藪の奥の幌内違い


旧国鉄万字線美流渡駅跡である。
炭鉱最盛期には、
ここから 美流渡炭鉱 専用線が分岐していた。 (マウスon 旧地形図)


街の北部から入山する。
既に道はなく、名もなき沢沿いに進む。
目指すは最上流の一坑と当時の浄水場施設だ。 沢登り


すぐにルートは激藪となる。
予想していたとは言え、
9月中旬、まだまだクマザサも元気だ。 藪


更に登るとRC製の遺構が現れる。
これは紛れもなく当時の炭鉱関連施設だ。
目指す一坑は東幌内炭鉱となる以前の旧坑道だ。 遺構


付近の河原には炭隗が落ちている。
メインとなる本坑卸が昭和13年開坑。
東斜坑が昭和18年(1943)、更に昭和29年(1954)に東坑が掘削される。 炭隗


GPSでルートを確認しながら、
ひたすら藪漕ぎを続ける。
直線では進めず大きく迂回する。


谷を跨ぐように巻き路を進むと何か遺構が見える。
東幌内炭鉱 一坑跡に到達だ。
廃墟が残る。 施設



どうやらこれは通気に関する施設跡のようだ。
一坑が旧坑であることは確認できていたが、
採掘坑であると予想していた。 一坑


古いコンクリートとブロック製の建屋だ。
これは排気用の遠心式ファンの電気関連の施設跡だ。
電動機(モーター)などが設置してあったようだ。 廃墟


内部には装置が設置されていたであろう基礎がある。
経済産業省令第97号、鉱業上使用する工作物の技術基準には
鉱山保安法により明確な規定がある。 通気


坑内通気に使用する扇風機の技術基準の中には、
主要扇風機は坑道の延長線外の耐火建築物の中に設け、
爆風戸が適切に設けられていることとある。 排気立坑


建屋の延長にはご覧の排気風洞が接続する。
繁栄後半には東坑が主要坑口となり、
これは昭和29年(1954)に東斜坑と坑内斜坑で連結した若返り坑道である。 風洞


斜度18度、延長1,450mの東坑がメインとなった後、
この一坑は排気立坑として、
余生を過ごしたのである。 一坑


鉱区内の理論埋蔵炭量は約2,980万t、
その内、可採炭量は1,710万tと推定され、
炭丈 は最大で1.3mに及んだ。 立坑


鉄筋として使用された12kgf級(=高さ69.85o)のレールが残る。
大正6年の開坑から繁栄のピークとなったのが昭和38年(1963)で、
総出炭量は454万tに及んだ。 (マウスon レール規格)


折れ曲がる排気風洞内部。
昭和38年には210,050t/年、鉱員約5,300名、出炭能率33.1t、
目標とする月間出炭量は19,000tと 本岐炭鉱 の25,000t/月にも迫る勢いだった。 排気風洞


蒼い水を貯める立坑跡。
本坑の石炭は良質炭で、
ガス発生炉、ボイラー用、一般家庭用と用途が広かった。 立坑


場所を変え、再び藪の斜面を登る。
今度は付近の浄水場関連施設の跡を目指す。
資料にあるのは恐らく配水池、山上のタンク施設だ。 浄水場


しばらく登ると深い山中に、
スーパーカブらしきオートバイの廃車が朽ちている。
ここまで道があったことが驚きだ。 スーパーカブ


付近には宿舎の様な廃祉がある。
恐らく民家や農家ではなく、
浄水関連の詰所のようだ。 宿舎


足元には給水を制御するバルブが埋没している。
いよいよ浄水関連施設が近い証拠だ。
目指すのは 浄水場 ではなく下流の配水池施設だ。 バルブ


これは現存する 愛知時計電機(株) 製の水道メータだ。
時計技術を利用し、精密歯車を使用した製品だ。
昭和2年(1927)からの生産となる。 水道メータ


斜面の上には廃墟が見える。
恐らく配水池、浄水場で処理の終わった清水を、
街に重力給水するための山上タンク施設だ。 施設跡


施設までの苔むした階段が残る。
街への給水はに日中と夜間などでもその量が大きく変化する。
毎時一定量の浄水場からの給水に対して需給バランスを取るのが目的だ。 階段


スレートの屋根で覆われた水槽施設跡。
飲料水用だけでなく、
消火用水の確保も非常時に備えた配水池の役柄だ。 屋根


配水池の有効容量は1日最大給水量の12時間分とされ、
使用量の少ない夜間に貯水し、
浄水処理量を超える日中でも水不足に陥らないように機能する。 水槽


別棟には配管室の様な廃祉がある。
配水池をこのような高所に設置すれば、
ポンプの加圧無しに給水が可能となる。 配水管


東幌内炭鉱は近代化され、年平均出炭10万t以上の炭鉱であった。
つまり冒頭の『Dクラス』となる。
それでも昭和44年10月、閉山交付金を受領、歴史に幕を閉じる。 配水池


『幌内』の名称が科せられた所以は、
東幌内炭砿株式会社(東京/昭和9年創立)に属したからであって、
決して 幌内炭鉱 とのコネクトが深かったわけではない。 浄水場跡








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排気立坑
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