陽炎の夏、大学の単位もそっちのけで喫茶店で日銭を稼いでた。
下宿から見える善福寺ヘドロ川にうんざり。街角の騒音が何ホンだなんてのも僕には関係ない話。
光化学スモッグの街を抜け出して、真っ青な水平線が見たくて、ただ快速と鈍行を乗り継いだ。
辿り着いたのは房総地方のとある駅。もうひとつ、時刻表で見つけた名も無いような路線に乗り継ぐ。
「ゲバ棒三里塚の喧騒とはまるで無縁だな……」
そこは錆付いたレールが海辺へ続く、ほんのちっぽけな小私鉄。
新宿駅西口でフォークギターを弾くだけが青春じゃないんだぜ?
僕は更に水平線を目指す事にした。