Prague, Czech Republic [September, 2009]

 これまでなかなか機会が作れなくて、世界で最も早くMozartの才能を認めた街に行けないでいました。今回、諸般の事情を加味して三カ国の首都を歴訪する計画を立て、起点をプラハに設定しました。本来ならBreughell巡礼をしないといけないのですが、曜日の巡り合わせが悪くて断念しています。今回は、出張のついでの散歩ではなく、娘を連れた個人旅行です。
 
 日本からは直行便がないので、乗り継いでいくと結構時間が掛かります。空港から市内に向かう公共の交通機関が終わってしまう時間に着くので、日本を出る前に空港shuttleを予約しておきました。街で拾うtaxiは、ぼられる可能性がかなり高いそうです。遅く着いたのでは銀行も開いていないかも知れないと、乗り継ぎ空港でEuroをCZKに両替。万全の体制で到着です。空港では指定された出口に名前を掲げた運転手が待っていて一安心。市内見物の余裕はないものの、プラハ城をかすめてhotelへの道を辿ります。
 翌朝、最初に選んだ目的地はBertramka。Mozartがこの街に来たときに滞在していた別荘です。普通の観光客は一目散にプラハ城に向かうだろうとの読みで、他の観光ルートから外れた場所にあるMozartゆかりの地を優先しました。プラハカードを買うことも検討しましたが、博物館などの施設は無料でなく、割引になるだけ。それなら結局切符売り場に行列しないとならず、時間も費用も大した節約にならないと判断して、一日乗車券のみを購入。ちなみに、今回行く街にはどこも同様のカードしかありません。これまで利用したことのあるDublin, Salzburg, Luxembourg cardsだと施設は無料で、行列も回避できたのに。
 ついでに、この国の通貨はCZK(コルナ)で、100CZKが約4EUです。三カ国目のHungaryはFt(フォリント)で、100Ftが0.4EUと10倍違います。どちらの国も、通貨の価値を実感できないまま通過してしまいました。
 地下鉄のAndel駅周辺は、かなりの繁華街でした。街外れだと思っていたので戸惑います。駅から目的地までは歩いて10分ほどですが、PNDを持っていてもちょっと道に迷いました。おまけに、開館時間が過ぎているのに窓口は無人。先に待っていた訪問客がCZKの札を鳴らして催促していましたが、効果はなかったようです。入り口の手前で日本人とおぼしき二人連れが気落ちした表情で帰って行くのとすれ違いましたが、待ちくたびれて諦めたのでしょう。我々もどうなることかと思った頃に、やっと係員が登場。なんとここは10月末で閉館になるそうで、きわどいところでした。そのせいで売店の品物は大幅に割引になっていました。
 館内は撮影禁止だったので、割引になっていた英語の解説書を買いました。日本語版は何故か他の言語より倍の値段がついています。まっとうな文章になっているか不安に思えて、迷わず英語版に手を出しました。確かに、博物館と呼ぶには盛り上げ方が今ひとつで、自分たちは冷たくあしらっていたのに今となっては積極的にMozartを売物にしているSalzburgとはかなりの格差があります。
 この別荘の所有者の夫人Josefina Duskovaはソプラノ歌手で、Mozartの追悼ミサが世界のどこよりも先にプラハで行われた際にも歌っています。
 何の説明もなくて危うく見落としそうになりましたが、建物の裏側の庭にMozartの胸像が見えました。立ち入り禁止とも書いていないからと表敬訪問。途中に踏み分け道があったので、入り込んでも大丈夫だったのでしょう。この像はすでに100年以上ここにあることが、解説書でわかりました。同じ解説書によれば、この庭は屋外concertの会場でもあるので、庭への立ち入りは問題なかったようです。ずっと露出補正をminus側に設定したままだったのに気づかず、暗い写真ばかりを撮ってしまいました。
 ここからの移動は市電を使うことにします。パンタグラフが異常に大きな車体で、トナカイを連想しました。当初は、Andelまで乗って20番に乗り継ぐ想定だったのが、乗った電車も行きたいUjezd停留所に止まることが判明。交差点を挟んで90°ずれた側に同じ名前の停留所があったのです。
 もやが一向に晴れて来ませんが、高いところから街を見ておこうと、エッフェル塔の1/5模型に登ることにします。周辺はペトシーン公園で、途中まではcable carで上がります。一日乗車券がここでも有効でした。車内で前に立った人が40Dに17-85mmをつけていました。同じlensを見かけたのはこのときだけ。何となく互いに会釈して別れました。
 古河庭園を思わせるバラ園を抜けて塔のふもとへ、ここで100CZKを支払い299段の螺旋階段を上ります。客が少ないからか、階段の片方が閉鎖されていて、途中ですれ違う人が現れると、互いに壁にへばりつかねばなりません。周囲が密封された煙突状態で、温室効果も手伝って汗びっしょりになりました。途中の展望台で一休み。外気にやっと触れることができました。依然もやは晴れませんが、登るしかないと覚悟します。
 地上高60mの展望台は窓が開かないところが多く、撮影ポイントが限定されていました。譲り合いの精神で、居合わせた人と交代しながらもやった下界を撮影します。プラハ城やモルダウを見下ろし、街の雰囲気を把握できたので、登った甲斐があったことにしました。下の右側は城壁の名残で飢えの壁と呼ばれています。カレル4世が飢えた人の救済に壁構築の仕事を作ったと言われていることから。
  Cable carで下界へ。もう人の波もおさまっただろうとプラハ城を目指します。正門は城の西側にあるので、22番の市電でぐるりと城の周囲をまわることになります。左にSavoy hotelが見えたら降車点。しばらく歩くとロレッタ(聖母教会)が見えてきました。
 プラハ城入り口周辺の人混み。思ったほどではありませんが、落ち着いて撮影する余裕のない程度に人が動いていました。
 衛兵と並んで記念撮影する人がたくさんいました。  フラチャニ広場から、さっきまでいた塔が見えます。
 プラハ城で入場券を買おうとしたら、音声ガイド(入場券と同額)とセットでないと売らないと言うのです。credit cardは使えず、現金の持ち合わせもそれほどでなく、何より押し売りの姿勢に納得できないと押し問答していたら、美術館だけなら個別に入場料を払えば入れるとのこと。そうならそうと早く言えよと文句を言いつつ、聖ヴィート大聖堂は外からだけ眺めて美術館へ。それにしても巨大な建物です。
 全景をとらえるためにEFS10-22mmの出番がありました。歪が目立つ左下の画像をPhotoshopで補整して周囲を切り落としたのが上の画像です。TS lens不要論が起きないといいのですが...。
 確かに全体を写し込んでいますが、しっかり傾いています。  聖イジー修道院。建物の左側が美術館(Prague castle gallery)の入り口で、ここは月曜日も開いています
 美術館をざっと巡ってもBreughelの気配なし。受付にいた女性が英語を話すことがわかり、質問したら"いろんなguide bookが間違っているのだが、問題の絵は別の美術館(Sternberg palaceのNational gallery)にある"とのこと。場所を教えてもらってから、"ところでそこは月曜日開いているの?"とだめ押し。案の定休館日だと判明。翌朝戻ってくる時間もないので、巡礼を諦めることにしました。彼女は美大生らしく、大阪に友達がいて、そのうち訪問する計画があると言っていました。"日本人でも絵の好きな人がいるんですね"とは何たる台詞...。
 帰国後、Lonely planetを読み返していたら、彼女が教えてくれた場所にBreughelがあるとちゃんと書いてありました。月曜日が休館とも書いてあったのに、すっかり記憶の彼方に行っていたようです。正確なguide bookを持っていても、これでは役に立ちません。

[2014年追記: 当時は書いたとおりの所在でしたが、今はLobkowicz palaceに移設されています。ここは月曜日でも入れます。]
 
 歩き疲れたし、燃料補給の時間だと同行者と意見が一致したので、城内で簡単な昼食。カフカの住居のある黄金の小路に入ろうとしたら、そこだけの入場券は売られていないと判明。どうやら、猛烈な観光資源として存在している城のようです。ますます居心地が悪くなってきました。
 帰りは城の裏口から川に向かって下ります。日当たりのいい斜面に葡萄畑があり、beerで有名な国でもwineを作っているらしいとわかりました  街に浮かぶ気球を発見。ルドンの目玉の版画を連想します。
 有名なカレル橋は人でいっぱいなので、一つ下流のマーネス橋を渡って旧市街へ。すぐに折り返してマラー・ストラナ地区に戻ります。目指すは聖ミクラーシュ教会。英語表記はSt. Nicholas教会で、こちらの方が親しみやすい感じがします。
同じ名前の教会が旧市街にもあって混乱しますが、こっちでないといけないのはMozartが演奏したオルガンがあるから。それに何よりも、彼を追悼するミサが1791年12月14日に行われた場所だから。
 教会の中は暗いので撮影に難渋します。幸い、この地にゆかりの絵画を二階で展示していて、そこまで上がることができました。ようやく視界が確保でき、絵画そっちのけでオルガンの撮影を試します。同じことを試みている人とすれ違い、撮影場所の譲り合いをしました。
 右の奥が今見てきた教会です。
背中側がカレル橋。
 カレル橋のタワーゲートに来ました。ようやく、普通の観光客になった気分です。
 橋は工事中で、歩きにくいことこの上ありません。気球の所在がここではっきりしました。新設されたカフカ博物館の近くです。帰国後の調査では、15分700CZKで乗れるものだそうです。
 橋のたもと、旧市街側のタワーゲートです。とにかく塔の多い街で、100以上あると言われていますが、いちいちこの塔は何かとやっていると首が疲れるばかりです。  旧市街広場にたどり着きましたが、人でいっぱいです。二つの尖塔はティーン聖母教会。英語ではChurch of Our Lady before Tyn.
日が傾いてきたし、博物館や美術館の閉館時刻も迫ってきて、そろそろ散歩も終盤です。同行者の意見を取り入れて、シナゴーグに向かいました。旧新シナゴーグ(英語でもOld new)という不思議な名前がついています。筋向かいの店で入場券を買うように言われ、入ってみましたが、とりたてて見るものはなし。13世紀にできた建物がEuropeで一番古いシナゴーグという謳い文句でした。  近くにあるピンカス・シナゴーグ。左下の料金表の通り、ここはほかのいくつかとまとめて見学できる仕組みですが、もやは時間切れなので、改めて入場券を買うのは止めました。
 今日はここまで、hotelに帰って一休みしてから夕食にしようと意見が一致。よく歩いた一日でした。
石畳の道は脚に負担が掛かります。同行者から、この次の街もこんな道かと質問が出ました。幸い答はNoです。
 
 Hotel近くの火薬塔です。ここが旧市街の端に相当します。
 同行者がguide bookから拾い出したrestarurantにはどうやっても行き着けず、諦めて途中のcafeで夕食にしました。
アールヌーヴォー建築の市民会館です。料理はそれなり。調律の狂ったpiano演奏がちょっとうるさい感じがしました。
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