雨龍鉱業所跡 探検: 北の細道 浅野雨龍炭鉱 双辰坑跡

古河雨竜炭鉱跡で留萌への道程を知る





北海道沼田町

 雨竜炭田沼田町にはかつて3つの炭鉱が存在した。

 ホロピリ湖に沈む雨竜炭鉱の 選炭場
車道からも確認できるため、ご存じの方も多いと思う。

選炭場選炭場

しかし本坑の呼び名は非常に混在している。

時系列でみても『浅野雨龍炭礦』『浅野雨竜炭鉱』『浅野炭鉱』『浅野雨竜鉱業所』、
『雨竜炭鉱』『古河雨竜鉱業所』『古河雨竜炭鉱』などである。
そのどれもが間違いではなく、時期により変化しているのだ。

まず、雨『龍』と雨『竜』。
これは昭和29年3月の当用漢字補正案により、「龍」が旧字体、「竜」が新字体となったことに起因する。

第二次世界大戦後の国語改革によって、その書きやすさから「竜」は「龍」の略字となったこと、
また「龍」は人名用漢字で,「竜」は常用漢字となったことが原因で変化していったわけである。


沼田町の炭鉱は今回紹介の 古河雨竜炭鉱と共に、
隧道マーケットで有名な 昭和炭鉱、そして 最奥の太刀別炭鉱などとは、
最終的に統合開発をも検討され、密接な繋がりをもつ。

それらとともにに繁栄を支えた留萌鉄道との関係性と名称の変化をみるために、
歴史的な経緯を簡単にまとめると以下となる。

  年代   雨竜炭鉱   昭和炭鉱   太刀別炭鉱   留萌周辺   その他
 明治38年(1905)  試掘権取得ながら未開発        
 大正3年(1914)          第一次世界大戦勃発
 大正6年(1917)  浅野総一郎氏 浅野雨龍炭礦
 鉱区調査
     雨龍鉄道(株)設立
 留萌港湾修築工事 開始
 
 大正7年(1918)    明治鉱業(株)昭和炭鉱 試掘権所有    留萌港・地域開発の大留萌建設事業  第一次大戦 終戦
 大正12年(1923)          関東大震災
 大正13年(1924)        大留萌建設事業 完遂  
 大正15年(1926)    明治鉱業(株)が昭和炭鉱調査    雨龍鉄道(株) 頓挫  
 昭和元年(1926)        留萌港湾修築工事 完了(17年間)  
 昭和2年(1927)        浅野/明治鉱業 留萌鉄道敷設  
 昭和4年(1929)  浅野雨龍炭礦株式会社設立      留萌鉄道桟橋(株) 発足  
 昭和5年(1930)  雨龍炭鉱 東本坑開坑  昭和炭鉱出炭開始(10月)    8月留萌鉄道(恵比島−昭和)開通  昭和恐慌
 昭和6年(1931)  浅野炭鉱出炭開始(4月)        第二次大戦 勃発
 昭和8年(1933)  浅野雨龍鉱業所に      留萌港 第二期工事完了  
 昭和12年(1937)      九州鉱山(株)設立    
 昭和15年(1940)  出炭ピーク17.5万t        
 昭和16年(1941)  東本坑 自然発火により水没放棄        
 昭和20年(1945)          第二次大戦 終戦
 昭和22年(1947)          沼田村→沼田町に
 昭和27年(1952)  4月古河鉱業(株)が鉱業権者
 古河雨龍鉱業所となる
 7月 通洞『双辰坑』開削
       
 昭和35年(1960)      九州鉱山(株)太刀別鉱業所開設    
 昭和37年(1962)  雨竜炭鉱を子会社化し鉱業権移管
 雨竜鉱業所が雨竜炭鉱(株)として新発足
       
 昭和38年(1963)      九州鉱山太刀別鉱業所が出炭開始    
 昭和43年(1968)  雨竜炭鉱 閉山        
 昭和44年(1969)    昭和炭鉱閉山  九鉱太刀別鉱閉山(4月)  留萌鉄道(恵比島〜昭和間)営業停止  


表で見ると、昭和炭鉱は明治鉱業(株)所有、太刀別炭鉱は九州鉱山鰹蒲L、
雨竜炭鉱は当初浅野氏所有、後半古河鉱業(株)所有となる。
浅野炭鉱/古河雨竜炭鉱などと呼ばれる所以はこの所有者にある。


留萌鉄道の開通は昭和5年(1930)。昭和5年は昭和恐慌の真っただ中であった。
貿易は停滞、石炭価格は暴落している時期だった。

石炭価格の対策として大手炭鉱は出炭量調整を行っていた。
その石炭産業が危機的状況にある中での
留萌鉄道開通と共に浅野雨龍、昭和炭鉱の開坑も昭和5年(1930)である。

この時期にどうして開発に至ったのか、
また『雨竜鉄道/沼田鉄道』ではなくどうして『留萌鉄道』という名称だったのか。
この辺りを探りながら探索を行いたいと思う。

なお、今回紹介の『双辰坑』とは鉱区名ではなく、
奥地の二坑と選炭場約4qを繋ぐ水平坑道(通洞)のことである。


排気立坑・ニューテアトル・双辰坑・・・



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