうなんですよ、「これが人生だ!」を、他の五人に言わせたのではなく、スミスに言わせたところに、深い意味があると思います。

ヤマ(管理人)
 同感です。スミスの目が開かれたわけですよね。それ、大事なとこですよ、ホント。

(ケイケイさん)
 『グエムル』でも、感想を書いたあと、ジュノ監督の記述を読んだのですが、ことさらアメリカを批判したつもりはないと書かれていましたし。この辺は仕方ないと言えば仕方ないんでしょうが。


-------ラストシーンの示していたものは?-------

ヤマ(管理人)
 あの壮絶な爆撃のシーンをあんなに美しく描くとは驚きましたが、後に続くシーンが、一つの小屋で彼ら五人が兵服のまま眠り、まもなく目覚めようとするなかをヨイルが軽やかに跳んでいる死後世界での再会の図だったので、ここへの入り口となる雪山での最期は、やはり美しかるべき場面なのだと納得しました。

(ケイケイさん)
 ミクシイの方でも書いたのですが、あれは死後じゃなくて、回想シーンだったのでは?

ヤマ(管理人)
 ほぅ、そう感じましたか。

(ケイケイさん)
 あの場面は、ポップコーン事件の後、疲れ果てて5人で同じ部屋に眠りこけて、起きたとき同室でびっくりして、みんな飛び出したら、チョン・ジェヨン扮するスファだけが先に起きていて、村長の手伝いをしていたシーンの直前の場面だったと思います。あのときテッキの耳に花が飾られていたでしょう?

ヤマ(管理人)
 でも、はじめのほうでヨイルがテッキの耳に白い花を挿した場面って、テッキが眠っているときではなかったように思うし、…

(ケイケイさん)
 ええ、最初は北朝鮮軍三人とヨイルが出会ったときでしたよね。そのときも白い花を、ヨイルはテッキに差し出していたと思います。

ヤマ(管理人)
 ですよね。そのうえで、ラストでは、五人が兵服のまま眠っているなかでヨイルがテッキの耳に花を挿す行為があったので、…

(ケイケイさん)
 その前に、五人が同じ部屋で疲れて眠ってしまうシーンがあったでしょう? まだ敵味方に分かれていた頃で、目が覚めて一瞬何かわからなくて、みんな表に飛び出したシーンです。

ヤマ(管理人)
 ええ、南北の兵士が折り交ざるようにして眠ってたから、目覚めたときに慌てて飛び出したんですよね。

(ケイケイさん)
 そのときにテッキの耳に花が挿してあったんですよ。あのとき、誰かが冷やかしてもいいのに、そのまま過ごしたので、これは何かの伏線だと思って、覚えていたんです。

ヤマ(管理人)
 僕はね、あの花というのは、言わばトンマッコルの村民章というか徽章みたいなものだと思ってて、あの時点では、彼らはまだ一つではないけど、トンマッコル入村者としては、一つ小屋で眠っていた五人が(スファも起きる前はそこに運び込まれていたのでしょうから)まとめて等しく受け入れられていることを示していたのだと受け止めています。
 でもって、曇りのない目で瞬時に捉え、その判別をあやまたず果たせるのがヨイルってことで、ヨイルが花を挿した者たちが入村者として受け入れられるっていう感じですね。それもルールのように窮屈な仕組みとしてあるのではなく、“符合”的なニュアンスで機能しているというような感じです。
 だから、ラストでは、彼らがトンマッコルに“帰ってきた”ことを示す徴が挿されたというイメージで受け止めてたのだろうと思います。

(ケイケイさん)
 花の色は黄色じゃなかったかな? この辺は不確かですが。観た方へルプ!(笑)。

ヤマ(管理人)
 芯が黄色で花びらが白い花だったような気がするんですが。

(ケイケイさん)
 白だったそうです(^^)。

ヤマ(管理人)
 それはともかく、僕は、最初の同じ部屋で眠りこけている場面との連続性は考えませんでした。そもそもラストで、あの場面に対して連続性を持たせる意味が今ひとつピンと来ないし(たは)。
 村を守るための悲壮な戦いに“七人の侍(このときはスミスたち二人も連れてましたから)”が雪山へ向かうとき、村の婆さまが「今さら村を出てくくらいなら、来なけりゃよかったんじゃ」と別れを惜しんで呟いたでしょ。それも踏まえて、死後に再び帰ってきた姿だと受け止めました。ヨイルが先に死んでいなければ、僕もそうは受け止めなかったでしょうが、あれがあったから、余計に再会のイメージが僕のなかでは生まれやすかったのだと思います。

(ケイケイさん)
 それで理解出来ました。私はもしかしたら、テッキが起き出したときに、花が挿してあったの、もしかしたら見逃しはったんかな? と思っていましたんで。この感想なら、死後の世界は納得です。ヤマさん説も、充分ありだと思います。

ヤマ(管理人)
 ご了解いただけて嬉しく思います。

(ケイケイさん)
 しかし何ですね、あの花一厘で、後々までの感想が違ってくるんですから、深みのある繊細な演出だったってことですね(^^)。

ヤマ(管理人)
 ファンタジー風味が加えられた作品というのは、その分だけ受け手側の想像力に委ねられる度合いも高くなるので、余計に、ですよね。

(ケイケイさん)
 私は、このシーンは、もうこの頃から五人は一つだったんだと言いたかったのだと思いました。

ヤマ(管理人)
 え? それだとちょっと早すぎません?
 やっぱね、あの五人が一つになっていくには、食を共にするプロセスが大事なものとして描かれていたように思うんですよ、僕は。

(ケイケイさん)
 村長の言葉は印象的でしたね。この辺は私の主張する「韓国人食いしん坊説」が立証されたので、嬉しかったです(笑)。

ヤマ(管理人)
 先ずは、村人たちから施された芋から始まって、決めは、南北兵士の見事な連携で仕留めたイノシシを分け合って食べた夜ですよね。スファ将校同士が村長に、穏やかな村長が見事な統率力を発揮できるコツは? と訊ねて、腹一杯食わせることじゃよって答える場面があるように、この作品の作り手は、この映画のなかで“食の重要性”を強く訴えていたように僕には思えましたから、その食を共にするプロセス以前から疾うに五人が一つになっていたと解するのは、ちょっと僕には馴染めない感じが残ります。
 もっとも、自認自覚以前に同じ民族の彼らは一つだったんだよという解し方もあるのかもしれませんね。


(ケイケイさん)
 ご指摘の部分が、まさに私の感想です(笑)。分断してからの年月が、憎悪を増大させたと思うので。この頃はまだ戦争が始まったばっかりでしょう?
 相手に対しての憎しみ度も、上から言われて何が何だかわからない状態だったと思うんですよ。だから彼らがひとつになるのも早かったかと。

ヤマ(管理人)
 そういう面はあるかもしれませんね。鉢合わせたときの不信や憎悪による対立は、映画でも相当なものでしたが、まだ年月は確かに浅いわけです。でも、年月が憎悪を増大させたという部分を言いたい作品ではなさそうでしたね。早い遅いはともかく一つになりたい想いや願いのほうを強く残してくれました。

(ケイケイさん)
 この50年あまり分断されてはいますが、結局南北は一つなんだという啓示ですかね。それを導くのが、トンマッコル=子供のように純粋な=ヨイルというのは、グッと来ました。

ヤマ(管理人)
 そうなんです。だからこそ、トンマッコルに足を踏み入れさえすればってのではなく、トンマッコルで過ごし、働き、食を共にし、っていう過程を経てからというほうが“導きの寓話性“が高まるような気がするんですよねー。

(ケイケイさん)
 なるほど、なるほど。確かに衣食住を共にして、連帯感が強まるというのは、よく理解できますね。

ヤマ(管理人)
 あのシーンを死後世界での再会の図と受け止めた場合、いつの日か最後には、一つ屋根の下になる日が来るとの願いと観るか、現世では叶わぬ夢と観るかは、受け止めの分かれるところでしょうけど、作り手の思いは、前者だったのではないかなぁ。そう受け取る人が多かったから、韓国で大ヒットしたんじゃないかという気がします。

(ケイケイさん)
 前者だと思います。

ヤマ(管理人)
 ですよねー。

(ケイケイさん)
 きっと日本で感じるより、南北統一は市民感情では高まっているんでしょうね。でも早急には整備しなければならない問題も山積みだし、政権が交代したら、またやり直しだし、それはアメリカの政権が変わっても同じでしょうね。日本の政権の影響も少なからずあると思います。

ヤマ(管理人)
 北鮮への政権批判が仮想敵国化まで高じると、足を引っ張りますよね。

(ケイケイさん)
 そうですよね。統一するとドイツみたいに経済難民が北から溢れてくるでしょう? 当然韓国だけでは賄えない数だと思います。隣国の中国や日本にも、受け入れ要請があるんじゃないかというのが、うちの夫の説。

ヤマ(管理人)
 なるほどね。その暁には大いにありそうな話ですね。

(ケイケイさん)
 拉致問題も未解決だし、国民感情としては絶対複雑だと思います。受け入れてくれるかそうでないか、そうなるとガイドライン作ったり大変ですよね。ドイツの時は他のヨーロッパ諸国はどうしたんでしょうか?

ヤマ(管理人)
 そのへんのことは、とんと知らずに来ております(たは)。

(ケイケイさん)
 ちょっと小耳に挟んだんですが、やっぱり「ドイツに学ぼう」的な雰囲気があるみたいですね。そりゃ当たり前か(笑)。

ヤマ(管理人)
 いや、当たり前のことがなかなか行われないのが現実ですから、学ぼうという雰囲気があるのは、立派なことですよ(笑)。



推薦テクスト:「超兄貴ざんすさんmixi」より
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=262171091&owner_id=3722815
by ヤマ

'06.11.14. TOHOシネマズ8



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