【4】電車待ちのいとまに
ここは終着駅のひとつ手前、舟宿(ふなやど)という電車同士の行き違いができる駅だ。
ここで海行きの電車は、町行きの電車を待つ。僕が兄から借りっぱなしだったカメラで、
そこいらをパチパチとやっていると同い年くらいの駅員が、ホウキ片手に話かけてきた。
「なあキミ、こんな田舎電車ばかり撮って面白いのかい?」
「まァね。なかなか良い被写体だと思ったから」
「俺だったら真っ先に特急とか新幹線を撮りに行くな。なにせ電車が撮りたいよ」
「そっか、こっちは気動車ばっかりだもんな。いま国鉄で乗ったのも結構な百鬼夜行だったゼ」
「急行型と鈍行型の寄せ集めかい?」
そこへ海行き電車が気笛を鳴らしてホームに入って来た。
「ああ。そろそろ、おいとまするよ。あれに乗るんだ」
「また遊びに来なよ。なんにもトコだけどサ」