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平成18年 イベント
11月 大勢に対する
   話し方
 9月 忠告の仕方
 9月 断り方
 7月 説得の仕方
 5月 報告の仕方
 3月 説明の仕方
 1月 人に好かれる
    努力
 
 
 
 
 
 
 



          





平成18年 勉強会抄録
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11月 テーマ 大勢に対する話し方
講 師 堀川一枝




 [大勢に対する話し方]


 大勢を対象としての話し方を取り上げてみたい。パブリックスピーチともいわれ、多くの人が強い関心、興味を向ける話の場面である。大勢の前で話すことは、現代社会では個人が好むと好まざるとに関わりなく、誰もが直面する社会的要求となっている。

1,勇気を持って話す

 話す場面では、一対一と違って多数心理の圧迫があり、話しにくさを感じるものである。
その克服のためにはまず”勇気を持って”臨むことが基本となる。
 「言う気=勇気」といわれ、言う気を持てば勇気が湧き、勇気を持って臨めば言う気が湧いてくるのである。

 (1) 勇気を持てない原因
 ア、話を無視されることを恐れる
 イ、話を批判されることを恐れる
 ウ、話の巧拙を問われないかと恐れる

 (2) 勇気を持つためにはどうしたらよいか
 ア、自分の話を自分で無視しない
  意識して意欲をかき立てること、そのために以下のことにつとめたい。
  @内容を考える
  A話材を集めておく
  B問題意識を持つようにする
  C意欲をかき立てるために次の言葉に注意する
   △でも…、△どうせ…、△だって…、△だめだ、△できない、△どうしよ
   う、などという言葉は口に出さないようにする
 イ、聴衆の批判を恐れない
  聞き手はこちらを批判するものだ、と思って話すこと
 ウ、話の目的を忘れない
  自分は何を話すのかをしっかり意識して話すこと

(3) 大勢の前で話すときの留意点
 ア、多数心理の圧迫への対処
  恐れるだけでいては話はいつまでもできない。”よし話すぞ”と心に言い聞
  かせて踏み出してみよう。意外に心が楽になるものである。
 イ、聴衆分析に努める
  聴衆は様々である。職業、年齢、趣味の違い等で聴衆の反応は違う。
  また聴衆の質も、”話を見に来る聴衆””話を聞きに来る聴衆””話をわか
  りに来る聴衆”とあり、それぞれ反応の違いを見せるのである。
 ウ、効果測定の難しさ
  対象が多くなるほど話の効果の測定は難しくなる。またその測定法という
  ものはない。いえることは実地の経験を重ね、自分なりの測定法を見つけ
  出していかなければならないのである。

[解説]
  1,話し方は二つの性質を持つ

 ◆理知・論理性を中心とする話し方
  内容の質や確実さ、また生産性を求められる話で、
 ◇プレゼンテーション・講義・講演といった話である。

 ◆情感・情緒性を中心とする話し方
  話の内容よりも楽しさ、おもしろさ、しみじみさ、心の癒しとなる話、といっ
  た情感を刺激する話である。
 ◇集会でのスピーチ、トークショウ、話芸といわれる舞台上の話、または
  演説などがある。

 ◆そのほかに中間に位置する話し方もある
  代表として幼稚園・保育園の教師たちの話し方がある。子供たちに楽しい
  話を聞かせ、遊びの中で子供たちを教育し、躾けていくやり方である。
  子供たちを喜ばせる話は情緒的だが、話の目的は人間の規律・規範を
  学ばせるという論理性を持っているからである。
 
2,技能的側面から見た話の特徴

 ◆理知的・論理的話し方
  内容の論理的構成をはかることが効果を左右する。話の構成法は、文章
  構成とほとんどオーバーラップしているので、その手法に従えばよいとさ
  れる。いわば頭脳的思考が技能面の中心になっている。

 ◆情感・情緒的話し方
  技能の主体となるのは”話しぶり”である。音声、緩急、強弱、間といった
  もので、これらを身につけるのは体験以外にないとされる。
  更にやっかいなのは、”話に味を出す”ことが求められてくる。話の味とは
  究極は話し手の人間性を指しているのであり、話によい味を出すには
  話し手自身の人間性を高めなければならないこととなる。これはもう技能
  を超越したレベルにおいて、話し方を見つめなければならなくなる。

 3,二つを統合した話の技能を身につける

  上に上げた二つの話の技能は、どちらに偏しても効果はあげられない。
「理屈はわかるが話は退屈だ」
「おもしろい話しぶりだが、底の浅い話だ」
 などの評価を受けないために、論理・情緒共の技能を磨いていきたいものである。


     




    

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9月 テーマ 断り方、  忠告のしかた、
講 師 佐藤雄三  坂田富男





[断り方について] 

  (佐藤雄三指導)


 断ることとは、相手の申し入れに対して受け入れられないことを伝え、了解してもらう行
為である。つまり相手の説得行為に対し、逆に説得を仕返すことであり、逆説得ともいわ
れる。

1,「断る」ことの難しさ

 「断る」ということは様々な難しさが伴う。それは断った後の、相手との関わりに難しさがあるからである。具体的には次のことがあげられる。
 @ 心情的抵抗感
  ◇しこり  ◇気まずさ  ◇緊張
 A 人間関係の変化への怖れ
  ◇関係の悪化  ◇関係の破壊、消滅
 B 生活環境の変化への怖れ
  ◇利害関係の悪化  ◇不利益の風評等

2,「断り方」について

 (1) 全体の構想(戦略)を立てる 大きな事柄について断る場合は、事前に
   策をたて、また時間もかけて、構想(戦略)をたてて臨むことが必要で
   ある。

  断り方の具体的な手法として「正的(メジャー)手法」と「負的(マイナー)手法」が ある。負的(マイナー)な手法は好ましくないものが多いが、現実には使われることが多く、それなりの効果を上げている。

 (2) 正的(メジャー)な断り方
◇可能性のないことを明確に言う(言い方に配慮する)
◇受け入れられない理由と内容を示す(ごまかし、はぐらかしのないよう)
◇感情を損ねないよう配慮する(相手の自尊心に配慮する)
◇穏やかな表情と話し方で対す(敵対的雰囲気でなく)
◇条件・代案を示す(この条件ならば受け入れるなど)
◇自分を下位におく気持ちで対す
◇権威を借用する

 (3) 負的(マイナー)な断り方
◇沈黙(黙っていて相手が根負けするのを待つ)
◇開き直り(できないものはできません、などという)
◇はぐらかし(論点をすり替えて曖昧にしてしまう)
◇忌避(ただ逃げて回る)
◇プライドの貶め(私と結婚してくれというの?私を安く見ないで、なとどいう)
◇威し・威圧(上から押さえつけるように断る)



 [忠告について] 

 (坂田富男指導)


 忠告は、相手のよくない行為や考え方を指摘して、反省を促し、あらためさせることを目的としたものである。
 したがって忠告は相手の感情反発を誘い、人間関係破壊にまでつながる危険性も持っている。
 しかし、お互いの生活環境をよくするために、必要ならば抵抗を押して忠告をし、また忠告を受け入れることにつとめたいものである。

 1,忠告の効果的なしかた

 ◇相手に受け入れられる条件作りをする
  (1対1を原則に時と場を考える)
 ◇油断をしない
  (わびる気持ちでいう)
 ◇比較をしない
  (反発を招かないために。身近なものとの比較ほど反発が強い)
 ◇長所を認める
  (気持ちに救いを与える)

 2,忠告の注意点

 ◇重ね忠告、追加忠告はしない(一時に一事の原則で)
 ◇感情にまかせたものや、主観的判断でしない
  個人的判断でなく、集団の誰もがそう思っていることを冷静にいう
 ◇平素から人間関係づくりに努める
  人間関係いかんがことの成否を分けるといってよい

 3,忠告の受け方

 忠告をされるということは、自分の知らない自分を知ることである。心理的に受け入れにくいことであっても、自己の人間的成長の糧になるものと思い、受け入れることにつとめよう。
 ◇まず相手の話を素直に聞く(自分の耳をふさがないように)
 ◇『誰から言われたか』でなく『自分の何を言われたか』を考えるようにする
 ◇受け答えに気をつける
  ◯理屈付け ◯強がり ◯開き直りなどをしないように
 ◇忠告内容に誤解があれば、わからせることにつとめる
 ◇忠告されたことに感謝する言葉を伝える
  忠告した人も傷ついている。感謝の言葉はその傷を拭ってあげることに
  なる。

 [付録]

 よく引き合いに出されるものに忠告と注意の違いがある。2つの違いを挙
 げると、
 ◆注意 … 相手の言動を一時的にあらためさせること
 ◆忠告 … 相手の生活態度(生き方、思想までも含め)をあらためさせる
         こと

  もうひとつ、説得と忠告との明確な違いはどこにあるかとの問題もある。
 ◆忠告 … 忠告は、背景に倫理・道徳・ルールといった観念をもった説得
        行為である。人の所属する社会のルールに照らすと、間違って
        いるから改めなさいというのが忠告である。
 ◆説得 … 上のような背景はない。もちろん説得にも理非善悪の考えは
        はたらくが、忠告ほどの強さはない。


     




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7月 テーマ 説得の仕方
講 師 安田秀夫




 [説得の仕方]


 説得するにおいて、その基礎として説明力を高めておく必要がある。事柄をよく説明し相手に十分な理解を与えれば、行動を促すことが容易になるからである。
 わたしの例だが水道屋さんに給水栓の取り付けを頼んだことがある。家庭にある給水栓では、レバーを上げると水が出るのと、下げると出るのとの2種類がある。わたしの感覚では下げて水が出る方がイメージがよい。
だが水道屋さんは上げて水が出る栓を取り付けようとしたのである。
 不審に思い尋ねると、神戸大震災の以後役所の通達があり、このような形式に決められたのだという。その理由は押し下げ式だと地震で落ちてきたものが、水栓のレバーに当たって水栓を押し下げ、水が出っぱなしになるからだという。現に震災時にはこのケースが多く出て、被害を広げたとのことだった。
説明に納得したわたしは水道屋さんに素直に従ったのである。

 1,説得の大切さ

 説得とは、自分が願うこと、してもらいたいことなどを、相手に納得させたり、行動させることを目的とする話のはたらきである。
 わたしたちの日常は誰かの協力がなければ生活できない。相手もまたこちらの協力を求めるのである。つまり相互説得によって生活は成り立っているのであり、説得力を高めることは、自分の生活圏を広げることとなる。ここに説得の大切さがあるのである。

 2,説得を成功させる条件

 @ 説得者の意欲と誠実
  「よし説得するぞ」と自分に言い聞かすこと
 A 説得する事柄の理解
  「おれも分からないけどやってくれ」ではだめ
 B 聞き手を考える
  自分本位になってはだめ
 B 説得者の相手に与える印象
  印象が悪くては成功しない

 3,説得の仕方

 @ できるだけ聞き役になる
   「しゃべるなしゃべらせよ」を原則とする
 A 具体的な結果を示す
   ★説得力を高めるには事実・実例を示す
   ★事実・実例は具体的な言葉で話す
   ★話を具体的にする6つの要素
    ☆比較・対比を用いる…他店との値段を比べるなど
    ☆調査データを示す…確実な事実の裏付けとなる
    ☆視覚に訴える…実物を見せるなど
    ☆プラス結果を強調する
    ☆諺を生かす
    ☆殺し文句を使ってみる
 
 B 実現可能な方法を示す

 C 自分の考えやヒントを与える

 D タイミングと場所を考える

 E 励ましと感謝を忘れない

 [解説]

 1,生活の潤滑油としての説得場面

 日常の生活をスムーズにすすめる上での説得場面である。家庭、近所、友人・知人間、職場などでごくふつうにみられるもので、多くの場合「説得」を意識しないものである。

 @ 具体的な説得場面
   ◇妻が夫に「散歩の帰りにコンビニで○○を買ってきてちょうだい」など
   ◇近所の奥さんに「一緒に買い物に行きましょ。そのとき声をかけてね」
     など
   ◇友人に「来月のクラス会出席しないかね」など
   ◇職場で、外に食事に出るという仲間に「このはがきポストにいれとい
    て」など
 A これらの場面で中核となる説得の重要要素
   ◇良好な人間関係
    ふだんの人間関係のありようが説得の是非を大きく左右する。いわ
    ゆる「日頃のつきあいが大事」といわれるものである。

 2,明確なテーマと意志を持った説得場面

 特定な相手に、特定なテーマ(説得項目)を持って説得するものである。前項の場面ほど数は多くないが、その成否はやはり生活に大きく響くのである。

 @ 具体的な説得場面
  ◇若い男が「今日こそ彼女に結婚を申し込もう」と自分に言い聞かすなど
  ◇自治会長が「ゴミ集積所をあの家の前に設置することを承諾してもら
   おう」などのとき
  ◇営業マンが「あのユーザーに○○の売り込みをかけよう」などのとき
  ◇人事部長が「あの人に勇退を勧告しよう」などのとき
 A これらの場面で中核となる重要要素
  ◇利害の調整
 人間関係ももちろん重要だが、加えて利害調整も重要な要素である。特にビジネス場面においては、情実より利害計算が先行する。従ってどのあたりで折り合うかの交渉が説得の現場となっている。特に国家間の外交は、この利害調整が最重要要素となっていることは、北朝鮮ミサイル発射事件での国連制裁決議のいきさつをみればよく分かる。

 以上は文責者の個人発想によるものだが、参考となれば幸いである。

[付録]

 説得の種類
 説得とは人を動かすことといえるが、少し詳細をいうと以下のようになる。
これは以前取り上げているので、再掲となる。

 @何かをさせること…「○○をしてください」と何かをさせることなど
 A何もさせないこと…「すぐ戻るからここを動いちゃダメよ」と子供に言う
  など
 B駆り立てること…現在していることを「遅いぞ、もっと急いで」などという
  こと
 C変更させること…「途中でよいから先にこっちをやってくれ」と別のことを
  させる
 Dやめさせること…現在していることをストップさせる「ここで作業は中止」
  など
 E容認・許諾させること…「しばらくこの場所に車を置かせてください」など
  のこと
 F考えを変えさせること…「自民から民主支持に変わろう」など精神面への
  働きかけのこと



     




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5月 テーマ 報告の仕方
講 師 市川計子




 「報告の仕方」


 報告とは相手が知りたがっていること、また自分が知らせたい事柄を、正確に伝えることを目的とした話し方のことである。

 1、なぜ報告は重要なのか

 (1) 情報の獲得のため
   必要なときに必要な情報が常に自分の手元にあれば、混乱、迷いも
   なく活動することができ、精神的にも安定する。

 (2) 判断の基礎として
   生活の中でわたしたちは、理非,善悪,好悪,進退,等様々な判断を
   すべきことが多い。その判断の資料として報告が必要である。

 (3) 行動への意志決定として
   前項にあげた”判断”は次のアクションとしての行動につながって
   いく。自分の意志決定を間違いないものにするために報告が必要である。

 上の3つは繋がりを持つものである。例えば出勤時に傘を持つべきかどうかを考えたとする。そこで”情報の獲得”のためテレビをつける。テレビが午前中曇り、午後一時雨というのを聞いて、傘を持つべきと”判断”する。そこで鞄に折りたたみをを入れて、出勤という”行動”に移るのである。

2,正しい報告の仕方

 報告は、事実を正確に伝えることか絶対条件となる。そこで報告の仕方として次のことを考えておきたい。

 (1) 5W2Hをもって正確に伝える
  @ Wheen(いつ) … いつのことか
  A Where(どこで) … どこであったのか
  B Who(だれが) … 誰であったか
  C What(なにか) … なんであったか
  D Why(なぜ) … 理由や目的は何か
  E How to(どのように) … どのようにして・方法
  F How much(どれほど) … いくら、値段・経費

 (2) 報告をするときの心得
  @ 相手の都合を確認してする
  A 結論を先に、経過は後から言うようにする
  B タイミングを計ってする
  C 事実と自分の意見とははっきり区別して言う
  D 推論でものを言わない
  E 必要なら中間報告を入れる

3,報告の受け方

 報告を正確に受け止めることは、報告をすることと同等に大事である。
  @ あらかじめ結論を決めてきかない…先入観を持たず虚心に聞く
  A 事実の部分と、相手の意見とを、区別して聞くようにする
  B ねぎらいの言葉を書ける

 [報告演習 設問]

 以下のような電話があった。この話し方を報告要領に基づきスッキリまとめてください。



もしもし、○○電力さん?きょう家のポストに、前に入居してた人の名前で、請求書が届いていたんですけど、ちょっと調べていただけませんか。うちが引っ越してきたのは5月25日なんですが。あと、うちの家の道路に立っている電柱を抜いて欲しいんですよ。家を新しく建てたんだけどちょうど窓のところに電柱が立っているから、夜泥棒に入られたら危ないじゃないですか。8月までに工事が終わるようにお願いしたいんですけど、いつになるか6月10日までに御連絡ください。


どうですか。これは2つの用件が混在しているので全体にまとまりを悪くしている。
そこらを整理してスッキリさせたい。以下のように整理して話せば効果的な報告となる。


@ 請求書を調査して欲しい
 ★前の入居者の名前でポストに請求書があった 
 ★自分が引っ越してきたのは5月25日である。
A 前の道路の電柱を抜いて欲しい
 ★自宅前に立っている電柱を抜いて欲しい
 ★新築した家の窓の近くに電柱があり、泥棒の心配があるから
 ★8月までに工事は終わるようにして欲しい
 ★その返事を6月10日までに欲しい



 [文責者解説]

 報告とは、直接に事実を知ることが出来ない者が、何らかの機関を通して事実を知るという話のはたらきのことである。機関とは、周りにいる人間とか、新聞、テレビなどのメディアを指すのである。
 市川氏の講義に付け加えるところは特にないが、念のためという意味から幾つか挙げてみたい。

1,報告の「単次性」と「複次性」

 生活の中での報告は、自分は中継点の立場であることが大変多い。
 単次とは……(A)→(B)で終わるもの。起点の次が終点となるものである。
 複次とは……(A)→(B)→(C)→(D)と続くもの。起点と終点の間にいくつもの中継点がある ものである。
 起点から終点まで間違いなく報告が伝わるには、特に中継点に立つ者の努力が大切となる。
 そこで中継点者は、
 ●報告内容を正確に受け止めること
 ●報告内容を的確に伝えること
 に特に心がけなければならない。

 (1) 正確に受け止めるには
 講義およびレジメにある「報告の受け方」に従うことである。受けた内容は事実か否かを吟味することが大切である。現実の報告には疑わしい事実もよくある。そこで5W2Hを当てはめていけば、事実かどうかを判定することは容易となる。いわば5W2Hとは雑多な不純物を取り除く濾過材のようなものである。

 (2) 的確に伝えるには
 これも市川氏の講義の「報告の仕方」に従うことである。ここでも5W2Hは重要な役割を持っている。報告を受けるにも、伝えるにも、5W2Hのはたらきを忘れてはならない。

2,報告の形には「定形」と「非定形」がある

 報告の特徴として「報告はこのようにしなければならない」という規程があり、それに従わなければならないと思われている。間違いではないが実際の生活においてはそれに縛られない報告があることも知っておきたいと思う。

(1) 定形としての報告
 どんな内容のものを、どのような項目に合わせて、どんな順序で報告するかを規程される報告である。
 組織体での業務上の報告などがこれである。したがってこれらの場合の報告は、強い拘束性をもっている。定形としての報告は一般的に次のような順序となる。
 @ 予告……これから報告することを言う
 A 理由……何故この報告をするかの理由を言う
 B 報告内容に入る
   ●結論、結果、最重要点を最初に言う
   ●5W2Hなどの裏付けをもって上項の詳細や経過を述べる
   ●相手の質問等に応じる
 C 私見・意見を述べる……この場合報告内容と、はっきり切り離して言う
 D 終了……報告は以上であるという

 (2) 非定形としての報告
 前項のような形式にとらわれず、間違いのない事実をコンパクトに手際よく伝える形のものである。プライベートな生活場面では一番多い形といえる。ここで重視すべきは”コンパクトで手際よい話し方”
という点である。経過から入る報告も、非定形の場合は許されるが、経過から入る話はとかく冗長、冗漫な話に流れやすい。自由形式の報告であっても、やはりムダ・ムラのない話をするよう心がけることである。

3,報告において、陥りやすい落とし穴

 事実をありのままに伝えることが報告の使命だが、ここで注意しておきたいことがある。
 ”間違いなく伝えている””事実をそのまま伝えた”と思っていても、結果は間違っていることがある。こうした落とし穴に注意したい。

 (1) 片面だけの報告(言わざる嘘)
 話したことは事実であっても、事柄の全体を伝えなかったために、結果は間違ったことを伝えたことになるものである。
 ”仲人口”という言葉ある。男のプラス面だけ言ってマイナス面を言わないために、女性は男の人間像を誤って受け止めてしまうというものである。
「部分的な事実を伝えただけでは、全体の事実を伝えたことにならない」ということを心しておきたい。

 (2) 推論による報告(推量による事実判断)
 目の前の現象だけを見てその背景を推測し、事実として受け止めてしまうものである。
(朝、学童がベソをかきながら学校の方に走っていく姿を見て、学校に遅れそうなので走っていくのだなと思いこむなど)
 もちろん推量と事実とは合致している場合も多いが、大きく外れて問題となることも多いので気をつけることである。

 報告においては事実か否かを確かめてから、伝える習慣を身につけておきたいものである。

 (3) 断定による報告(感情的価値判断)
 断定とは”何々である” ”何々にちがいない” ”何々のはずだ”という言い切りの形での表現である。
 この断定が何故問題となるのかというと、客観的事実を伝えるよりも、感情的側面(好き・嫌い、よい・悪い)からの価値判断を押しつけがちとなるからである。(あの人はよく嘘をつくのよ、わたしも嘘つかれた。だから信用しちゃダメよ。といったような)

 報告者の基本態度は、被報告者が正しい判断をするための資料を提供するものである。したがって報告者は「推量・断定」からの判断で、報告してはならないことを注意したい。
 また、「言わざる嘘」は、報告者が意図的に操作することがあるので、報告を受ける者は注意が必要である。


     




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3月 テーマ 説明の仕方
講 師 坂田富男




「説明の仕方」


 説明は情報伝達の、もっとも基幹となる話し方である。言研では第二段階のコースにおいて取り上げていた。
 相手から説明を求められたとき、また自分からわからせる必要があったときに、その事柄を理解させることを目的としている。
 この単元の講義は意外に難しい、と講師はよく言う。なぜなら講義内容をよくわからせられなかったならば、自身の説明力を問われることになると思いこむからである。一種の自縄自縛に陥るのである。

 1,説明の事前準備

 説明において、事前に準備することが求められる。
 @説明することを十分理解しておく
  自分が、まずわかっておかなければならない。
 A相手がどのくらい理解しているかを掴む
  相手がどのくらいの範囲を理解しているかを掴むのは大切である。
  なぜなら、説明は相手が理解している最後からはじめるのが基本となる
  からである。相手が既に知っていることを話すと「くどい話だ」と思わせ、
  理解の範囲を超えたところからはじめては、初手からわからせられない
  からである。

 2,説明の具体的な仕方

 説明法は種々あるが、以下の項目はどの説明時にも欠かすことができない要素である。

 @はじめに、何をどの範囲まで話すかを予告などして理解させておく。
 A整理して順序よく話す
 B視点を変えて話してみる
 C主要店、重要点は繰り返すなどして強調する
 D共通の意味にとれる言葉・用語を用いる
 E質問を活用するなどして、相手の理解を確かめながら進める
 F視聴覚に訴えるなど具体的に話す

 3,説明の受け方について

 時間の都合からこの項に及べなかったが、テキストには次の項目があるので参考とされたい。
 @内容を素直に間違いなく理解することに努める
 A話には裏面に真意が潜んでいたりする。それらを把握するように努める
 Bすすんで質問するなどして、正しく理解するようにする

[問題]  下の図を相手に見せないで、正確に書いてもらうにはどのように説明したらよいか  
 [解説]

 (1) 『説明する事柄を理解しておく』ことについて
  説明する事柄をよく理解しておくべしというと、ともすると事柄を広く深く
  詳細に知ってなければならないと思いがちだが、説明ではそこまで要求
  していない。自分が話そうとする範囲内においては知っておこう、という捉
  え方でよいと思う。 
  では、知っているレベルとはどの程度をいうのだろうか。
  説明は言葉が中心となるのだから、説明する事柄を言葉で言えるように
  なっておくということである。言いよどむ、言葉に詰まる、適切な用語が
  見あたらない、端的な表現ができないなどが、ないようにしておくことである。

 (2) 『視点を変えて言う』ことについて
  これは難しいことをいっているのではない。相手の立場にたち、もし相手が理解しにくいと思えば、説明の方法を変えようというのである。
  具体的には
  ●話の順序を言い換えてみる
  ●用いる用語を別の表現にする
  ●事例を変えてみる
  ●質問法に変えて、相手のわからないところを聞き出してみる
  などと捉えたらよいと思う。

 (3) 『視聴覚を用いて説明する』について
  現実の説明場面ではとても大事な項目だと知っておきたい。説明は言葉が主体であ  るが、同時に言葉だけでは表現に限界があることも、知っておかなければならない。
  したがってノンバーバル(nonverbal comunication)(身振り手振り等五感を用いるもの)
  を駆使した説明法も心得ておきたいのである。
  坂田氏が図形の説明を講義に用いたが有効な説明法であるといいたい。

 (4) テキストにある説明項目について
  言研テキストにある項目だけでは、すべての説明場面をフォローできない。
  「わからせる」ことを目的とする話のはたらきは、ほかにまだたくさんの要
  素があり、テキストには主とす る項目を挙げたのだと心得ておくことである。
  例えばテキストにある項目は、『理知・論理』の世界においては有効だが、
  『情緒・情念』の世界には必ずしも有効とはいえない。「わたしの気持ちを
  わかってよ」とか「わたしがこんなに苦しんでるのに、どうしてわかってくれ
  ないのよ」と叫んでも、分かり合えない面は多々あるのである。こうした
  『情緒・情念』の世界での説明法は今後の研究の課題として残るところで
  ある。



     




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1月 テーマ 人に好かれる努力
講 師 宮原英一郎




  「人に好かれる努力」


 評論家として知られていた草柳大蔵氏のことからはじめたい。
 氏が出版編集者であった頃、ある国務大臣宅に原稿を貰いに行ったことがあった。原稿はもらえたが、そのときのマナーがよくなかったことから大臣夫人から忠告されたという。
「あなたはお若くご存じないでしょうから申し上げますが…」
と言われ、次のように教えられたという。
「初めてのおうちに行き応接間に案内されたならば、その家の人が出てくるまでは椅子に座っているのではありません。家の人に勧められてから座るものです。それがマナーです。そのあいだは壁に掲げられてある絵などを鑑賞すればよいのです。」
 と言われ草柳氏は大いに恥じ入ったという。その後同じ仕事で、三菱銀行の田実頭取を訪ねたときは、教えられたマナーを守って応じたのである。さらにそれから中山素平氏を訪ねたときである。
「いやぁ、待ってたよ」
 といきなり歓迎されたのである。初対面であったので「なぜ?それほど」と思い聞いてみると、
「実は君はどういう人かわからないので、田実さんに聞いてみたんだ。すると礼儀正しい好青年だと言われたので、楽しみに待ってたんだよ」
 ということだった。
 マナーを守ることで草柳氏は、田実氏や中山氏というビッグマンに好かれたのである。
 わたしはマナーという言葉を使ったが、本当はマナーという表面的な動作でなく、その奥にある「自分を磨き、社会人として好ましい自分を作り上げること」が人に好かれるもっとも大切なことであると言いたかったのである。  人に好かれるということについて、わたしは疑問がないでもない。
 好かれる人は全てにおいてよく、嫌われる人はすべで悪いのかと考えると、疑問を持たざるを得ない。たとえ嫌われても、人のために何かをなす人ならば十分評価されるのではないか。そう考えると、好かれることこそ大事、好かれなければならないということには、頷けないのである。
(文責者注,選挙を考えるとよい。選挙民に人気のある人が、必ずしもよい政治家とはい
えない。また評判は悪くても市民のために尽力してくれる政治家も多いので、講師の主張
はよくわかる。ただ選挙民に支持されなければ政治家になれないことも事実である。また
端的な例で、裁判官や検事は被告に好かれる必要があるのか、と考えてみるとよい)


 人間関係には2つの形がある。
 ●感情交流の人間関係
 ●役割交流の人間関係
 である。
 感情交流は”好く、好かれる”の人間関係といえよう。
 対して役割交流は、”責任(やらねばならないこと)”と”権限(やってよいこと)”が介在する人間関係である。したがって役割交流の人間関係は、たとえ嫌われても責任と権限を発揮しなければならないのである。
 人に好かれることの大切さを取り上げるときは、もっと広く、人間のあるべき姿から俯瞰していかなければならないとわたしは思うのである。

 言研のテキストでは、人に好かれる努力法として以下のことが出ている。
1,暖かい関心を示す − 相手の心理変化を察知して対応すること
2,相手の価値を認める − 相手の長所を見つけ評価する
3,よい聞き手になる − 相手に対し、感じのよい聞き手になること
4,微笑を忘れるない − 相手の心に溶け入れるうな柔和な表情で接すること

[参考]
「デール・カーネギー」について
 おそらく世界初と思える話し方教室を、アメリカにおいて開設した人。
 1912年 話し方教室(デール・カーネギー・コース)をアメリカで開始
 1963年 日本において初めてデール・カーネギー・トレーニングを開催。
 2005年 日本でワン・デイ・セミナーを開始
 出版図書として、『人を動かす』『道は開ける』などは名著なので推奨したい。