「このごろさ、おれをじーっとみてるやつがいるんだよな。
へんなやつ!・・おいらはひとりが好きなのにさ」
キツネは、ある日、自分をじっと見つめている目に気がつきます。
それは、いつもおとなしいウサギでした。
キツネはそんなウサギがうざったくって邪魔でした。
けれど、いつしか、自分に注目してくれているのがうれしくなります。
そして、ウサギの存在がどんどん大きくなっていきます。
でも、このごろウサギの姿が見えません。
「ウサギのやつ、どこにいっちゃったんだろ・・まさか?」
キツネは走ります。いっしょうけんめい走ります。
ひとりぼっちじゃないって、だれかがそばにいてくれるって
こんなにステキなことだったんだ!
★作者の磯みゆきさんと★
「みてても、いい?」への思い
このお話の主人公のキツネとウサギは、どちらも周りの仲間との、程良いコミュニケーションが苦手です。
感情発散タイプ自己制御不能のキツネと、内向的・閉鎖的で社会性不足のウサギ。
これに近い子ども、皆さんの周りにもいませんか?昔の僕は完全にウサギタイプでした。とにかく人前に出たくない、目立ちたくない、みんなと仲良くなんて絶対にムリ、ムリ。ボクは一人でいるのが好きなんです、一人でいるとホッとするんです、だからどうぞボクの事は放っといてくださいと口にする事も出来ず、心の中でつぶやき続けました。
親や先生は心配して「もう少し社会性を身につけないと社会に出たら大変だぞ」高校卒業くらいまでそう言われ続けました。
ボク自身もそう思い、たまたま行った大学で何かサークル活動をやろうと思い立ち、大学で配布された「サークル活動ガイドブック」のページをめくってました。
面白そうなサークルをいくつか見つけたけど、部員数がやたら多い!50人とか100人とか!だめだ、想像しただけで緊張でドキドキする。
仕方なく部員数の少ないところを探そうと、いつしかページ右上ハシッコの部員数の欄だけ見てペラペラめくっていたら、一つだけあった!8人!少なっ!これはいいぞ!それが人形劇部でした。
でも、子どもなんか意味不明で好きじゃないし、ましてや人前で(人形だとしても)演じるなんて、ありえない。ただ、よく読んでみると、自分たちで人形や小道具・大道具を作り、台本も書く・・・とある。子どもの頃からボクは一人で模型を作ったり、本を読むのも文章を書くのも好きだった。よし、これだ、裏方をやろう、と人形劇部に入りました。ところが部員が少ないから裏方だけというのは許されず、チョイ役で人形を持たされ、舞台に立つことになってしまった!かなり動揺はしたものの、ラッキーだったのはその時の人形劇は、人形遣いは黒子頭巾を被って顔を隠し、そかも蹴込み(客席と舞台を隔てる黒い壁!)に隠れているから観客と自分は完全に遮断されてる!人形だけが見えるようにして、人形のせいにして、自分は隠れて声だけを出す。そして、笑いを取ったり拍手を貰う。ドキドキしながらも、明らかに気持ちが良くなってる自分がいる。
この間接的で卑怯な自己表現がたまらない!人形劇の初舞台でボクは完全に人形劇のとりこになりました。そして、大学を途中で勝手に卒業し、人形劇団京芸に入団。
あれから30数年、気が付くと黒子頭巾をはずし、蹴込みをとっぱらい、時には人形さえ持たずに生身で演じてる。
子ども達のキラキラした視線がたまらない!大人達の笑いに興奮する!人は、自分の大好きなことを見つけたとき変われる。大切な仲間に出会ったとき、成長できる。
ボクは人形劇のおかげで、人と出会うことが大好きになれたし、人形劇を通して、色んな違った人間が集まって、意見を出し合い、互いに木聞き合い、みんなで何かを作り上げていく事が本当に楽しいと、感じるようになったのです。
人形劇のおかげで、リハビリして社会復帰が出来ました。
子どもたちも勉強だけでなく、スポーツだけでもなく、色んな文化芸術体験も通して、本当の自分を見つめ発見するコツや、他人の気持ちを丁寧に想像できる感性を、ゆっくりしっかり育てていった欲しいな、と思います。
こんな思いが、「みてても、いい?」を創ったボクの原動力です。
北村 直樹
2012年に幕を明けたこの作品、ステージを重ねるごとにまだまだどんどん
面白くなっています。是非!ご覧ください。
★ご感想より
・ふたりのかけあい、段々関係が逆転していくところも とても面白かった。
テンポの良さ、人形のかわいさ、舞台のつくり・・・どうくつのドキドキなどいろんなところで楽しめた。
・サイコー!!2回見てしまいました。心うばわれてしまいました。
・きつねくんがいたずらする気持ちも、孤独な気持ちもよくわかって、せつなかったです。随所随所でピッタリはまって笑いあり、温かくなる作品でした。とてもよかったです。ありがとうございました。
・とても とても よかったです。あたたかくなって楽しくって、さいごにホロリとしました。
・「あなたがうまれるまで」の作品から、また、素敵な楽しいお芝居を見ることができ、大変嬉しかったです。
・1才と3才どちらも大変たのしんでいました。すばらしい演技と演出!!
私も勉強になりました。もっと みてても いい?
・きつねの感情がよく表れていて、見る方に伝わってきました。よくできた構成で、人形づかいのおもしろさも出ていて、とってもたのしかったです。
・とてもたのしかったです。心がぽかぽかになりました。
朝倉国際子ども芸術フェスティバルのアンケートより