『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』と『宇宙戦争』をめぐる話から
(往復書簡編集採録)
チネチッタ高知」:お茶屋さん
ヤマ(管理人)


  2005年8月4日
(お茶屋さん)
 『亡国のイージス』は、見ますか?

(ヤマ)
 うん、観ようとは思ってる。『スター・ウォーズ』と『宇宙戦争』は、もう観たことだし。
 けど、どっちも日誌を綴る気がせんかった。『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐ではパドメへの一途な想いの余りとはいえ、パルパティーンの口先だけで乗せられてしまうアナキンのアホさとジェダイ・マスターたちのマスターらしからぬ凡庸さに、妙に脱力しちゃって(たは)。

(お茶屋さん)
 ははは。アナキンは若気の至り。マスターたちもやはり人間(っていうか、生き物?)。それにルーカスって演出力がイマイチのような気がします。絵画的センスも私の好みじゃないし。

(ヤマ)
 さっき、あちこちに今回(7/30更新)の直リンクの報告とお礼まわりをしてて「my jazz life in Hong Kong」kaoriさんの感想を読んだら、これがもう、まんま僕の思ったことと同じで、共感しきりだったよ。
 けど、それより脱力したのは『宇宙戦争』で、スピルバーグは、ほとんど痴呆症に見舞われてるのかしらんと思ったもんで(苦笑)。

(お茶屋さん)
 えー!?これは意外。私は傑作やと思うたでー。どのへんが痴呆症?

(ヤマ)
 娯楽作品に少々の御都合主義をもって難癖つけるのは野暮だとは思うけど、あまりにもの無頓着さに、受け手に伝えるという意識を喪失して、ただ自分のほしいままに描きたいように描いているって感じ。痴呆症って一点集約っていうか、記憶にしても判断にしても、ほかのことが一切脳裏をよぎらなくなって剥き出しになる状態みたいなイメージが僕のなかにあるからねー。
 序盤の全ての車が電気系統をやられて動かなくなっているなか、ちょっと部品交換の修理しただけでレイ(トム・クルーズ)が貰って乗る車が動くのみならず、なんでレイには、そういう厚遇がされるのか??? また、レイの乗る車が貴重な一台で、どこまでいっても他には動く車がないのかと思いきや、各地にトライポッドが襲撃して磁気嵐で電気設備に損傷を与えているはずなのに、軍隊の出動はなぜか統率もされた形で行われていて、テレビ局の取材さえも動いている。
 そのくせ相変わらずレイの乗っている車は、動くということで狙われ襲われる貴重な車なんだけど、あの人ごみのなかに車で乗り込んでいくレイの頭はどうなってるのか?? 案の定、襲われ奪われるけど、奪った連中が惨殺されるような憂き目には、都合よくレイ親子は見舞われずにオギルビー(ティム・ロビンス)に助けられるけど、彼はなんで助けるの??? どうしてレイばかりいつも厚遇に預かれるのか解せない。“オギルビーとの対話”と“レイの殺人”というエピソードの必要性のためだけに、むりやり引き込まれた場所だったでしょ?(苦笑)。でもって、オギルビーは、何故かトライポッドが大阪では倒されたなんてことを知ってたりする。なんなんだ?? これって(笑)。どうやって知ったんだろう? 日本の観客のウケ狙いのためだけのものかしらね。各国版があるのかなぁ(苦笑)。

 『宇宙戦争』は、お茶屋さんも「かるかん」で引用していたように『デイ・アフター・トゥモロー』を想起させるところ、多々あるよね。僕の日誌に「大テーマとしての環境問題と小テーマとしての家族愛に絞り込んだ構成は、近頃目にすることが増えてきた“グローカリズム”なる珍妙な言葉を想起させたが、身辺雑事に囚われがちでグローバルな問題に関心を寄せたがらない“ミーイズム”を古典的スタイルの映画作品によって問い直す効用さえあるような気がした。」と書いたのは、大テーマがまぁそれなりに大テーマになりうるシリアスな現実問題だったからだけど、そりゃ、可能性的には否定できないにしたって“宇宙からの襲撃”がシリアスな現実問題というふうには僕の目には映らなくってねー(とほほ)。まぁ、地球規模で厄災に見舞われてはいたわけだけど。
 それと、行方不明になったか大爆発に巻き込まれたはずの息子ロビー(ジャスティン・チャットウィン)が一足先に平和に団欒してるっぽい家に辿り着いていたのもズリコケだったけど、レイは、離婚した妻メアリー(ミランダ・オットー)の元に、きちんとレイチェル(ダコタ・ファニング)を届けてめでたしめでたしってな話になるんかい?(笑)
 『デイ・アフター・トゥモロー』のジャック(デニス・クエイド)のようなクラシカルな男伊達がレイのキャラとして用意されていれば、まだしもなのだけど、なんか思い込みだけが激しくて押しつけがましいキャラのレイが、一旦思い込んだレイチェルの搬送をただひたすら幸運頼みのエゴイスティックなまでのごり押しで、たまたま全うできただけってな話になってしまってなかった?(笑)
 傑作だというお茶屋さんは、むろんそうは思ってなかったでしょうが(笑)。
 ま、僕がスピルバーグ、痴呆症か?ってのは、こんなふうにヘンな映画を作ってるように思ったからなんだけど〜。

(お茶屋さん)
 ヤマちゃん、お返事ありがとう。どんなところに痴呆症を感じたか分かりました。

(ヤマ)
 傑作だという方には、面白くもない話で申し訳ない(笑)。

(お茶屋さん)
 でも、筋を追うとそうなるかもね。

(ヤマ)
 けど、そんなとこ追っても損するだけだよね(苦笑)。僕もまぁ、格別追ったわけじゃなかったんだけどね。

(お茶屋さん)
 そういうことって、ありますよね。乗れないと、次々と粗が見えるという。別に粗を見にきたわけじゃないのに。突っ込みいれるのが楽しい粗ならいいけど、今回はあまりの痴呆ぶりでいけませんね。突っ込みって、ちゃんとしたところがあってこそ映えるというもんですもんね。

(ヤマ)
 そうながよねー。そういう意味じゃ、先日の“特撮映画大会”の作品らぁは、突っ込み入れるのが楽しい作品やったよね〜。どう違うのかっていうと、やっぱ「志」みたいなもんかなぁ。

(お茶屋さん)
 『宇宙戦争』で、私が筋で気になったのは、圧倒的な劣勢に置かれた人類は滅亡するしかないのか、 否かというところだけです。

(ヤマ)
 それで言えば、かるかんに「“人類の知恵と勇気で撃退”というアメリカ的(?)な結末にならなくて、益々嬉しいなっ(笑)。」って書いてあった部分は、僕も同感だけどね。

(お茶屋さん)
 まあ、お化け屋敷みたいなもんですよ。私は、ひたすら怖がれたので、あの映像のすごさとか、作りこみ具合、やっぱり傑作だと思います。

(ヤマ)
 不気味さとか怖さの追い込みみたいなとこでは、確かに『激突』っぽい凄みはあったけど、…

(お茶屋さん)
 それだけ認めてあげれば十分なような気もしますな(笑)。

(ヤマ)
 『激突』と違って、なまじっか“筋”があるばっかりにねー(苦笑)。

(お茶屋さん)
 そうやねー。筋が気にならない私のような痴呆症の観客にぴったりやー(笑)。

(ヤマ)
 なんじゃ、そりゃ(笑)。

(お茶屋さん)
 私には、ラストの「とほほ」具合を含めると、愛すべき傑作(笑)。お化け屋敷をでる直前に、お笑い芸人が出てきたと思えば、それはそれで楽しいです(笑)。

(ヤマ)
 なんや、ロビーは、お笑い芸人か?(笑) 戦いの結末を見届けたいなんて言ってたはずなのにねー(苦笑)。
 ま、ともかくも楽しく観れたもん勝ちってことさね。よかったねー。

(お茶屋さん)
 ところで、“特撮映画大会”で見た『マタンゴ』『海底軍艦』、ともに大真面目な映画でビックリしました。大真面目に人がキノコになったり、ムー人と戦ったり。

(ヤマ)
 そうそう。さっき勝手口のほうで『マタンゴ』について書いちゅうがを読んだけど、あれ、ええねぇ。かるかんには入れるがやろ? 拝借させてもらおっと。

(お茶屋さん)
 そういうことなら、かるかん化せんといかんですねえ! 私も大人向け映画と思ったので、そのことと、『海底軍艦』もやっぱ、思ったことをちょっと付け加えてアップしますわ。

(ヤマ)
 ますますよろしいなぁ。

(お茶屋さん)
 考えてみれば、今回は見なかったけど『ゴジラ』『大魔神怒る』も真面目な映画でしたよね。

(ヤマ)
 そうそう。

(お茶屋さん)
 他の映画はどうでしたか? 大真面目に変なものが登場しましたか?(ガス人間は見たかったけど。)

(ヤマ)
 さっきサイトアップしたところや。コピーを渡せるのは、どうせ先のことになるやろから、まぁ、ネットのほうで読んでみておくんなまし。

(お茶屋さん)
 『ガス人間第1号』、おもしろかったみたいで、よかったですね。
 八千草薫がまたもや色っぽさ発揮ですか(加賀まりことの以来?)。

(ヤマ)
 あ、美しさと哀しみと』の日誌、覚えててくれたん? そうなんよ〜(笑)。まぁ、色っぽさでは既に三十路にあった『美しさと哀しみと』のときが、そりゃもう上回っとったけどね(笑)。

(お茶屋さん)
 黒木瞳みたい な存在だったんですかねえ?

(ヤマ)
 あ、そーかもしれんね〜。

(お茶屋さん)
 職場で見に行けなかったという2名に「『マタンゴ』どうやった?」とたずねられて、飢えを満たすのと人間性のどっちを取るかという大真面目な大人向け映画だったと言うと、二人とも自分だったらすぐにキノコを食べると言っていました(笑)。やっぱり、楽なほうがいいよね〜。

(ヤマ)
 本音は、まぁそうなんやけど(苦笑)、誰もが即座に臆面もなくそう言っちゃうようになってるところが ♪ニッポンの未来は♪ウォう、ウォう、ウォう、ウォう♪ あんまし明るうないよな〜と思うようになってる近頃ですよ(笑)。歳相応に爺臭うなってきゆうがやろうね(苦笑)。
by ヤマ(編集採録)

'05. 7.27. TOHOシネマズ6
'05. 8. 1. TOHOシネマズ3



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―