2013/4/14にスーさん(三国連太郎さん)が亡くなりました。ニュースで、役作りのため前歯を抜いたという話を初めて知りました。芸能界は凄まじい生き方をする方が多いです。
私は学生時代に、美空ひばりさんのコンサート会場設定の清掃のバイトで横浜アリーナに入った事があります。私はステージから離れた場所を担当したので、直接目にしたわけではありませんが、ステージ周りを担当したおばさんから色々話を聞けました。美空ひばりさんは病気のため膿で足がパンパンに腫れており、靴も履けない状況だったそうです。お客様を心配させないために、高さが何十cmもある絨毯をステージに敷いた事。体が動かないのでベッドをステージ脇に置いていた事を聞きました。学生だった私は、芸能人の壮絶な思いを知り、強烈なインパクトを受けました。芸能界で生き残れるプロというのはこういう事なのかと思いました。三国連太郎さんの話を聞いて、芸能界は非常に厳しい世界である事を再認識しました。
そのバイトでは、建設業界の底辺にある会社(孫請け)だったお蔭で、社会の構造、またプロの心構え等を知る事が出来ました。今でも心に残っています。私の仕事が遅かったせいで「時間をかければ誰にでも出来る。それは素人と同じだ。プロとは他人より早く仕事を終える人の事だ」とよく言われました。孫請けになると仕事を請ける金額は雀の涙ほどしか無く、その中から利益を出すには、効率的に正確に作業が出来る職人に頼らないと生き残れない業界でした。クレームがつくと対応のための人件費だけですぐに赤字になるような状況でした。他にも孫請け会社が生き残るために、談合や仕事の紹介料を袖の下として要求されたりと、違法な事が罷り通る実態も目にしました。会社が潰れないよう生き残る事に必死でした。私はこの時代に社会の現実、プロという厳しさを知る事が出来ました。後から思うとすごくラッキーだったと思います。
プロは業界により、心構えが変わると思います。製造業・建築業など物を作る業界では納期通りの仕事をこなすのが大前提でしょう。先日、ある本でプロとは「内容はともかく結果を出す」という内容を見ました。昔ならいざ知らず現在には通用しないだろうと思います。私のサラリーマン時代の初期は、バブルがはじけた直後でこのような雰囲気が罷り通っていました。製品の低価格競争が激化し設計の予算も減らされてくると業界自体が成熟してきました。この金額なら、この作業量という業界の目安が出来てきます。同業他社間の競争でも最低限の作業量の目安がある訳です。当面の作業納期に対して、目安以下の作業量しか出来ない技術者やグループは仕事が来なくなります。
それだけはないです。”内容はともかく”というのは、設計においては”メンテナンスが増える”事になり、維持費の増加に繋がります。実は、これは意見が分かれる点です。悪い言い方で言う”手離れが悪い仕事”の仕方です。不具合対応で設計費を再請求するというやり方は言語同断でしたが、あえてメンテナンスを多くするシステムで抱え込みを図るという方法は良く取られていました。私は到底容認出来ませんでしたが、それがある時期までは罷り通っていました。まぁ子会社が少しでも売上を増やすためにこのような方法を選択したがるのは理解出来ました(同意はしませんが)。ただ、私の経験から言えば、手離れ(クレームも少ない。メンテナンス費用も掛からない)が良い仕事の方が、後々、仕事が舞い込んで来てました。
極言すると、プロとは、お客様から指名が入るような(キャバクラと変わりませんネ(^^!)仕事のやり方をしているという事になりますね。若いころはキャバクラに良く行きました。別の記事で投稿します(^^!プロの定義は一つに収まるのではなく、業界が置かれた状況により変わっていくのだと思います。私は状況とプロの定義を下記のよう考えます。(1)が一番緩い業界が置かれた状態で、(5)に向かうにつれ厳しくなってくる感じです。
(1)資金が潤沢で人が少ない段階
”内容や時間はともかく、仕事が終われば良い”
(2)資金が潤沢で人が多い段階
”時間内に仕事が終われば良い”
(3)資金が減り人が多い段階
”時間内に仕事が終わり、トラブルも少ない”
(4)資金が減り人が余る段階
”時間内に出来る作業が多く、トラブルも少なく、
同業者(他社)に対する優位性がある”
(5)芸能界のように一部の人だけが食べていける世界では。。
”同業者に対する絶対的な優位性を確保する(壮絶な。。。)”
技術の業界では、芸能界のような厳しさは必要ないかと思います。まぁプロ以前の話ですが、出来る技術者は空いた時間はとにかく勉強や研究をしていましたね。今もそうだと思います。
(2013/4/22 記)